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がんと食事の悩みは、栄養士さんに直接聞いてみよう! 第6回サバイバーカフェ開催レポート

掲載日:2018年10月16日 15時13分

 日本対がん協会のがんサバイバー・クラブは、9月20日、「がんと食事の悩みは、栄養士さんに直接聞いてみよう!」をテーマに、第6回サバイバーカフェを開きました。東京・銀座の日本対がん協会の会議室に、20名の参加者が集まりました。 講師は、都立駒込病院の栄養科科長・竹内理恵さんと、同科主任・小森麻美さん。都立駒込病院では、患者の病態に合わせたきめ細やかな治療食の提供を行っています。(文=日本対がん協会・高須由紀子)
 

水を飲むだけでも腸は動く

都立駒込病院栄養科科長・竹内理恵さん
最初に竹内さんが、「がんと栄養の関係」という題で講演をしました。 都立駒込病院の理念は、「医療を通して人がその人らしく生き抜くことを支援する」。竹内さんの話にもこの理念が流れています。 「がん患者における栄養の意義」について、竹内さんはこう語りました。 「栄養が直接がんの治療になるわけではありませんが、栄養状態が良いと、がん細胞と戦う力になります」 では、がん細胞に負けない栄養状態にするにはどうすればよいか。 「なかなか食べにくい時もありますが、少しでも口から食べて胃腸を働かせてください」 と竹内さんは話します。その理由を次のように説明しました。 「食べないと腸は働かなくなり、お腹の中で悪玉菌などが増えます。食べると胃腸が働いて、消化分泌をして、神経(頭)も働きます。消化管機能を調節し、ホルモンも調節します。あとは、細菌や不要なものと戦う免疫が働きます。このように、腸を動かすことはすごく大事です。食べたくないときは、水を飲むだけでも腸は動きます」 そして、いろいろな食品を偏りなく取り、調理方法も「煮る」「炒める」「焼く」など変化をもたせ、主食、主菜、副菜をそろえたバランスのとれた食生活を送ることが大切だと話しました。

アメリカ対がん協会のおすすめは?

アメリカ対がん協会にも、がん患者の栄養と運動に関するガイドラインがあります。 植物性の食物に重点を置いた、健康的な食事を推奨しています。具体的にどのようにすればよいか、竹内さんが解説しました。 ① 野菜や大豆製品などの植物性の食物をなるべく上手に取り入れる。 ② ハムやソーセージの市販加工肉(保存料が入っているため)と赤身肉は摂取を少なくする。 ③ カロリーが高いものを取りすぎないように1日の摂取量を決める。炭酸飲料などの飲み物は特に気を付ける。 ④ 果物は、ふだん全く食べない人は少し食べ、食べる人は食べすぎないように調節する。 ⑤ 玄米や発芽玄米を取り入れる。ただし、胃腸が悪い人は負担になるので量を少なくする。 ⑥ 飲酒は量が多くならないように注意する。 ⑦ サプリメントの使用は推奨しない。食事がとれる時はサプリメントは必要ない。 ⑧ 20代の体重を維持する。(その頃の体重にもよる) ⑨ 通勤や通学も含めて、毎日60分の運動をする。 ⑩ 外で歩くなどして、下半身の筋肉を落とさない。 また、「時間栄養学という概念があります。朝起きて昼動いて夜寝るという生活のリズムが同じであることが大切です。土日も平日と同じリズムで過ごすと体のペースが崩れません」と、規則正しい生活を心がけるよう勧めました。

休肝日を2日間は取る

続いて、がんサバイバーが気になるサプリメントの話題に移ります。 「サプリメントは、できれば使わない方がいいと思います。たとえば鉄分が足りなくて薬を飲んでいるところに、さらにサプリメントを取ると鉄分を取りすぎてしまうことがあります。サプリを使いたい時には、主治医の先生と相談した方が良いでしょう」 さらに、アルコールや天然の食材についても話を広げました。 「お酒は、どれくらい飲んでも大丈夫かを医師に確認していただければと思います。飲む時は、休肝日を2日間入れた方がよいです。また、生の食品には注意してください。殺菌していないものは、雑菌がいる場合があります。牧場で絞ったばかりの生牛乳を飲まずに低温殺菌されたものにしましょう。ハチの巣から採ったばかりのはちみつを使うことは、控えた方がいいでしょう。ジュースは、生絞りジュースを飲むよりは、製品化されているものを選んだ方が、感染予防としては安心です」

食欲がある時に少しでも食べる

都立駒込病院栄養科主任・小森麻美さん
口から食べたくても、バランスのとれた食生活を送りたくても、病気や治療の影響で「口内炎が痛い」「味覚障害がある」「食欲がない」「疲れて調理できない」など、難しい時があります。 そんな時はどうしたらよいのか。竹内さんからバトンタッチして、小森さんが、「無理をしないで食べていこう」というテーマで講演しました。 小森さんが紹介したのは、都立駒込病院栄養科のサイト『KOMA EI 簡単調理レシピ』。自宅で簡単に、栄養バランスの良い食事が作れるレシピが載っています。 例えば、包丁・まな板いらずの「さけのさっぱり混ぜご飯」、電子レンジでできる「手作り卵豆腐」、お鍋ひとつでできる「石狩鍋風」、カロリーアップに便利なMCT(中鎖脂肪酸)オイルを用いた「高エネルギーシャーベット」など。 その他、手軽に栄養バランスが取れる献立の作り方も紹介しました。 小森さんは、食べられない時の食事の工夫として、次の3つを挙げました。 ① 朝・昼・晩の3食にとらわれず、食欲がある時に、食べられそうなものを少しずつ食べる。食べられない時は、好きなものを少量でも食べることが大切。 ② 調理や片付けで疲れてしまわないように、市販の食品も利用する。 ③ 水不足によって調子の悪さが強くなるため、水分は忘れないように。 そして、「食べられない時は主治医や管理栄養士に相談すると、個別のケースに合ったアドバイスがもらえるので是非利用してください」と話しました。

コンビニ弁当や電子レンジは大丈夫? ―Q&Aより―

小森さんの講演後は、2人の講師に対して、参加者から多くの質問が続きました。
質問に答える小森さん(左)と竹内さん
Q. 塩分と酸味がしみて食べられない。
A. 料理は味付けなしで作り、あとで自分の好きな量だけ味を追加する方法もある。
Q. 舌に炎症があり、なかなか飲み込めない。
A. 刺激が少ないとろみが付いたものや、味がないものを食べてみる。豆腐やそうめんにつゆをつけないで食べる人もいる。主治医の先生にキシロカイン入りのスプレーなどを処方してもらい、炎症が収まっている間に食べる方法もある。口内が乾燥すると炎症が起こりやすくなるため、唾液が出やすくなる顔のマッサージやうがいをする。栄養補助食品はしみないものが多いので、そういったものでよくなるまで凌ぐ。
Q. 高齢で食欲がない。
A. 高齢者は、好きなものを少し口に入れることから始めてもよい。好きなものをみんなで一緒に食べると、「食べようかな」という気持ちになることがある。
Q. 栄養のことを知りたい時はどこに聞けばよいか。
A. 区役所などに聞くと窓口を紹介してもらえる。通院している病院に聞く、医師から紹介してもらうという方法もある。
Q. 外食を減らしたいが、どうすればいいのか。疲れて自炊が負担になることがある。コンビニ弁当などは化学調味料や保存料が心配。
A. 化学調味料や保存料はゼロにできるものではない。気にしすぎず、栄養を取ることを重視しよう。無理をせず、少し気を抜いて、「今日は休みだから自炊しよう」「今日は忙しいから外食にしよう」でよい。自分を追い詰めて精神的に負担がかかる方が体調を悪くする。
Q. 電子レンジは栄養を壊すため使用を控えているが、栄養士としての見解はどうか。
A. 考え方次第だと思う。電子レンジは、短時間で調理ができるためビタミンなどを壊す量が少ないという考えや、栄養素を流さなくて済むという意見もある。一概には言えないが、使用は全てダメというわけではなく、上手にいろいろな調理方法を使っている分には問題がないと思う。
Q. 病院食の栄養は足りているのか。
A. 病院食の食事制限のない食事は、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」を基に栄養量を算出して献立を立てて提供している。ただし、院外で活動している時の量ではないので、家で元気で食べられている時の量に比べると少ない。
「無理なく少しずつ、できる範囲で大丈夫」。2人の講師の話には、患者が安心できるメッセージが詰まっていました。 この日に語られたことの全てを実行しようとして、かえってプレッシャーになってしまったら、元も子もありません。体調や気分に応じて、できる範囲で参考にしていただけたら、と思います。 なお、竹内さんと小森さんの取り組みについては、『木口マリのがんのココロ第7回ザ・栄養士 〜ユニークな発想で「食べられる喜び」を〜』でもご紹介しています。 最後に、講師を囲んで集合写真を撮りました。
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