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がん化学療法看護認定看護師 かみうせ まゆ の ~がん治療に役立つエッセンス~
第10回 ~採血・点滴治療がスムーズにうけられるように~【後編】最近よく聞く“血管迷走神経反射”について

掲載日:2021年9月7日 15時00分

 何週間か前に、ワクチン接種会場で血管迷走刺激反射を起こしてけがをされた方のニュースを見ました。

“血管迷走刺激反射=けっかんめいそうしげきはんしゃ”とは、強い痛み、過度の緊張、ストレスなどをきっかけに、自律神経のバランスが一時的に乱れ、脳に行く血液が急に減ってしまうことによる、気分不良・めまい・場合によって一時的に気を失うことのある身体の反応のことを指します。

 これは、現在、がんの治療や経過観察で通院している方にも知っていただきたい豆知識です。

 病院で採血や注射などをする際、今までに、採血や点滴の針を入れている最中・直後に具合が悪くなったことがなかったか、毎回確認を行っています。

 この質問は、血管迷走刺激反射を起こす可能性がゼロでない方を、事前に確認する手立てとなります。


点滴刺入が難しくなった、通院治療中のAさんのエピソード 

 以前勤務していた病院の外来化学療法室で出会った、乳がんの治療中だったAさんも、血管迷走刺激反射を経験されたおひとりでした。

 ある夏の暑い日でした。
 
 抗がん剤治療回数が10回を超えた頃、抗がん剤投与に適した血管がなかなか見当たらず、医師が慎重に、いちばん細い点滴の針を入れる処置をしていました(施設によっては、抗がん剤を投与する場合、医師が点滴の針を入れる場合があります)。

 

 ようやく点滴の針が入り、抗がん剤の前投薬の吐き気止めをつなごうとした瞬間、「何だかふわふわするわ」と言いながら、リクライニング椅子にもたれかかり、気を失う場面がありました。

 すぐに、リクライニング椅子を水平に倒し、医師の指示のもと、細胞外液の点滴をすることで、意識が戻りました。

 主治医もすぐにかけつけ、追加の精密検査を行い、異常所見はなく、血管迷走神経反射だろう、と診断がおりました。

 その結果、抗がん剤治療を実施することに問題ないと判断され、Aさんの治療を受ける意思も確認が取れたので、予定通り抗がん剤投与を実施しました。

 気を失った時に、頭部を打撲したり、身体に外傷を負ったりしなかったことが幸いでした。

「点滴を入れているとき、何だか気分が悪いと思ったけど、迷惑かけちゃいけないと思って。」、と帰宅する際にAさんは語りました。


血管迷走刺激反射の主な原因 

 抗がん剤治療を受ける方の中には、
①不安やストレスを抱え込んで過度に緊張している(注射への恐怖心が強い)

②注射による痛みに弱い、多少痛くても我慢してしまう

③医療従事者への遠慮(手を煩わせてはいけないと気を遣ってしまう)

④お手洗いの回数をなるべく減らして一気に排尿される

 上記のいずれかに当てはまる方を、たまに見かけます。
 さらに当日の体調が思わしくない場合、血管迷走刺激反射が起こる可能性があるため、注意が必要です。

 場面は変わりますが、定期的な経過観察で侵襲をともなう検査、例えば子宮頸部細胞診なども同様です。


今日からできる対策 

 必ずしも血管迷走刺激反射が起こるとは限りませんので、不安になり過ぎないでください。

 

ですが、今までに一度以上、経験されている方は、対策をとることが大切です。

①検査や治療を受ける前に、忘れず水分補給(お茶、経口補水液など)をしましょう。脱水が強いと、採血や点滴を入れるのが難しいことがよくあります。

②採血や点滴、検査などの処置を受ける場合、具合が悪くなったことがある方は、その都度お伝えください。(カルテなどで情報共有していますが、スタッフが入れ替わることもあるためです)

③採血や点滴治療を受ける際、背もたれのある椅子で処置を受けてください。(万が一、具合が悪くなっても寄りかかれると安心です)

④不安を強く感じる、緊張している場合、ゆっくり深呼吸をし、処置を受ける場合は針先を見ないようにしましょう。

⑤処置が終わった後、急に立ち上がらず、一呼吸おいて立ちくらみがないことを確認してから移動をしましょう。

⑥めまいがする、頭がフワフワする、気分が悪い、強い痛みを感じる場合は、我慢せずに医療スタッフへ声をかけて下さい。

⑦外来点滴中、お手洗いに行く際はスタッフに一声かけていただき、予めお手洗いの緊急時ボタン(ナースコール)の位置を確認しましょう。(外来化学療法室のお手洗いは、体調不良時にすぐに駆け付けるため、鍵を閉めずに”使用中”・”空いています”のプレートを使う施設もあります)

【前編は】こちらです。★ 


 前回までの記事はこちらからご覧ください。

上鵜瀬 麻有(かみうせ まゆ)

 2002年に看護師免許を取得後、大学病院・がん診療連携拠点病院などで勤務。がん化学療法看護認定看護師。
 2020年より公益財団法人日本対がん協会 がんサバイバー・クラブで活動開始。
 2019年10月~2020年12月まで「忘れえぬ患者さんたち」を連載。
 こちらのシリーズでは、がん治療中の方はもちろん、経過観察中や他の病気で通院中の方にも役立つような情報をお届け予定です。

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