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村本 高史の「がんを越え、”働く”を見つめる」第7回

掲載日:2022年2月10日 14時09分

 企業等の両立支援の取組みが話題になる時、よく取り上げられるのが社内の制度です。今回は両立支援のための制度について、そして制度よりもさらに大切なことについて考えてまいります。


多様な働き方と両立の現状

 これまで働き方改革を進める中で、各企業は柔軟な働き方を可能にする様々な人事制度を取り入れてきました。特に2020年春以降は、コロナの感染拡大でテレワークとせざるを得ない場合もあったりしますが、本来、こうした制度は社員が自らの事情や仕事の内容に応じて主体的に選択できることが重要です。

 

 治療と仕事の両立においても、短時間勤務、時間単位の有休休暇、テレワークは「3種の神器」的に言われたりしています。これらがあれば確かに社員の安心感はあるし、社外からの客観的な視点でも、制度があるかないかは外形的にわかりやすい面もあります。

 国立がん研究センターが厚生労働省委託事業として実施した患者体験調査(平成30年度調査)では、「治療と仕事を両立するために利用したものについて、お答えください」との質問に関し、「両立の相談窓口、時間単位・半日単位の休暇制度、時差出勤、短時間勤務制度、在宅勤務、試し出勤、その他」のいずれかに〇を付けた人の割合は36.1%でした。両立を行うための制度の利用率はまだまだ少ないと言えるでしょう。

 同じ患者体験調査の「がんの治療中に、職場や仕事上の関係者から治療と仕事を両方続けられるような勤務上の配慮があった」との質問では、肯定的な回答をした人の割合は、65.0%でした。まだまだ向上の余地はありますが、制度の利用率に比べるとかなり多くの人が勤務上の配慮を受けて治療と仕事の両立を行っていることが見て取れます。


制度と風土、あるいは仕組みと対話

 治療と仕事の両立を支える重要な両輪は、制度と風土です。社員に働きかける側の企業視点で言い換えるなら、仕組みと対話とも言えます。そして、制度よりも風土が、仕組みよりも対話が大切だと私は考えています。

 仕組みがあったとしても、引き続き対話をしながらきちんと運用しなければ制度の実効性は上がりません。一方で、仕組みがなかったとしても、対話をもとにしながら理解や配慮をしていくことは充分にできるはずです。特に中小企業の場合、経営者の考え方や比較的少人数の家族的風土の中、対話をもとに配慮していけることはあるのではないでしょうか。そうした対話の積み重ねが「お互い様」の風土づくりにつながるはずです。

 逆に見れば、いざという時に率直な対話を行っていくためには、病気になったからではなく、日頃から企業と社員が信頼関係を築き、何でも言い合えるような風土をつくっていくことが大切です。

 会社の根幹を成す仕組み、即ち制度は重要ですが、制度ばかりに目を向けず、風土の重要性にも意識を向け、日頃から対話を丁寧に積み重ねていく企業が増えていってほしいと願う昨今です。

 ※国立がん研究センター「患者体験調査報告書」(平成30年度調査)
H30_all.pdf (ncc.go.jp)

村本高史(むらもと・たかし)
サッポロビール株式会社
人事部 プランニング・ディレクター
1964年東京都生まれ。1987年サッポロビール入社。2009年に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。11年、人事総務部長在任時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声法を習得。14年秋より専門職として社内コミュニケーション強化に取組む一方、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立上げ等、治療と仕事の両立支援策を推進。現在はNPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事や厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定検討会」構成員も務めている。

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