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がん化学療法看護認定看護師 かみうせまゆの「忘れえぬ患者さんたち」
第8回 ~新型コロナウイルス蔓延の中でも、よりよい生活を送るために~

掲載日:2020年5月13日 10時55分

オンラインセッションでがん治療最前線の人々とやりとり

 先日、一般社団法人CancerXが主催した「COVID-19 スペシャルオンラインセッション」を受講しました。

 CancerXは、「がん」と言われても動揺しない社会を目指す団体です。米国のがん専門医、日本の有識者、医師、看護師、その他の医療従事者、がんサバイバー、雇用主、ボランティア等、様々な立場の人々が同じ目線で、新しい社会を創造しようとしています。

 メディア等の情報では、がんサバイバーは免疫が低いため病院へ行くと感染のリスクが高まる、と認識されることが多いようです。中でも、高齢者や肺がん、化学療法を受けているサバイバーは、感染リスクが高いゾーンに入ります。

新型コロナウイルス対策で、医療機関に専用テントが設置されることも珍しくない(写真と本文は関係ありません)。

 そのため、ふだん高齢者のがんサバイバーと接する機会がある私も、「近隣の市で感染のニュースを見たから出かけたくない」といった電話相談を受けたことがあります。

 しかしながら、必要な治療を続けるか少し待ってもよいかは、自己判断せず、主治医へ相談することが必要不可欠だと、このセッションを聴講して感じました。

 がんの進行度やタイプによって、手術・放射線治療・化学療法を少し待っても良い段階、現在の治療を継続した方が良い段階、早めに治療を進めた方が良い段階があるのです。

 また、上記とは別に、穏やかに過ごすことを選びたいと思う方がいらっしゃるのも事実です。
 全国にいる友人に、勤務先の病院の状況を聴いてみたところ、ほとんどが、「入院患者さんの面会は原則禁止し、当面の間は、ごく限られた場合のみ、それも限られた人数しか面会の許可がおりない」とのことでした。

 非常事態の中、どうしたら良いか分からないことがある方は、迷わず主治医や看護師へ不安を打ち明けていただき、治療方針を確かめていただきたいと思います。


情報を鵜呑みにしない

 では、がんサバイバーや家族・周りの方々は、どのようなことに気をつけるべきでしょうか?

・必要なとき以外は外へ出ない(ステイホーム)。
・不用意に人のものを触らない。
・公共交通機関でつり革や手すりに触れた場合は、降車した時に除菌シートで拭いたり手洗いしたりして、目に見えないウイルスや細菌を洗い流す。

・帰宅したら、うがい、手洗いは必須。可能であれば入浴かシャワーを浴び、洗濯をする。
・スマートフォンやタブレット、テレビのリモコンなどは定期的に除菌シート等で拭いて清潔を保つ(院内感染を起こした事例では、共有のパソコンやタブレット等が感染源として疑われている)。

 セッションでは、情報との接し方も議論され、メディアやネット、SNS、知人から得た情報を鵜呑みにしないことへの警鐘が鳴らされていました。
 今は情報を手軽に得られます。しかし、がんと新型コロナウイルスの関係は、まだ科学的根拠がはっきりしない事柄も多いので、惑わされないことも大切です。

 過度にウイルスに対する恐怖を抱き、一歩も外に出られなくなっている方がいます。○○すると新型コロナウイルスにかからない等のデマもネット上には散見されます。情報の発信元が信頼できるかを確認することがポイントだと思います。

 厚生労働省や政府機関、地方自治体、国立がん研究センター、日本臨床腫瘍学会、日本緩和医療学会、日本がんサポーティブケア学会などのホームページには、正確な情報や指針が示されています。正しい情報に基づき、落ち着いて行動することが今の私たちに出来ることだと思います。

 以上、私が学んだことを抜粋してお届けしました。CanserXの公式サイトで、当日の情報が公開されております。(https://cancerx.jp/


ステイホームは今や世界の合言葉? それが難しい国もあるけれど。


「明日は我が身かもしれない」という気持ちで

 現在も、治療中のがんサバイバーの皆さんは、検査や投薬が必要な場合は通院となります。不安な方は、ぜひ診察の際に主治医や看護師に打ち明けてみてください。

 私も看護師という立場から、診察前の問診時に、生活は保てているか?、気持ちが落ち込んでいないか?、ストレスをため込み過ぎていないか?、等のお話を伺うよう努めています。

 しかしながら、「こんなことを質問したら、見放されてしまうのでないか?」「こんなことを質問してもいいのだろうか?」と、心にモヤモヤをため込んでしまう方が多いのも事実です。
 できるだけ安心して、安全に、安楽に療養生活を送れるようサポートするのが医療者の役目なので、遠慮なさらないでください。

 心の保ち方で大切なのは、電話でも、メールでも、対面でも、誰かと一緒に考えることです。医療者でなくても、友人、家族、公共の心理相談窓口など、あなた自身が安心できる人がいることが大切です(民間の相談窓口は、料金が課される場合があるため、無料なのか、安全な窓口なのか、よく確認してからご利用されることをお勧めします)。

 私は新型コロナウイルス治療の最前線にはおりませんが、仕事前後の健康チェック・手洗い・うがい・マスクなど基本的な予防策のほか、食事時間をずらす、使用している電子カルテやデスクの清掃、職場に持ち込んだ衣類(更衣室までを除く)は家に持ち帰らないこと等、多くのことを徹底しています。

 自分がかかりつけの総合病院へ受診した際には、突然検温され、予約票を提示しても、何をしに来たのか質問され、手の消毒をするまで通路へ通してもらえませんでした。
 そこまでしないといけないシビアな状況が、日本では月単位、もしくは年をかけて続くのだと思います。

 ユニフォームを脱げば、私もひとりの人間となります。今までに味わったことのない不安や胸が締め付けられる思いを感じて過ごしています。
「明日は我が身かもしれない」という気持ちで、可能な限り、3つの密を避ける、ステイホーム、医療資材の買いだめはしない(そもそもマスクは滅多に手に入りません……)、などを実践しています。

 そんな中で、普段は威厳のある上層部の方から「体調どう?」と声をかけられたり、がんサバイバーの方が帰宅前に「ありがとうね。先生も看護師さんも身体に気をつけてね」と言ってくれたり、同僚同士で「お疲れさまです」といたわり合うなどのコミュニケーションが、精神的安定につながっています。


新橋・烏森神社の癌封じのお守り

 3月上旬、がんサバイバーの皆様の健康や、安心して治療に臨めることを祈願して、新橋駅から徒歩3分の烏森神社へ参拝し、癌封じ守りを受けて参りました。

 止疫息災の幟と、烏森神社の幟、鳥居をくぐると階段の上に荘厳な佇まいの社殿があります。
 癌封じお守りは何種類かありましたが、迷わず「かぼちゃ柄の癌封じお守り」を1つ受けて、帰路につきました。「癌封じお守り」は、がんの治癒や再発を予防する等の願いを込めて作られているそうです(緊急事態宣言を受けて、お守りの授与所はお休みとなっています)。

 かぼちゃは、栄養価が高いことから、癌封じお守りの柄になっているなどの説があるようです(念のためですが、かぼちゃを食べてもがんが消えるわけではありません)。
 外出自粛で参拝は難しいですが、こちらの写真を見て、今ある思いをそっと祈ってみてはいかがでしょうか?


止疾息災の幟が立つ烏森神社と、癌封じお守り(神社の写真は、烏森神社提供)。


疫病封じ、妖怪アマビエ様

 遠方に住む友人のご主人が体調を崩し、新型コロナウイルスの感染が疑われました。陰性とわかるまでの間、友人一家は、自宅内で1階と2階に分けて生活したそうです。テレビ電話で家族の絆はつながり、日々の体調もお互いに確認し合いました。

 また友人は、妖怪アマビエ様の絵を、ご主人の食事を配膳する際に一緒に添えて体調回復を祈っていたそうです。それが通じたのか、現在は元気に社会復帰されています。今は床の間に飾っているとのこと。

妖怪アマビエと私。妖怪にしては可愛すぎる!? 作:山内健(https://www.facebook.com/campfreakake

 アマビエ様は、半人半魚の妖怪です。江戸時代後期に肥後国(熊本県)に出現したらしく、その様子を当時のかわら版が伝えていました。アマビエ様の姿を描くと疫病の流行を封じられると言われていて、現在ネットなどで人気が高まっています。

 私も、久しぶりの連休に、ネットや企業のSNSを見て、驚くほど多数のキャラクターが妖怪アマビエに変身しているのを目にしました。私の住んでいる街のゆるキャラも変身しています。困った時の神頼みならぬ、妖怪頼みですね。でも、自粛生活の中では、こんなちょっとした遊び心に触れるだけでも、楽しくなるものです。

 グラフィックレコーディングで活躍している友人に、読者のみなさんが新型コロナウイルスにかからぬよう、そして一日も早い収束を願い、オリジナルのアマビエ様を描いてもらいました(後ろにいるのが私です)。


窓を開けて、空を見ながら深呼吸

 4月末は寒暖の差はありましたが、季節の花も見頃になり、家族連れなどの人出が少なくなった公園も目の当たりにしました。「私一人だから」「一回だけだから」という考え方は、見えないウイルスの餌食になりかねません。
 今年は、各観光施設等から配信されている画像で、お花見や列車観光した気分を味わいましょう。

 緊急事態宣言が延びて、季節の移ろいを感じる余裕がなくなったり、疲れがピークに来たりしている頃でしょう。
 がんサバイバーやご家族、医療・介護・福祉・地方自治体・流通・小売りなどの最前線で活躍される皆さんの不安は、これからも続くでしょう。

 人は、疲労やストレスが溜まると、知らない間に苛立ちや不安から、怒りやすくなったり攻撃的になったりする場合があります。

 ストレスをためないためにも、一日に何回かは窓を開け、空を見ながら深呼吸をしましょう。そして、朝早く目覚められたら、普段は聞き流してしまっている自然の声に耳を傾けてみましょう。ベランダから風を入れるだけでも気分が変わります。

 友人と会えず、楽しみにしていた会合が延期になっていても、スマートフォンやパソコンなどを活用して、オンラインで面会をしてみましょう。固定電話で声を聴くだけでも、十分に安心する効果が得られます。

 室内の運動も、効果的です。ヨガのポーズをとってみたり、テレビの5分間体操をしたり、ラジオ体操をしてみるのも良いでしょう。

 正しい情報を手に入れ、ストレスに上手く対処されることを願っています。そして一日も早く、日常が戻りますよう、祈りを込めております。


新型コロナウイルスが蔓延しても、青空は広がる。


上鵜瀬 麻有(かみうせ まゆ)

 2002年に看護師免許を取得。がん化学療法看護認定看護師として、患者さんの心身のケア、精神面のサポート、生活情報の提供などを行っている。
 このエッセイでは、これまでに出会った患者さんたちの物語や忘れえぬ場面、言葉などを看護師ならではの視点で描いていきます。なお個人のエピソードは、プライバシーを守るため一部改変しています。

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