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がん患者・家族の新型コロナウイルスへの不安
~がんサバイバー・クラブに寄せられた129人の声~ 補足・拡充版

掲載日:2020年4月10日 15時42分

 3月24日~31日までにご協力をお願いしたアンケート「コロナウイルスに関するあなたの心配事を教えてください」に、129人の方が声を寄せていただきました。ご丁寧にご回答いただきまして、本当にありがとうございました。重要なエッセンスは、日本対がん協会のホームページのトピックス欄に掲載しました。ここでは、さらに詳しく、みなさんの声をご紹介します。緊急事態宣言が出て社会的状況は変わってきましたが、がんサバイバーが抱える悩みや疑問の本質は変わっていません。


医療者から寄せられた声

 ご回答者の中で2人ほど、医療者(医師、看護師)の方がいらっしゃいました。最初にそのコメントを紹介します。まずは乳腺の専門医の方。
「“ホルモン療法中の患者が感染した場合、一般の方よりリスクが高いのか”という質問をよく受けますが、“免疫力が低下する治療ではないので心配しすぎることはありません”と説明しています。“無症状だがマスクをしたほうがいいのか”という質問には、人にうつさないためにも勧めています。

 このほか、外来(通院)で抗がん剤治療を受けている患者さんには、通常なら38度以上の発熱でご連絡をいただくことになっているが、現在は37.5度でご連絡いただくようにお願いしています」
 ご自身の状況と新型コロナウイルス(以下新型コロナ)の関係が正確にわかれば、対策も取りやすいでしょう。ご参考にしていただければと思います。次に、看護師の方。


 「不要不急の外出を控えることで起こる筋力低下、さらにはロコモティブシンドローム(運動器症候群=骨や関節、筋肉などが衰えて移動機能が低下する状態)になることが心配です。自宅でできる運動などの周知がもっと必要です」  国も、散歩の自粛までは要請していません。できる範囲で、体調の維持に努めていただければと思います。


がん患者は重症化しやすいのでしょうか?

 続いて、主な質問です。複数の方から同じような質問をいただいているケースもありますが、代表的なものをまとめました。  やはり、がんそのもの・治療と新型コロナの関係についての質問が最も多く届きました。
「抗がん剤の副作用で白血球の値がかなり低い。感染のリスクはどのぐらい上がるのでしょうか?」(30代女性、乳がん、治療中) 「抗がん剤や放射線治療を受けていると、重症化しやすいのでしょうか」(50代女性、乳がん、経過観察中)
「蜂窩織炎がクセになっていますが、新型コロナに感染したら重症化しやすいのでしょうか」(40代女性、卵巣がん、治療完了) 「胃を全摘したため胃酸が出ませんが、重症化しやすいのでしょうか」(40代女性、胃がん、経過観察中) 「新型コロナに感染するのは、間質性肺炎と同様でしょうか」(40代女性、肺がん、治療中)
「基礎疾患がある人、持病のある人に経過観察中の人も含まれますか? 主治医にはどのタイミングで相談したらいいのか」(50代女性、子宮体がん、経過観察中) 「肺炎になると、命にかかわります。ワクチンの開発以外に何も予防はないのでしょうか」(40代女性、腺様嚢胞がん、治療中)
 あらかじめ、主治医やがん診療連携拠点病院のがん相談支援センター(別の病院にかかっている方でも相談できます)などで、聞いておくとよいでしょう。落ち着いて聞けるときに情報を整理しておけば、安心感も増します。


洋服は外出するたびに洗濯するのでしょうか?

 日常生活や通院についての質問もたくさん寄せられました。日々何に注意すればよいか、医療費の捻出、仕事への復帰のタイミングなど多岐にわたっています。
「病院で待っている間、感染しないか気が気でないです。どんな点に注意すればよいですか?」(60代男性、腹膜偽粘液腫、治療中)

「人と接する仕事です。感染しても軽症で済む方法はありますか?」(50代女性、乳がん、治療中) 「マスクはしているが、買い物など短時間でも人の近くに寄るのは怖いものです。感染したら、がんでかかる病院に行くのか、感染症を扱っている病院に行くのか、どこに連絡するのが良いのでしょうか」(60代男性、膀胱がん、経過観察中)
「ハーセプチンの治療中ですが、小学生の子どもがいます。もし子どもが感染したら、看病しなくてはなりません。通常のインフルエンザの看病(親はマスク、食事は別)でいいのでしょうか?」(40代女性、乳がん、治療中)
「洋服は外出するたびにすぐに洗濯するのか? 帰宅したらすぐにシャワーなのでしょうか?」(50代女性、乳がん・子宮体がん、経過観察中) 「外出できなくなると収入がなくなる。そうなったら医療費をどうしたらよいのでしょうか?」(40代女性、肺がん、治療中)
「宅配便、郵便物、マンションのドアノブなど考えたらきりがないくらい感染経路が浮かびますが、どこまで気にしたらよいのか」(60代女性、大腸がん、経過観察中) 「分子標的薬で治療中です。接客を伴う仕事です。どのタイミングで復帰したらいいのでしょうか」(40代女性、卵巣がん、治療中)


定期検診に行くのも躊躇してしまう

 直接的な質問とは別に、不安や悩みを率直にお書きになった方も多数いらっしゃいました。質問と内容的に重なるものもありますが、ご紹介します。まずは病気や治療・通院に関するものから。 「術後約1カ月で、埼玉から都内のまで電車で通院しています。もし自分が院内感染のもとになったらと思うと、ビクビクしてしまいます」(40代女性、卵巣がん、治療中)
「通院等でどうしても交通機関を利用しなければならず、不安です」(60代男性、肺がん、治療中) 「医療崩壊したら、薬の処方はどうなるのだろう……」(50代女性、卵巣がん、経過観察中) 「肺の約5割を切除していて、長年の喫煙歴でCOPD(慢性閉塞性肺疾患)の兆候もあります。定期検診に行くのも躊躇します」(60代男性、肺がん、経過観察中)
「すい臓の腫瘍手術後、分子標的薬を服用中です。副作用で軽度の間質性肺炎があります。新型コロナに感染したら治療が可能か不安です」(50代女性、神経内分泌腫瘍、治療中) 「持病があり高血圧の人は感染リスクが高いと聞くので不安です」(60代男性、肺がん、経過観察中) 「発熱したときに、分子標的薬の副作用か新型コロナなのか、判断に迷いそうです」(50代女性、血液がん、治療中)


子どもから感染する可能性も……

 がんとの向き合い方が多様になったいるからでしょう。日常生活についての不安もさまざまです。 「みんなに公表していないので仕事も休めず、防ぎようのない事態かなと思います。抗がん剤治療を受ける人の被害が少ないことを祈るばかりです」(40代女性、MDS=骨髄異形成症候群、経過観察中)
「週に3回デイサービスに通っていますが、熱が出たらと不安です」(70代女性、肺がん、治療中) 「会社が在宅勤務になり、復職のタイミングを相談するどころでなくなってしまった」(50代男性、GBM=膠芽腫、治療中) 「抗がん剤治療を終えて1年。喘息とバセドウ病もあります。毎日洗えないため、ウィッグも脱ぎました」(50代女性、卵巣がん、経過観察中) 「新型コロナの患者さんを受け入れている病院に通院中です。子どもから感染する可能性もあります。マスクも手に入りません」(50代女性、大腸がん、経過観察中)
「喉頭を全摘したため、気管孔にエプロンを常備していますが、マスクのような密閉性はありません。感染しやすいのではと不安です」(70代男性、下咽頭がん、経過観察中)


がん患者には個別の対応をしてほしい

 最後に、各方面に対するご要望をまとめました。切実なものばかりです。 「重症化するタイミングがわかるといい。新型コロナとインフルエンザの違いもわかりやすく説明してほしいです」(50代女性、大腸がん、治療中)
「つらい!、と言える場所の確保を。院内サロンも患者会も自粛です。電話、メール、SNSなど何でも使ってサポートせねばと思っています」(50代男性、肺がん、治療中) 「病院側からより積極的なアナウンスがほしいです」(50代女性、子宮内膜質肉腫、経過観察中)
「熱が出てもすぐに相談できない間に悪化しないか不安です。がん患者は健常者と違うので、個々で対応してほしいです」(40代女性、肝臓がん・甲状腺がん、経過観察中) 「処方箋でマスクを買えるようにしてほしい」(40代女性、乳がん、治療中)

 日本対がん協会では、がん患者さんのための新型コロナウイルスというWebセミナーを始めています。最初は、がん研有明病院の院内感染対策部副部長の羽山ブライアン先生に登場していただき、感染防止のため、がん患者は何に注意し、どのように行動すればよいかを伺いました。
 今後も専門医の方々にお尋ねしようと思います。その中で、みなさんのご質問や声についても、改めて伺っていきます。  また、がん相談ホットライン(03-3541-7830)では、看護師らが予約なしの電話相談を匿名で承っております。緊急事態宣言を受けて規模を縮小しますが、ご活用いただければ幸いです。
 みなさんのご体調が安定されることと、一刻も早い新型コロナウイルスの終息(とまでいかなくても収束)をお祈り申し上げます。


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