がん患者さんとご家族の食と体重に関するアンケート
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がん病態栄養専門管理栄養士の
「お仕事について」②

 味覚障害が顕著な人もいれば食欲がわかない人もいたり、がん患者さんが抱える食の悩みは色々。食べたくても食べられない状況は一人ひとり違います。だからこそ大切なのがコミュニケーション。患者さん一人ひとりに寄り添い、状況を見極めながら栄養サポートを行うには、「対話」や「情報共有」が欠かせません。

 今回は東京都立駒込病院 栄養科 小倉 ゆかりさんに、がん病態栄養専門管理栄養士としての「コミュニケーション」をテーマに、普段の現場での様子についてお尋ねしました。

がん病態栄養専門管理栄養士としてお仕事される中でのコミュニケーションについてお尋ねします。

Q:患者さんとは普段どのようなお話をしますか?また、やり取りの中ではどんなことを患者さんへ尋ねますか?あるいは、どのようなことを尋ねられますか?

A:例えば、現在の喫食状況や嗜好、ご自宅でのお食事内容(朝食はパン派orご飯派など)についてよくお聞きします。患者さんからは、入院中の食事で気になったメニューに使われている材料や分量、味付け、調理の仕方を聞かれることがあります。

Q:退院後も食事のことで相談を受けることはありますか?あるとすればどんなことですか?

A:あります。例えば、退院後、通院しながらがん治療を行っていく患者さんから、治療の副作用によって食事がとりにくくなってしまった場合の食事の工夫などのご相談を受けています。

Q:患者さんとのやり取りの中で、印象深いエピソードをお聞かせください。「最も嬉しかったエピソード」などあれば教えてください。

A:ある入院患者さんで、病院の食事が口に合わず、がん治療による副作用でさらに食欲不振となり食事が受け付けなくなってしまった方がいらっしゃいました。こまめに訪問し、話しかけ、喫食状況や嗜好などを確認し、体調に合わせて主食を冷たいそうめんに変更したり、自宅でよく召し上がっていたヨーグルトや果物をお付けしたりして調整していました。ある日、完食した食事のトレーの上に「食事の相談に乗ってくれてありがとう。なんとか食べられました。」とメッセージが書かれたメモが載っているのを見たときは、とても嬉しかったです。

患者さんとの対話の時間を取るベッドサイド

 がん治療を行う中で、その日の体調によって食べたいものや食べられるものが変わっていく患者さんと日々向き合っています。そのような患者さんに対して、食事内容を調製する際は、私は入院中の食事や単品でお出ししている手作りスープ等の写真を入れたタブレット端末を持ってベッドサイドへ訪問することが多いです。患者さんと一緒に料理の写真を見ながら、希望に応じて朝をパン食に変更したり、単品メニューに調製したりするなどして、少しでも患者さんの気持ちに寄り添った対応を心がけています。

Q:患者さんに喜ばれたメニューって何ですか?(どのような症状(あるいは制限)がある患者さんに対し、どんなメニューだったか教えてください。)

A:化学療法中で食欲が落ちてしまった患者さんからは、「きゅうりとわかめの酢の物」「鯵の南蛮漬」「大根おろしとしょうゆ」などの冷たいさっぱりしたメニューがおいしかったと喜ばれたことがあります。

タブレット端末でお見せしている食事
(左:大根おろしとしょうゆ 右:きゅうりとわかめの酢の物)

一方、医療チーム間、同じ立場の方とのコミュニケーションについてお尋ねします。

Q:医師や看護師の方々を始めとした他の医療従事者の方々とはどのような連携を取っていらっしゃいますか?(患者さんの食事・献立を検討される上でどのようなコミュニケーションを図っていらっしゃるのかなど可能な範囲で教えてください。)

A:ベッドサイドへ訪問する際には、医師や看護師から情報を得るようにしています。様々なスタッフから聞いた『昨日患者さんが「〇〇のメニューがおいしかった」と言っていたよ』「患者さんが〇〇は苦手で残してるよ」など食事についてのエピソードはとても参考になります。
 また、一般的ながん治療に伴う副作用や食事の対応について日々文献を読んで勉強し、医師や看護師など他の医療従事者と話をするようにしています。病院で実際に扱っている薬剤とその副作用に関しては、緩和ケアチームの薬剤師に確認する等、自身の知識の向上に努めています。

Q:ご所属の栄養科の中で、どのようなコミュニケーションがありますか?可能な範囲で教えてください。

A:入院患者さんの中には、担当している緩和ケアチーム以外にNST(栄養サポートチーム)などの他のチームも介入している方がいらっしゃいます。そのような場合には、それぞれのチームに関わっている管理栄養士間で密に患者さんの情報を共有するように心がけています。

最後に2つ、お尋ねします。

Q:先日(2月4日(金))においしい健康さん・弊会の共催でオンライン座談会「サバイバーキッチンラジオ」を開催しました。サバイバーの皆さんの食の悩み・食との付き合い方についてのお話を含め、本企画をご覧になった所感をお聞かせください。

A:がん治療を行う中で、「精神的に食べられなくなってしまった」「味覚の変化や下痢・嘔吐に悩まされた」といったがんサバイバーの方々の生の声を聞き、気持ちの変化は食事に大きな影響を与えると分かりました。気分の落ち込みや治療の副作用により食事が思うように食べられない時にも、マイルールを作って食事内容を調整しながら乗り越えていくというお話が特に印象に残りました。

Q:普段のお仕事でのコミュニケーションについて、「最も大切にしていること」「気を付けていること」といった思いや展望があれば教えてください。

病院外観

A:患者さんの思いを傾聴し、患者さんの立場になって考えることです。がん治療に対する不安や食事に関する悩みを話すだけでも、「気持ちが晴れた」「すっきりした」とおっしゃってくださった方もいらっしゃいます。また、患者さんとの何気ない会話から、一人ひとりの食事内容を考えるヒントを得られることもあるので、こまめに患者さんとお話しすることを私は大切にしています。

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小倉 ゆかり
がん・感染症センター 東京都立駒込病院 栄養科
がん病態栄養専門管理栄養士

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