通院ではおなじみの採血・点滴
がんの治療中、定期的に経過観察中の方、個人によって頻度に差はあるものの、採血・点滴・注射は馴染みの深い医療処置だと思います。
外来の待ち合いには、仕事の合間に診察に来られる職場の制服やスーツ姿の方、冷え性で夏でも重ね着をされる方、着替えを持参される方、様々な方がいらっしゃいます。
急な気温の変化があったり、体調が悪くて余裕がない時、防寒対策として、長袖の下着、シャツ、セーター、ジャンパーなどを重ね着することは多くのかたが経験されていることでしょう。
その際、次のことを参考にしてみて下さい。
①中に着る下着、シャツ類は、肘までまくれるゆとりのあるものを選びましょう
②採血や点滴前に、カーディガン、ジャケット、ジャンパー類はすぐに脱げるようにしましょう
③点滴治療や輸血を予定されている方は、稀に微量の薬剤、血液が付着する可能性があるので、洗濯しやすい衣類を選びましょう。(処置のあとは、毎回十分に止血が図れるよう工夫しています)
④消化器がんや乳がんなどで、前胸部(鎖骨の下辺り)にCVポート(中心静脈ポート)を造設している方は、可能な限り前開きの上着を選びましょう。前開きでなく、襟ぐりの狭い衣類の場合、CVポートの針を刺す時に、消毒・針の穿刺・固定を行うのが困難になるためです。
採血や点滴の針が入りにくくなる問題
定期的な検査や点滴治療で、血管に針を刺す回数が増えると、何もしない時に比べて血管の壁は自然と硬くなります。 更に、血管に炎症を起こす可能性のある薬剤(一部の抗がん剤など)を投与すると、血管に自慢がある患者さんでも、回数を重ねるごとに血管が細くなったり脆くなったりします。 体調を崩して飲食を十分に行えていないとき、消化器がんの術後や、病状によっては、食事を摂っても栄養素が十分に身体に吸収されない場合も、同じくデリケートな血管になっていることが多いです。
看護師が、採血や点滴の時に行っているケア
ひと昔前までは、血管が見えにくい時は、看護師から、手のひらをグーパー・グーパーと手を握る・開くを繰り返すよう指示されたり、採血や点滴をする側の血管を軽くたたくことをされた経験がある方もいらっしゃることでしょう。 しかし、これらは血液中のカリウム濃度が高く検出される等、正確な検査ができなくなるため、現在では手首から腕の中心に向かって軽い圧のマッサージをしたり、ホットパック(医療用)や温かいタオルで温めてから処置を行うことよう、時代は変わりました。 採血や点滴の針が入りにくくなった、血管が細くなったと言われる方は、次のことを参考にしてみてください。 ①通院日、脱水予防のために、こまめに水分摂取を行いましょう。(水分制限のある方は除く) ②前回の点滴や採血をした場所を覚えておき、針を入れる位置はなるべくずらしてもらいましょう(抗がん剤治療の場合は、どちらの腕にどの細さの針を使用したか記録している施設が多い) ④採血や点滴の針を抜いたあと、十分な圧迫止血を行いますが……処置した部位の血管を護るために、強くもんだりこすったりしないようにしましょう。特に、血小板の値が低い時期や、血液をサラサラにする抗血小板薬を飲んでいる方は注意です。 ★【後編】最近よく聞く“血管迷走神経反射”について へ続く★
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