新着情報

元MDアンダーソンがんセンター
上野美和のテキサス便り
第4回 なぜ迷路や瞑想なのか? 
MDアンダーソンのがんサバイバーウイーク

掲載日:2020年6月26日 17時22分

 毎年6月の第一日曜日には、アメリカがんサバイバーデイが開催されます。この時期、MDアンダーソンがんセンターでも、がんサバイバーウイークとして、がん経験者と彼らを支えるケアギバーを祝うためのイベントを開いています。

 今年は6月7日~13日まで、さまざまなイベントを行いました。
 新型コロナウイルスの感染防止対策でオンラインになりました。ただ、想いは変わりません。いや、リアルで会えないぶん、より強くなっているかもしれません。

がんサバイバーウイークにはMDアンダーソンの思いが込められている。


 言葉や画像を思いのままに貼るだけ

「がんはパンデミックの間も止まりませんが、私たちも止まることはありません」
 がんサバイバーウイークを伝える文章は、このフレーズから始まります。
 数多くのプログラムを眺めて、興味深いと思ったのは、ラビリンス(迷路、迷宮)や瞑想といったテーマが目に付くことです。最先端を行くがん医療機関で、まるでスピリチュアル(精神世界)?

 そこには、なるほどという理由もあるのですが、まずは、具体的なプログラムをいくつかご紹介します。オンラインのよさは、日本にいても体験(参加)できることです!

①オリジナルのビジョンボードの作成
 たとえば、1枚の白い紙の上に、励ましてくれた愛する人達の感動的なフレーズや写真など、自分が大切に思う言葉や画像などを、大きさも関係なく思うがままに貼り付けていきます。
 テーマは決めても決めなくてもいい。何枚作ってもいい。

 できあがったら、いつも自分が見る場所に飾るのです。希望に満ちた状態を保つことが目的です。
 解説と実演動画はこちらです。「CHILL(落ち着く)」、「HOT TAKE(今一番よく考えていること)」といった文字を貼ったり、海辺や雪山の光景、キッチンなどの写真をコラージュしたり。文字と写真を組み合わせたり。作る過程も楽しそうです。

https://mediaplayer.mdanderson.org/video-full/75799DA8-7509-4E1B-BFC2-77112D7EF938

 手放して、受け入れる

②ラビリンス(迷路、迷宮)
 迷路を歩いたり、たどったりすることは、困難に立ち向かい、瞑想し、平和や平穏を見つけるのに役立つと言われます。
 統合医療センターのマッサージ・セラピストのサット・シリ・サムラー(Sat-Siri Sumler)さんが、ラビリンスを使った瞑想方法について、説明しています。

 ラビリンスウォークには、「手放す」-「受け入れる」-「戻る」の3つのステージがあります。
 最初の「手放す」では、全ての心配事や悩みなどを手放します。自分のペースで呼吸をしたり祈ったり。全ての感情を許容しながら、迷路の入り口から中心へ向かって歩きます。

 2つ目は「受け入れる」。迷路の中心に到達したら、その場にいたいだけとどまっても構いません。深呼吸をしたり、横になったり。リラックスし、自分がその場にいることを受け入れましょう。

MDアンダーソンのラビリンスのイメージ。(公式サイトより。)

 3つ目のステージは元の世界へ「戻る」です。最初の2つのステージで得た経験や思いを、良し悪しを判断することなく受け入れて、自分の内側を見つめ直します。

 今年は現実の迷路を歩けないので、迷路の図を指で追うことで“歩き”ます。
 シリさんは「音楽を聴いたり紅茶を飲んだりとリラックスできる環境をつくり、ゆったりと椅子に座り、心を開いて行うと良いでしょう」と話しています。

 動画とラビリンスの図はこちらです。
https://mediaplayer.mdanderson.org/video-full/FF1CABFF-7BB2-4920-9140-CCE8CDA4F8B1
https://www.mdanderson.org/content/dam/mdanderson/documents/patients-and-family/life-after-cancer/Using-a-labyrinth.pdf

③瞑想
 瞑想は生活の質(QOL)の改善、不安の軽減、睡眠の改善、精神的な気付きや幸福感の向上に役立つ可能性があります。リンク先がYouTubeですが、雲の映像と女性の語り、静かなBGMが流れる動画がこちらです。

https://www.youtube.com/watch?v=EuhV_S650Yw&feature=youtu.be


 座ったままヨガを楽しむ

④統合医療センターの紹介
 がん患者、介護者、医療従事者、学生のための補完統合医療に関する最新情報を提供しています。
 統合医療センターのスタッフがアップしている動画もあります。 

1)音楽セラピストのサラ・フォーサム(Sarah Folsom)さん
 タイトルは「音楽とマインドフルネスの運動」。ギターを奏でながらの弾き語りです。呼吸や筋肉のリラックスを促し、ストレスを軽減します。歌詞を正確に理解できなくても、心が落ち着きます。
https://mediaplayer.mdanderson.org/video-full/378E6E12-31D5-49DD-92C4-AD3CF88ABFCB

 タイトルは「音楽と呼吸の同期運動」。リラックスと呼吸を促進します。弾き語りの合間に、ひまわりやハイビスカスなどの花の写真も映し出され、見ているだけで癒やされます。
https://mediaplayer.mdanderson.org/video-full/46DBDD16-E20A-4D44-85CE-1D8274D1536A

2)心身相関の専門家、スミサ・マライア(Smitha Mallaiah)さん

瞑想は自宅でもできる。

 タイトルは「ヨガの呼吸法」。深呼吸は筋肉を緩めて、睡眠や精神的な健康、幸福感をよりよくするのに役立ちます。座ったままの動作で、片方の鼻を押さえて深呼吸するなど、映像を見ながら、簡単にできます。
https://mediaplayer.mdanderson.org/video-full/BFB1309E-7F50-4EF2-97C9-5982B197B519

 タイトルは「チェアヨガ」。あらゆる年齢。体型、体力レベルの人に適しているヨガです。座ったまま手や足を動かしたり、体を伸ばしたり。呼吸法と同じく、映像を見ながらできます。
https://mediaplayer.mdanderson.org/video-full/E4226D3F-8F3F-4A47-93B5-894639D7A606

間違ったものに手を出さないために 

 MDアンダーソンはなぜ、スピリチュアルのような世界に踏み込んでいるのでしょうか?
 患者さんは、ときに、病院で受けられる医療だけでは満足できなくなります。そして、ほかにも何かいいものがないかと、間違った情報に手を出してしまいます。それを防ぐために、MDアンダーソンが自ら、ネットやクラス(教室)を通じて正しい情報を提供する。そんな理由なのです。

 たとえば、ヨガ、太極拳、料理、瞑想などのクラスがあります。また、マッサージ師によるマッサージも受けられます。

 代替医療に関しても、昔から、院内のウェルネスセンターで正しい情報を提供してきました。

 患者さんは、自分が探してきた代替医療を、MDアンダーソンの情報と照らし合わせることで、信じてよいかどうかを考えることができます。むろん、最終的な判断は自分で下さず、医療者へ相談することが大切です。

 私は、パワーヨガをやった経験はあります。アメリカで発祥した、さまざまなヨガを取り入れたヨガです。ダイナミックで運動量が多いのも特徴です。頭を空っぽにすることで、一種のリセットができるような感覚になれるところが好きでした。

 たぶんこれは、ヨガでなくても、たとえば「思い切り体を動かす」「筆で文字を書き続ける」などでもよいのでしょう。ランナーズハイ、という現象もありますね。
 瞑想とまではいきませんが、夜寝る前にゆっくり深呼吸して、呼吸に意識を集中させることも好きです。

 ラビリンスは、どうやらキリスト教の流れのようです。私は子どものころから迷路大好きですが、ラビリンスのように瞑想を誘うものがあることは、MDアンダーソンの取り組みで初めて知りました。

 がんサバイバーウイークにはほかにも、多くのイベントがありました。プログラムはこちらです。

https://www.mdanderson.org/content/dam/mdanderson/documents/patients-and-family/life-after-cancer/2020%20Survivorship%20Week%20Schedule.pdf

 日本では、新型コロナウイルスが原因で亡くなった方は約1000人。一方で、年間約38万人の方ががんで亡くなります。しかも、コロナが収束してもがんは収束しません。
 コロナの打撃が大きかったアメリカでも、死者数で言えば、がんのほうが多いです。

 冒頭のフレーズには、「新型コロナウイルスで大変な時代だからこそ、がんと向き合う人々をサポートしよう」という気持ちが込められているのでしょう。

上野美和(うえの・みわ)
1964年、和歌山県生まれ。大阪薬科大学を卒業後、薬剤師の資格を取得。1991年、結婚を機に渡米。出産後、MDアンダーソンがんセンターでのボランティアを経てリサーチナース、データマネージャーを務める。2002年にメディエゾンLLC(合同会社)を立ち上げる。米国でセカンドオピニオンや医療、医療従事者への医療研修を受けたい人をサポートしている。

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