初診では後に予定を入れずに
検診などで、「がん」の疑いや、要精密検査と診断が出た場合、多くの方は予約のうえ、紹介状を持参して、専門施設を受診することとなります。 病院の初診受付で、紹介状や保険証を提示し、まずはカルテを作成する、画像データを読み込む等の事務手続きから始まります。 地域によっては、紹介状を持参すれば、予約なしでも受診できる施設があるようです。 その場合、既に通院中で予約がある患者さん、臨時受診している患者さんの合い間に診察を受けることとなり、注意が必要です。 特に初診の場合、お一人おひとりの情報を聴き取りながら、精密検査や治療計画を相談することが多いため、診察後に仕事や予定を入れず、ゆとりをもってスケジュールを組むことが大切です。
病院の待ち時間は長く感じる
病院勤務時代に、患者さんやご家族から、いろいろな声を聴きました。 「この後、取引先とアポイントがあるのに、こんなに待たせるのなら、あらかじめ教えてくれたって良いではないか?」 「前の人が入ってもう30分。予約した意味があるのだろうか?」 「私の方が早い受付番号なのに、受付番号が遅い人に抜かされた。忘れられているのではないか?」 「たくさん待ったのに、今日の診察はたったの5分だった。他の人は30分以上の人もいたのに、私は見捨てられたの? 話す間もなかった」 などです。 通院時は、自分の体調のことはもちろん、病気のこと、治療スケジュールのことなど、ストレスがかかりやすい状況にあります。 そのため、自宅や職場で過ごす1分と、病院で過ごす1分では、病院の1分のほうが比べ物にならないくらい長く感じるのです。
初診の待ち時間には面談も
病院側は患者さんの初診の場合、緊急時(例えば、いのちの危険が迫っている状態。緊急的な処置が必要な場合など)を除くと、比較的混み合わない時間帯に確保することが多い傾向です。 がん検診で要再検通知が来た方、医師からの診療情報提供書(=紹介状)をお持ちの方はその提供書を事前に確認したうえで、診察室にお呼びします。 待ち時間には、事務スタッフや看護師を介して、問診表の記入をお願いしています。必要な時は、面談も行います。 今、いちばん困っていること、既往歴、アレルギーの有無、現在内服している薬の有無、家族構成、仕事など、様々な情報を聴き取りながら、安心して診察を受けられるよう、医療事務、看護師、検査技師などの多職種で連携をとり、スムーズに診療を提供できるよう、工夫をしています。
検査の結果が出るまでは……
予約している患者さんで、体調が比較的安定している日は、予約時間通り~1時間以内に呼ばれることが多い傾向にありますが…… しかし、日によっては、急な体調変化があり、一刻も早く診察・入院・治療(検査・治療)をしなければならない方の対応、検査結果で治療方針の説明がある患者さんの対応など、時間がかかる患者さんと重なることもあります。 そうすると、予約時間を押してかなりお待たせすることがあります。 受付したときに渡される番号は、プライバシー保護のため患者さんを識別するための番号であり、必ずしも予約時間や呼ばれる順番を決めているものとは限らないのです。 採血・尿検査や、レントゲン検査など、事前に検査がある場合は、検査結果が出るまでの時間も待ち時間に含まれます。 採血を例にとってみると、以下の流れとなります。 臨床検査技師や看護師が採血を行い、速やかに検査室へ運ばれ、検査項目に適した方法で検体処理されます。 がん診療連携拠点病院など一部の施設では、検査当日に腫瘍マーカーをチェックできる施設もあり、その場合は結果が出るまでに90分程度かかります(腫瘍マーカーや甲状腺機能など、特殊な項目がある場合は数日かかることもあります)。 さらに、採血結果が出次第、過去の結果と照らし合わせ、異常な値がある場合(異常高値、低値)、電子カルテに反映する前に、主治医や看護師に問い合わせ、念のため再検査をしてから治療・帰宅となる場合があります。 冬季の場合は寒さで、夏季の場合は脱水などで採血に適した血管が見つかりにくく、通常よりも待ち時間が長くなる場合があります。 他にも、心電図検査、内視鏡検査など、必要な検査結果が出てから診察をする場合は、半日~1日掛かりとなることもしばしばあります。
クロスワードパズルや編み物なども
待ち時間を工夫されている患者さんの例をいくつかご紹介します。 自家用車で片道15分、抗がん剤治療後の食欲不振、貧血で長時間座っているのが辛かった患者さんは、事前にご家族が受け付けをし、待ち時間近くなったらご本人が来院する方法をとっていました。 遠方からの通院されていた70代の患者さん夫婦は、「通勤ラッシュを避けたい」と、診察時に相談して下さり、主治医と調整の結果、午前中の終わりの診察時間を確保して治療を続けていました。 読書や小冊子のクロスワードゲーム、編み物を方している方から、屋外の憩いの空間で過ごす方まで様々です。 席を外す場合は注意が必要です。忘れずに受付けスタッフへ声をかけて下さい。診察順番が回ってきたときに不在の場合、保留扱いされるためです。 おおよその待ち時間がわかれば、安心して席を外してお手洗いに行ったり、食事に行ったりすることも可能です。
病院の掲示板、資源を活用してみよう
待ち時間には、ぜひ、院内の掲示物にも目を向けてみてください。 療養生活に役立つ相談窓口、患者会の情報、勉強会の情報、病院から患者さんへの事務連絡等、重要な情報があります。 また、院内には様々な職種が在籍しています。 がんの治療中は、日常生活や仕事との両立、医療費の問題など、社会福祉士と面談したり、がん治療中の療養生活に詳しい看護師(ストーマ=人工肛門管理、抗がん剤治療、緩和ケアなど)の面談やケア、栄養相談等を受けたりすることも可能です。 診察室では、「困りごとを相談できない」「こんなことを主治医に聞いてはいけないのではないか」と遠慮される方も多くいらっしゃいます。 そのような時は、院内のがん相談支援センターや、診療科の窓口などに声をかけてみてください。 「こころの内を聴いてほしい」 「家族の記念日に体調を万全で過ごしたい。治療は休みたくない」 「同じ治療を受けた人と交流をしたい」 など、小さなお困りごとから、少しハードルが高そうなことまで。
辛い症状は我慢せず、伝えてください
繰り返す抗がん剤治療で体調が芳しくなく、待合室のソファーでぐったり横になっている、70代の膵臓がんの患者さんの、とある診察日のエピソードです。 自営業で、治療の日は休業して、家族総出で来院されていました。ご本人は我慢づよく、辛い症状を自ら伝えることはしない方です。 急いで診察をした方が良いと判断し、看護師が改めて問診に伺いました。 すると、看護師の前では、ソファーから起き上がって、「待てるから」と元気そうに振る舞われます。 看護師がその場からいなくなると、再びぐったり横になり、診察室の中では元気そうに振舞っておられるのが何度か続きました。 繰り返し担当していく中で、ようやく本音を話してくださいました。 「治療が数日~1、2週間延期になったら、『がん』の進行が速くなるのではないか?」と不安を吐露されました。 あらかじめ主治医へ相談し、一通り診察したうえで、以下のことを伝えてもらうことにしました。