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第48回 歩く放射性物質になる!? いろんな検査をやってみた《第二弾》〜続・面白い体験シリーズ〜/木口マリの「がんのココロ」

掲載日:2020年8月21日 15時45分

 医療は、本当にどんどん進歩しています。病気を治す方法のみならず、病気を見つける検査方法まで、その技術や発想は驚きでいっぱい。ほんと、びっくりです。
 そして今回は、人体の不思議にもびっくり。
 いろんな意味で、新しい世界を垣間見たような検査体験レポート第二弾。「PET-CT(ペット・シーティー)」と「大腸造影剤検査」のお話です。

「せっかく隠れていたのに!!」がん細胞の叫びーー「PET-CT」

ピカッと光る!

「PET(ペット)」って、ちょっとかわいい響き。
 ところが実はこれ、放射能を含んだ薬剤を体内に注入して行うという、なかなかにドキドキものの検査なのです。

 私が使用したのは、放射性物質にブドウ糖をくっつけたお薬。がん細胞はブドウ糖を多く消費するため、注入した薬ががん細胞に集まります。特殊な装置でスキャンしてみると、集まった部分の放射性物質がピカッと光って見えるのだとか。一度で身体全体をスキャンできます。
 例えるなら、がん細胞が「おいしそうだ」と拾ったごはんを食べてみたら追跡装置がついていた、というようなイメージでしょうか。「せっかく隠れていたのに!!」というがんの叫びが聞こえてきそう。

 PETとは、ポジトロン・エミッション・トモグラフィー(positron emission tomography)の略で、日本語では 「陽電子放出断層撮影」という何やら難しげな名前。さらにPET-CTは、CTも同時に撮影してPETの画像と組み合わせられるという代物です。最先端の医療&電子工学を結集させたすごい検査ですが、確かにいろいろすごかったです。

妊婦や子供に近づいてはイケナイ

最近見た面白いもの:「たそがれの蚊取り豚」(PET-CT後、一人、外にたたずむ孤独を思い出しました)

 私が通う病院のPET検査室があるのは地下。
 そのころは、一度目の手術でまだがんが残っていると判明し、継続治療を行うことになったとき。がんの告知を受けたときよりも精神的打撃が大きく、なかなかに暗〜い気持ちになっていました。そんなときの窓も人気もない地下は、より薄暗く、より孤独な雰囲気に感じられます。

「放射線を注入」という響きにも、じんわりとした恐怖を感じなくもない。しかも使うのはただの注射器ではなく、大掛かりな機械仕掛けのもの。医師は口数少なく針だけ刺し、すぐさま別室に退避。機械が液を押し出して体内に注入していくのを見るのは(おまけに結構な量)、それなりに不安なものがあります。

 それから1時間、薬が全身にまんべんなく行き渡るまで別室で休憩です。リクライニングチェアに横たわり、「窓がないのは気が滅入るよな」「技師のおじさん(×2)とお医者さん(性別不詳)だけじゃなく、看護師さんが一人でもいたら落ち着くのに」等々、一人でブツブツやっていたら、お昼寝する間もなくお呼びがかかりました。いよいよ、装置と対面です。

 PET-CTの検査室がどんなものかと思えば……超クール!
 白さ際立つ明るい壁に、高い天井。広々とした部屋の真ん中にドーンと装置が置かれ、ドラマのロケにいつ使われてもいいくらいカッコイイ。前回のMRI以上にテンションが上がります。

 ところが検査は非常に短く、することと言えば横たわっているだけなので、特に何の感想もなく終了。

「体内から放射線が抜けるまで、しばらく人ごみは避けてください。特に妊婦さんや小さい子供には近づかないでください」という注意書きをもらい、検査室をあとにしました。

 ……が、しかし
 次に私の向かうべき場所は、産婦人科の診察室。妊婦さんや子供がワラワラいる。
 今、最も行ってはイケナイ場所な気がするが、どうしろと言うのだ。

 こうなっては仕方がない。
「この身が危険なものを放っているのだなあ」としみじみしつつ、一人でしばし、病院の外にたたずむのでした。

【この日の感想:このときの我が身をガイガーカウンターで測ってみたい】

“休業中”の大腸の不思議――大腸造影剤検査

最近見た面白いもの:日記に描いていたヘンな絵(一応、人工肛門があるときの入浴方法の説明)

 私は、大腸を使っていない時期がありました。がんの開腹手術の合併症で重症の腸閉塞になり、人工肛門となっていたときです。そのころに受けたのが、「非常に不快」とウワサの「大腸造影剤検査」でした。

 私が腸閉塞で切除したのは、小腸の後半部分。すぐに小腸と大腸を接続することができなかったため、しばらく小腸の切り口を体外に出し、新たな排泄口(人工肛門)としていました。それからというもの、小腸は大腸分の仕事まで引き受けて多忙を極める日々。

 その間、大腸はどうしているのかというと、完全休業です。
 これが実に珍妙。なんと、つぶれてペラペラになっているという。

 理科室の人体模型では、お腹の中心にグニャグニャと詰まった小腸があり、それをグルリととり囲むように大腸が設置されています。本当に体内でもあのような形だそうですが、あんなに太くてプクプクしている大腸が、休業中はピタッと薄っぺらになってしまうのです。

 しかも、お腹に埋もれて居場所が分からなくなってしまうほど。お医者さんは手術中、「ない、ない」と言って探すこともあるそうです。模型ではあんなにプクプクなのに!

 そんな訳で、大腸と小腸をドッキングし直す人工肛門閉鎖手術の前に、今、大腸がどのへんにあるのかの確認と、別の疾患が潜んでいないかなどを検査することになりました。

管をおケツに装着してグルグル回転!

 待合室の長椅子に座り、検査の順番を待っていると、突然「バタッ!」とドアが開きました。現れたのは医師と青い検査着を着た中年男性。男性は、すり足で、そして小走りに、検査着のすそをはためかせながらトイレへと突進していきました。

 それは、おそらく大腸造影剤検査をした人の姿。
 思ったよりも切羽詰まった表情ではなく少し安堵したものの、これから同じ検査をするのだなと緊張も感じていました。

 それがどんな検査かというと、おケツから管で造影剤と空気を注入し、管を装着したまま検査台の上でゴロゴロ転がされるというもの。胃のバリウム検査のような上下左右に動く台で行います。胃の検査と違い、放射線保護エプロンを着た医師がかたわらに付いて、X線画像を見ながら患者の身体を転がします。

 おケツにゴムっぽい長い管を刺したまま、造影剤が出ないようにググッと力を入れつつ、医師に手早くグイグイ向きを変えられ、ときには自分でグルグル回転し(当然、管は体に巻きつく)、グワングワンと動く台にしがみつく。

 そして終了すると、先のおじさん同様、検査着のままトイレへ向かうのでした。大股ではイケナイ。小走りですり足がポイント。多分、検査着のすそは、はためいていたと思う。

 ある看護師さんの話では、患者さんの間で「非常に不快な検査」として名高いとのこと。しかし、痛くないと聞いていたのと、その看護師さんや主治医に絶大な信頼を置いていたため、私にとっては非常に不快というほどではありませんでした。

あまり不快ではなかったもう一つの理由

 もしかしたら、人々が感じる「不快」のなかには、「恥ずかしい」なども含まれているのかもしれません。よく、婦人科の検診も恥ずかしさを理由に受けたくないと言う人が多いと聞きます。

 私はどうかといえば、治療や検査で恥ずかしく感じることは、まずありません。それというのも、おそらく医療者は、そういった点に関して何も思っていないからです。

 私はその昔、病棟で介護や看護助手をしていたことがあり、毎日、老若男女の患者さんのお尻やらハダカやらを見ていました。しかし一旦仕事モードに入ってしまうと、まったく何も感じませんでした。

 ふとそれに気づき、「きっと、医療者の多くはそうなのだろう」と思ったものです。以降、医療をとても気楽に受けられるようになりました。さすがにそれが専門ではない医療者にお尻を見せたくはないですが(笑)。

 次回の通院では、骨密度を計測する検査をする予定。利き足ではない足で、X線を使って測るそうです。どんな検査かちょっと楽しみです。

【この日の感想:いかに変な走り方と思われようとも、それには納得の理由がある】

木口マリ

「がんフォト*がんストーリー」代表
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。

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