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第61回 コロナ禍での入院はココがちがう!? 〜キグチの体験レポート〜/木口マリのがんのココロ

掲載日:2021年7月5日 10時00分

 長らく続く、コロナ禍の今。  そんななかでリンパ浮腫治療のための入院・手術を行うことになったワタシ。  

「普段の入院と、どこが違うのだろう?」 「事前に気をつけておくことは?」 「何を持っていったらいい??」  

 などなど、入院が決まったころからちょこちょこと気になりだしました。  今回は、3度目の緊急事態宣言中の東京で、実際に入院してみた体験レポートです。  

2週間前から感染注意! 仕事はどうする?

コロナ禍での入院をレポートします!(コロナではありません!)

 今回は、がんが見つかってから10回目の入院、5回目の手術です。入院も手術もお手のもの……のはずですが、少々勝手が違います。何せ、新型コロナが猛威をふるっているこの状況。  

「2週間くらい前からは、特に注意しておいてください。感染したら手術は数カ月延期」  

 主治医より、そう告げられました。今回の手術は、今すぐしなければ命に関わる類ではないものの、延期の間にさらに悪化するかもしれません。なるべく早く治療しておきたいところ。  

 ところが、こういうときに限って対面での仕事の依頼がいつも以上に入るという不思議。「今回はやめておいた方がいいのかな〜」と悩みつつも、仕事も大切にしたい。結局、引き受けることにしました。  

 それでも、自分の身を守るのも大事。そのためにおこなったのは、「近く入院するから気をつけたい」と取引先に伝えることと、「できればオンラインで」と相談すること。  面倒くさがられないだろうかと心配したものの、いずれの取引先も、こちらが恐縮するくらい気を配ってくれました。「あったかい人たちに囲まれているなぁ」と、改めて感じたものです。  

 相手の都合にもよるだろうし、何でも伝えれば解決するわけではありません。でも、どうしても不安が残るなら、まずは相談してみることが糸口になるのだと思いました。  

PCR検査の結果が出るまでは「出禁」!

初・PCR検査。「こんなに!?」と思ったけれど案外簡単でした。

 コロナ禍での診察は、入り口での消毒や検温など、さまざまにこれまでと違った点がありますが、入院だとさらに顕著になります。  

 感染予防のため付添人は窓口までしか入れず、お見舞いも禁止。病棟へ昇るエレベーター前には、警備員がデンと腰をすえている。入院患者がくつろいだり、お見舞いの人と話したりできる「デイルーム」も閉鎖。廊下にはほとんど人がおらず、ベッド周りのカーテンはいずれもしっかり閉ざされていて……。漂う空気までもがひっそりとしているようでした。  

 病室に着くやいなや看護師さんから手渡されたのは、プラスチックの筒。PCR検査の検体を取るためのものです。「PCR検査=鼻に綿棒(みたいなもの)」と思いきや、唾液でも検査ができるという。  

「結果が出るまで、トイレ以外で病室から出ないでください」と、看護師さん。すぐそこにある自販機までも行ってはならぬとのことでした。  

 このとき、朝10時。結果は15時ころにわかるらしい。来る前に売店で飲み物を買っておいてヨカッタ(買ってこなかった人はどうなるのだろう)。  

 この病院では、万が一陽性だとそのままコロナ治療のための入院となります。 「きっと、静かに別の病棟へと連れていかれるのだろう……」  そんなドナドナな光景を想像しながらも、気づけば荷物は広げ済み。陽性ならば、もう一度片付けねば。  

 今回の入院は、手術をともなっても2泊3日。しかし、コロナの入院となったらもっと長くなるはず。その場合は、足りない荷物を家族に持ってきてもらわなければなりません。  それを想定して、衣類や日用品の所在がわかりやすいよう、ある程度、家のなかを整理しておきました。我ながら、準備がイイ。結局、陰性だったので徒労に終わりましたが。  

手術中もマスク、寝るときもマスク

 このご時世だからこその持ち物として、入院案内に追記されていたのが「マスク」。  不足の事態にそなえ、3日間ではかなり多めの15枚を持参しました。過去の入院経験から、眠っている間の乾燥対策のために水分を含んだ夜用マスクもスタンバイ。  

日記イラスト「手術準備」

 陰性だったとはいえ、入院中は、自分のベッドにいる間もずっとマスクをしていました。  手術中もマスク。寝ても起きてもマスク。そのためか、頭痛が起きてしまいました。  

「これが、世に言う“マスクの頭痛”か(ニュースで見た)!」毎日マスクを着けながら働く人々は大変だ。リラックス効果を期待して、ときどき夜用マスクに交換するなどで対応しました。  

 

せっかくなので、両親に会ってきた

日記イラスト「ベッドを部屋っぽくしてみた」

 今回の入院は短期間だったけれど、お見舞いは来られないし、病院内での交流も少なく、もしも長い入院や大きな手術だったら、やはり寂しくなる患者さんは多いだろうなと思います。  

 私もほとんど院内をウロつかず、病室ごもり。売店で買った旅行雑誌のきれいな風景写真を眺めて物思いにふけったり、治療の様子をイラストに描いたりしていました。こんなにスローな時間をすごせるのは、入院のちょっとした特典かもしれません。  

 もう一つよかったのは、思いがけずPCR検査が受けたられたこと。  せっかくなので、退院したその足で両親に会いに行きました。実に、1年5カ月ぶり。といっても念のため家には入らず、近所の公園のあずまやで、お土産に買ったコンビニのたい焼きを食べただけですが。それでも実際に会えるのは、やはりいいものです。  

 

木口マリ
「がんフォト*がんストーリー」代表 執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。
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