街のいたるところでイルミネーションがキラキラと輝く季節となりました。
今朝、通勤途中の雑居ビルの壁には、サンタクロースのモニュメントが登場していました。
テレビのニュースでは、日本・世界各地のライトアップ映像を見ることも増えています。
クリスマスツリーを飾る
私が勤めていた病院では、ちょうど今ごろ、外来が終わったあとに、その日出勤している職員でクリスマスツリーを飾ります。事務職、医師、看護師、薬剤師、栄養士……力を合わせるとあっという間に大きなクリスマスツリーがエントランスに登場します。
各病棟にも、大小さまざまですが、クリスマスツリーや、リース、サンタクロースやトナカイの置物、スノードームなどが飾られます。
ずっと入院中の方、自宅と病院の往復で季節の行事に参加できない方々にも、季節を味わっていただけるように。
看護学生、職員総出のキャンドルサービス
私は看護学生の時代に実習した病院に就職したのですが、卒業後もしばらく看護学校のクリスマスイベント「キャンドルサービス」に参加していました。
看護学校では、11月半ばころから、クリスマスソングの楽譜を渡され、学生・教員一同で練習をします。
また、入院中の患者さんお一人おひとりのために、クリスマスカードに色鉛筆やペイントマーカーで色付けをし、一日も早くご快復に向かうよう祈りを込めます。
12月のある平日の17時。 3つの聖歌隊に分かれて、各病棟や外来をろうそくに見立てたペンライトを点灯し、サンタクロースとトナカイに扮した学生や職員が先頭になり、クリスマスソングを歌いながらまわります。
聖歌隊が病棟に到着すると、一時的に病棟の灯(あかり)も一段階暗くします。 いつのまにか、学生時代にコーラスや軽音楽部に入っていた医師や検査技師たちも聖歌隊に加わり、すてきな歌声が響き渡ります。

具合が悪くて床に臥せがちな患者さん、ストレスで会話が減っている患者さん、ゲームや読書に集中している患者さんも、このときばかりは病室の入り口に集まり、目を輝かせて待ってくださっています。
喜ぶ患者さんの姿を見ると、こちらも嬉しくなります。 「入院中のクリスマス、少しでも楽しんでいただけたのかな?」と。
栄養士さんの粋な計らい
この季節になると、12月24日のクリスマスイブも退院できず、 「あぁ、世の中はクリスマスなんだね」 と、働き盛りで治療を続けていた大部屋の患者さんたちの光景を思い出しました。
身寄りがなく、おひとりで病に立ち向かっていたシステムエンジニアのSさん。 企業の経営者であり、長引く入院に苛立ちをぶつけていたAさん。 乳幼児を奥さんに任せて入院している、外資系企業の社員だったOさん。 地域のボランティアで活躍している、毎朝4時30分の散歩が日課のMさん。
血液がんなど、長期間の入院、定期的な入院治療が必要な方も多く、病室は治療の場であるほか、患者さん同士が情報交換したり、支えあったりするコミュニティでもありました。
病院で季節を感じるのは、装飾やテレビや雑誌、スマホからの情報、家族からの差し入れ、窓から見える景色と限られてしまいます。
1日3回、8時、12時、18時の病院食。 ごくたまに、季節ごとの特別メニューが、配膳されます。

クリスマスイブの夕食には、患者さんの名前や提供される食事の種類が書かれたカードに、クリスマスのイラストとメッセージ、小さなケーキやチキンなどが添えられます。
季節を味わう特別メニューは、患者さんに食べるよろこびをお届けする、大切な試みだと感じています。
クリスマスの夜に
夕食が終わると、静かな夜がやってきます。 夜間の病棟は、看護師3人が守り、当直室で医師が1人待機しています。 ある年の夜勤で、同期の看護師がサンタクロースの帽子とトナカイのカチューシャを持ってきました。 「これを使って、消灯前のラウンド(患者さんのベッドサイドに巡回すること)をしてみようよ」
街のいたるところでサンタクロースやトナカイの仮装をしている店員さんを見て、「勇気あるなぁ」と思っていたので、まさか私もサンタクロースになるとは思っていませんでした。 たまたま居合わせた医師にも参加してもらい、普段とは違う、何とも穏やかな消灯前を過ごすことができました。
今年は新型コロナウイルスの影響で、例年とは違ったクリスマスシーズンを迎えることになりそうですね。 みなさんはサンタクロースに何をお願いしますか?
