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第41回 抗がん剤治療中の“キレイ術”再び! 〜新型コロナを乗り切るプチ運動〜木口マリの「がんのココロ」

掲載日:2020年4月23日 13時49分

 治療中に、鏡を見て驚いた。  何に驚いたって、自分のハダカに驚いた。  

 鏡に映った私の背中から、あるものが消えていたのでした。  ……それは、凹凸!   

 筋肉は落ち、腰のS字はI字になり、オケツはタラ〜ンとしている。体重が落ちて余分な肉もないくせに、なぜかフニャンとした印象。  

「ギャッ!」と声をあげたくなるほどの、ものすごい老け具合。いつかお風呂屋さんで見たお年寄りがそこにいるようでした。治療中とはいえ、これは残念すぎる。  

 そこで始めたのがプチ運動でした。  体力・筋力が落ちまくりのうえ、自分に大変甘い私がやってみた「運動と続け方」が今回のお話です。   

「○○しながら体操」をやってみた

 凹凸のない背中は、それこそ「扁平」。  開腹手術後は動くのがままならず、そのまま抗がん剤治療が始まって、運動といえば、院内や家の中での歩行くらい。治療前に比べて格段に運動量が落ちたとはいえ、1ヶ月半程度でここまで体形が変わるとは。  

 生活の変化にすかさず身体が順応したのだろうけれど、そのスピードといったら、まさに情け容赦がありません。「ま、待ってくれ!!」という心の叫びなど、身体には届きはしない。  

 でも逆に、身体が「必要である」と判断すれば、戻ってくるわけです。さすがに扁平のままではいたくないので、必要だと思ってもらわねばなりません。それには運動が効果的。身体に対し、身をもって示すのです(なんかややこしい)。  

 ということで、まず始めてみたのは「○○しながら体操」!!  私が思うに、ながら体操が一番しやすいのは「歯をみがきながら」。  

「歯みがき」は活動距離と脳ミソの使用具合がどちらもミニマム。運動を同時にするにはもってこい。かつ毎日の習慣なので、継続させるにもちょうどいい。  

 たとえば「料理をしながら」だと行動がさまざまに変化するし、「テレビを見ながら」だと集中がそれてしまって知らないうちに運動が止まっているのが難点だよなと、自分自身を観察して思っていました。  

 そんなわけで、とりあえず「歯をみがきながら、足体操」をやってみました。  

またも日記に描いていたイラスト「歯をみがきながら、足体操」①〜③

 やり方はとってもシンプル。立ったまま足を片方ずつ後ろや横に上げてキープしたり、上下させたりというだけです。  体操の方法は、テレビやネットで見つけたかんたん筋トレに、以前スポーツジムに通っていたときにインストラクターから習った知識を織り交ぜてアレンジ。そのため半分自己流です。  

「続・歯をみがきながら、足体操」④〜⑤

「アレンジ=自分の目的(キレイにしたい部分)に合っている」ためか、効果はすぐに現れました。  開始した翌日には筋肉が復活のきざしを見せ、腰には微妙にアーチができていました。3日も続けたら扁平をほぼ脱却です。うーん、身体ってやっぱり反応が早い(それだけニブっていたともいう)。  

新型コロナの今は、「おうちウォーク」でノリノリに

 それにプラスして、抗がん剤の副作用が落ち着いてきたころには、「毎朝必ずお散歩」をするようにしていました。といっても、毎度、副作用直後はヨロヨロで、家から10メートルほどでUターンすることもあったのですが。(副作用のスケジュールは「がんのココロ17 抗がん剤・副作用プランニング」を参照)  

 最近は、新型コロナウイルスの影響で外出をほとんどしない日々です。そのなかで思うのは、「やっぱり太陽ってイイ!」ということ。たとえ玄関から一歩ほどの距離やベランダであっても、全身を外気に沈めて、お日さまの暖かみに触れるのはとても心地いい。  

 いつもそこにある自然だけれど、そのありがたさを改めて感じながら深呼吸してみると、心の奥まで新鮮な空気がしみわたっていく気がします。  

 しかしやはり、今はあまり長く外をうろつくべきではないし、うろつきたくもない。  そこで、お散歩に替えてやってみたのは「おうちウォーク」。一般社団法人キャンサーフィットネスが公開している動画「おうちでキャンサーフィットネス (8)ウォーキングエクササイズ」を参考にしました。  

 これは、いわゆる足踏みです。太ももを高く上げ、手を大きく振ります。  これが10分程度でもなかなかの運動量。しかもその日の体力に合わせて時間調整ができます。服装も、人の目も気にする必要ナシ。  YouTubeで見つけたノリのいいランニングミュージックを流しながらやっているのですが、気分爽快です。これも、始めた翌日には腰回りがシュッと引き締まってきたのを感じました。  

「運動は気持ちいいニャー!」

続かない私が、続けられるようになった理由

「運動がいいのはわかっているけれど、続かない」  多くの人がそこでつまずいてしまいます。  

 私も続かずに悩んできた一人です。 「根性で続ける」などは絶対にムリ。それに、無理矢理続けるのは全然楽しくない。  

 そこで思った大切なポイントの一つは、「何かしらの成果が感じられる」ということです。当時の私にとっては「体型の変化のきざし」はもちろん、「やると何だか気持ちがいい」ということも成果でした。  

「運動をすること」自体を目標にするのではなく、その先にある「気持ちよさ」っていいよな〜と思ったら、自然と続けることが苦ではなくなりました。  

「がんばって続ける」のではなく、「楽しいからやりたくなる」というような。それくらいノホホンとした具合が、私にはちょうどいいのでした。それがワクワクする成功体験になっていけば「もっとやってみよう」と思えるものです。  

 こうして何となくうまくいき、現在では毎朝20〜60分の運動をするようになりました。時間に差があるのは、「今日は何となくやる気が出ないから短く」「今日は気分がいいからもう少しやろう」くらいのゆる〜いくくりだからです。   

 副作用の合間でも、キレイは作れます。  テレビで見たものや聞きかじったものでも、そのときの自分に合わせて、できる運動をしてみてはいかがでしょうか。それで少しでも鏡に映る自分が変化してくれば、気持ちも明るくなっていくはず。   

「顔筋体操」も日記に発見。脱毛中のためイラストもケア帽子姿。

「がんになって、しかも新型コロナで家にいたはずなのに、逆にキレイになってない?!」なんて驚かれることが、みなさんに起こるといいなと思っています。  


木口マリ
「がんフォト*がんストーリー」代表 執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。
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