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がん化学療法看護認定看護師 かみうせ まゆ の ~がん治療に役立つエッセンス~
第9回 広がってきたコロナワクチン接種 ~これから接種を受けられる、がん治療中・経過観察中の方へ~

掲載日:2021年7月28日 12時00分

 新型コロナワクチン接種が本格化し、数カ月が経ちました。  自治体や職域接種の機会が増え、接種対象年齢も引き下げられ、がん経験者で、既に接種された方、近々予定されている方も多くいらっしゃると思います。  今回は、がん治療中・治療がひと段落して経過観察中の方で、これから接種を予定されている方に向けて、予め準備していただきたい情報をお送りします。(文=日本対がん協会・かみうせ まゆ)

“がん”でかかりつけの主治医と接種の日程を相談 

 現在、抗がん剤治療中あるいは、これから本格的な治療を予定している方は、予め主治医とスケジュールを相談しましょう。

主治医と接種可能な時期の相談を、接種後数日は仕事量は無理のないよう調整を。

 抗がん剤の中で、殺細胞性抗がん剤の分類に入る薬剤を使用している場合、血液を造る工場である、骨髄のはたらきが低下する時期が出てきます(=骨髄抑制)。  骨髄では、主に以下3種類がつくられます。 ①白血球…ばい菌やウイルスと闘ってくれる  ②赤血球…身体に酸素や栄養を運ぶ ③血小板…血を止める働きがある  予防接種を受ける場合、白血球が正常値よりもかなり低くなっている時期は、抵抗力がかなり低くなっているため、時期をずらす必要が出てきます。  また、白血球の数値が比較的安定しており、予防接種の許可がおりた場合でも、血小板の値が健康な時に比べて少ない場合、注射した部位の血が止まりにくくなる場合があるため、予防接種直後は十分な圧迫止血が必要となります。


接種当日の持ち物について 

がん治療中の場合、保険証やおくすり手帳、定時内服薬や頓服薬があると安心。

 接種の予約を入れ、市区町村から送られてきた接種券、身分証明書、予診表は最低限必要なものとなります。  がん治療中の場合、接種後に万が一体調が優れない場合、医師の診察を受ける場合を想定し、保険証やかかりつけの病院がわかる診察券、お薬手帳を携帯されることをお勧めします。  また、決まった時間に内服をしている方、頓服で痛み止めを飲んでいる方は、数回分携帯しておくと安心して過ごせるでしょう。


医師の問診時に伝えてほしいこと 

 予防接種前、予診票に基づいて、医師による細かい問診があります。  かかりつけの病院の場合、電子カルテなどで、今までの治療履歴を閲覧することが可能ですが、自治体や職域接種の会場では、ご本人の情報がとても重要となります。  当日の体調はどうか、今までの既往歴、治療内容、飲んでいる薬、アレルギーの既往、採血や注射で具合が悪くなったことがないか等。

かかりつけ病院以外の接種会場では、ご本人からの情報がとても大事です。

 
 がん治療中の場合、○○がん(手術の有無、抗がん剤治療中、内服治療中、放射線治療中)など、忘れず記載しましょう。  また、乳がんの手術歴がある方、乳がんや他のがん種で腋窩リンパ節(わきの下のリンパ節)を郭清し、リンパ浮腫のリスクが高い方は、基本、健康な方の腕で接種することになりますので、忘れずに問診時にお伝えください。


 接種の時、看護師に伝えてほしいこと

 医師の診察のあと、接種ブースでは看護師が問診表に沿って再度記載内容の確認を行います。  接種する側の腕の痛みや腫れなどの副反応が出る場合があり、基本的には利き腕と反対側の接種を勧められます。  先に述べたように、リンパ浮腫のリスクのある方は、注射ができない方の腕について、その他にもアルコール消毒が肌に合わない方、血が止まりにくい方(血小板が正常値よりも少なめの方、血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方等)も忘れずに看護師へお伝えください。


接種直後15分~30分は経過観察を 

 接種会場では、今までに予防接種などの注射で体調不良が無かった方、薬剤アレルギーを起こしたことのない方は基本的に15分、経過観察室で待機していただくこととなります。  過去に注射直後、血管迷走刺激反射(一時的にめまい、気分不良、気を失う)を起こしたことががある方、何らかの薬剤で過敏症(かゆみ、くしゃみ、息苦しさ、血圧低下など)を起こしたことのある方は、医師の指示で30分、体調観察を行ってからの帰宅となります。  万が一、待機時間に体調が悪くなった場合、会場にいる看護師やスタッフへ声をおかけください。


乳がん検診やがん治療の効果判定検査を予定している場合の注意点 

 既に、学術論文やメディアなどでも報告されていますが、新型コロナワクチン接種に伴い、早くて1~2日後~長くて10週間の間に、ワクチンを接種したほうの片側のリンパ節、とくに腋窩リンパ節が腫れることがあります(=反応性リンパ節腫大)。  もしも、ワクチン接種後に腋窩リンパ節が腫れたとしても、焦らないでください。ワクチン接種による良好な免疫反応が見られている兆候です。

2回目のワクチン接種後、少なくとも6~10週間の間をあけてから、乳がんの検診を受けることが推奨されている。

 
   ワクチン接種後に、市の検診や人間ドッグ、定期フォローでマンモグラフィーや乳腺エコーを予定している方は、擬陽性(治療中や経過観察中の方の場合だと、再発や進行の疑い)となる可能性があります。  不必要な検査、精神的苦痛、経済的な負担がかからないために……2回目のワクチン接種後、少なくとも6~10週間の間をあけてから、乳がんの検診を受けることが関連学会から推奨されています。  接種が完了した際には、予防接種済証(臨時)を携帯し、定期通院日に主治医へ伝えてください。 参考サイト)以下それぞれ最終閲覧2021年07月28日 1)厚生労働省 新型コロナワクチンについて https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html 2)こびナビ COV-Navi https://covnavi.jp/ 3)日本乳がん検診学会 乳がん検診に当たっての新型コロナウイルス感染症の対応の手引きver2.0 http://jabcs.jp/pages/covid.html 



 前回までの記事はこちらからご覧ください。
上鵜瀬 麻有(かみうせ まゆ)
 2002年に看護師免許を取得後、大学病院・がん診療連携拠点病院などで勤務。がん化学療法看護認定看護師。  2020年6月より公益財団法人日本対がん協会 がんサバイバー・クラブで活動開始。  2019年10月~2020年12月まで「忘れえぬ患者さんたち」を連載。  こちらのシリーズでは、がん治療中の方はもちろん、経過観察中や他の病気で通院中の方にも役立つような情報をお届け予定です。
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