暦上では、夏至(げし)を迎え
梅雨真っ只中ですが、日の出が早く、日暮れがだんだん遅くなりました。
暦上では、毎年6月21日ごろ、太陽が昇っている時間が1年でいちばん長い日とされる、“夏至(げし)”と記されています。
年間を通して、日焼け止め対策のグッズはドラッグストアなどで入手できますが、この1カ月の間で、本格的に日焼け止め、日傘、帽子、ストール、アームカバーの販売が本格的になってきました。

2020年6月半ば、東京タワー付近にて。19時過ぎでも明るい。
今回は、本格的な夏場を迎える前に、がん治療中のお肌のケアと紫外線対策について解説していきます。
抗がん剤の中でも、主に頭頸部がんや大腸がん、肺がんなどに使用される分子標的治療薬(抗EGFR阻害薬)では、多くの患者さんで皮膚障害が起きることが知られています。
皮膚障害の内訳を見てみると、皮膚炎、色素沈着、爪障害の他、ざ瘡様皮疹といって、ニキビのような発疹などが挙げられます。
また、従来の抗がん剤(殺細胞性抗がん剤)の治療を受ける場合、角質層が薄くなったり、皮脂腺や汗腺に影響が出やすくなったりして、皮膚が乾燥しやすくなります。
放射線治療を受けている場合、日焼けをしたように皮膚が赤くなったり、場合によっては水膨れの症状を起こしたりする場合があります。
がん治療中の皮膚障害を最小限にするための3つのポイント
抗がん剤、放射線治療、いずれの治療においても、治療前に比べて皮膚がデリケートになっているため、皮膚の症状を最小限に抑えるために3つのポイントが大切になってきます。
①皮膚を清潔に保つ
低刺激の洗顔料、シャンプー、石鹸などを利用し、良く泡立ててから、身体のよごれを落とします。
皮膚障害の起こしやすい抗がん剤治療中、放射線治療中は、ボディ用ナイロンたわしなど、皮膚に刺激を与えるものは控え、良く泡立てた石鹸を使用することをお勧めします。
②皮膚を保湿する
ふだん利用している化粧水、処方されている保湿剤などを利用します。
皮膚障害に対する保湿剤やステロイド剤を処方されている場合、まずは、皮膚の保湿を保つ化粧水、皮膚障害に対する保湿剤を塗ります。
化粧水や保湿剤が吸収するまで少し待ってから、症状が出ている部分にのみステロイド軟こうを塗ります。
ステロイド軟こうを先に塗ってから、保湿剤や日焼け止めを塗ってしまうと、ステロイド成分が広範囲に広がってしまい、顔面の場合だと、顔が真ん丸になる(ムーンフェイス)、色素沈着が強く出るなど、予想外の副作用につながる可能性があり、注意が必要です。
これからの季節、冷房や扇風機が活躍しますが、直接冷風に当たり続けることで肌の乾燥につながるため、室内にいる時は空気の流れを意識しましょう。
③皮膚を物理的・科学的刺激から避ける
下着、衣類、タオルなどは、化学繊維のものは控え、綿や麻など肌に優しい素材を選ぶようにします。

参考)泡石鹸が手元になくても、ビニル袋にぬるま湯を入れ、低刺激のボディソープを少量と共に、シャカシャカ振ると、あっという間に泡が完成。
また、直射日光に当たることをなるべく控え、外出時は日傘・帽子・サングラス・アームカバー・日焼け止めなどを利用します。
特に、直接太陽の光を浴びる部分、顔・くび・腕・膝下など、注意が必要です。
日焼け止めの種類は意外にたくさんある
日焼け止めには種類があり、SPFとPAが選択の目安になります。
SPFとは、短時間で肌の表面に赤み・炎症を起こさせ、肌を黒く日焼けさせるUVB(紫外線B波)を防御する日焼け止め指数のことで、1~50+まであります。
PAとは、紫外線A波(肌を黒く日焼けさせ、時間をかけて肌の弾力を失わせる)を防止する効果の程度を表すもので、大きく4段階に分けられます。
日焼け止めを選ぶ際、より防御効果の高いものを選ぶ必要はなく(かえって、皮膚に負担をかける場合もある)、外出する時間、直射日光を浴びる時間に応じて、低刺激性の商品(SPF30以上、PA++以上)を選ぶことが推奨されています。
治療の影響で、皮膚障害が強い場合、日焼け止めの使用に関しては、主治医や薬剤師に相談してみましょう。
過度の日焼け対策は逆効果に…
稀に、昼夜を問わず、日傘を使用し、帽子、サングラス、マスク、長袖の方を見かけます。
適度な日光浴は、骨を作るのに大切な、ビタミンDを産生する働きがあります。

日光を全く浴びないと、骨がもろくなる危険がある。
そのため、24時間、完全に日光を遮断してしまうことで、骨がもろくなり、骨粗しょう症の進行につながり、骨折する危険性もあるため、過度な対策は逆効果となります。
注)光線過敏症など、医師の指示がある場合を除きます。
ご自身がストレスを感じない、生活スタイルに合わせた対策で、今年の夏の療養生活を乗り切りましょう。
参考サイト)静岡県立静岡がんセンター
1)抗がん剤と皮膚障害 https://www.scchr.jp/book/manabi2/manabi-body8.html 2021年6月17日閲覧
2)国立がん研究センター東病院 主な抗がん剤の副作用とその対策
皮膚障害について https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/pharmacy/kouganzai/supportivecare_skin.html 2021年6月17日閲覧
前回までの記事はこちらからご覧ください。

2002年に看護師免許を取得後、大学病院・がん診療連携拠点病院などで勤務。がん化学療法看護認定看護師。
2020年6月より公益財団法人日本対がん協会 がんサバイバー・クラブで活動開始。
2019年10月~2020年12月まで「忘れえぬ患者さんたち」を連載。
こちらのシリーズでは、がん治療中の方はもちろん、経過観察中や他の病気で通院中の方にも役立つような情報をお届け予定です。