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元MDアンダーソンがんセンター
上野美和のテキサス便り
第8回 仕事は立ってする ~「座りすぎはがんになりやすくなる」を検証する~

掲載日:2020年11月20日 12時30分

 日本では今、「座りすぎはがんになりやすくなる」が、ちょっとした話題のようですね。実はそのネタ元の1つは、2020年6月に、MDアンダーソンがんセンターがサイトで発信した「座る時間の長さが、がんによる死亡率を予測する」というタイトルの記事のようです。

 MDアンダーソンは2019年と2014年にも、同様の研究に関する記事を載せています。それらも交えてご紹介します。
 まずは2020年6月の記事から。

 https://www.mdanderson.org/newsroom/study-shows-sedentary-behavior-independently-predicts-cancer-mortality.h00-159382734.html

 MDアンダーソンがん予防センター准教授のスーザン・ギルクライスト(Suzan Gilchrist)医師は、2020年6月、医学誌「JAMA Oncology」誌でこの研究を発表しました。

 座っている時間が最も長い人は、最も短い人に比べてがんの死亡リスクが82%も高くなるというのです。ギルクライスト医師はこう語ります。

「今回の研究は、動かない(座っている)ことと、がんによる死亡との強い関連性を示した最初の研究です。私たちの調査結果は、がんと診断された人が診断前に座っている時間の長さが、がんによる死亡までの時間を予測できることまで示しています」

米国では毎年11月第4木曜日がサンクスギビングデー(感謝祭)。祝日となる。

 座っている時間を30分、活動に置き換える

 主な研究内容は以下の通りです。
 2003年から2007年にかけて45歳以上の米国の成人を募集し、3万人以上が参加しました。研究登録時にがんと診断されていなかった参加者8002人が、連続7日間、起きている時間帯に腰に加速度計を装着しました。

 加速度計のデータは2009年から2013年の間に集められました。平均5年間の追跡をした結果、 268人の参加者ががんで死亡しました。

 座っている時間がより長いことは、がんによる死亡リスクと大きく関連しています。

 一方で、軽度の身体活動 (LIPA)および中程度以上の身体活動(MVPA)についても評価しており、LIPAやMVPAが、がん死亡率と有意に関連していることを明らかにしました。

 たとえば、30分の座っている時間を身体活動に置き換えると、サイクリングなど中程度の活動なら31%、ウォーキングなど軽度の活動でも8%、がんによる死亡リスクが下がります。

 ギルクライスト医師は言います。

 

「私たちの調査結果は、『座っている時間を減らし、より多く動く』ことが重要であり、30分間の運動を日常生活に取り入れると、がんによる死亡リスクを減らせることを強調しています」

 ギルクライスト医師は診察時、患者さんに、運動時間の話をするそうです。
「1時間ごとに5分立ち続けること、エレベーターに乗らず階段を使うことを検討するように言います。大したことなさそうな軽い運動でさえ有益であることを、私たちの研究は示しました」

 ちなみに、記事では触れられていませんが、ギルクライスト医師は、米国の元プロテニス選手だそうです。


 座り続ける時間を減らす6つのコツ

 では、どうしたら、座り続ける時間を減らせるのでしょうか?
 2014年2月に掲載された記事が参考になります。タイトルは、「座っている時間:あなたのがんのリスクは何ですか?」です。

 https://www.mdanderson.org/publications/focused-on-health/cancer-risk-sitting.h11-1589046.html

 記事は、1日に数時間座っていると、たとえ定期的に運動していても、健康を危険にさらすと指摘します。MDアンダーソン行動科学部門教授のカレン・ベイスン・エンキスト(Karen Basen-Engquist)博士はこう語っています。
「長時間座っていると、大腸がん、卵巣がん、子宮体がんのリスクを高めます。肥満、糖尿病、心血管疾患のリスクも高まります。少なくとも1時間に1回は立ち上がって移動しましょう。電話をしているときに立ったり、テレビCMの合間に家の中を歩き回ったり。数分間の軽い運動で、がんのリスクを減らすことができます」

 次に挙げる6つは、カレン博士の勧める、座り続ける時間を減らすコツです。

①画面表示を短縮する
 リモコンを置きましょう。テレビやビデオゲーム、コンピューターを見る時間を減らせば、より活動的になります。これらの画面を見ているときでも、休憩を取って動き回ってください。

②活動的な余暇活動を選ぶ
 座る必要のない余暇活動を選び、リラックスしてください。ダンス教室に通う、庭仕事をする、近所を散歩するなどです。

③テクノロジーを使う
 電子メールで1時間ごとに移動するように通知するアラートをスケジュールしたり、スマートフォンのアプリなど、あなたの活動を追跡するツールを利用したり。チャートとグラフで、時間の経過に沿った活動状況が表示されるアプリもあります。
 エンキスト博士も歩数計を使用して、1時間に少なくとも500歩は歩いています。

④1日の中にアクティビティの時間を組み込む
 短時間の中程度から激しい運動でも心臓が鼓動し、健康を増進することにつながります。
 駐車場の端っこに車を停める、電話中に階段を上ったり歩いたりする、家の中を整理整頓する、などでも座る時間を減らせます。

スタンディングデスク。会議時間も短くなりそう。

 

⑤仕事は立ってする
 仕事を中断せずに活動するには、ウォーキングミーティング、机周りでのエクササイズなどを行い、座り仕事を減らすことです。職場環境を変えるアイテムとしては、スタンディングデスクやトレッドミルデスクなどが人気です。エンキスト博士は言います。
「立って作業をすれば、座り仕事よりも多くの筋肉を使い、より多くのエネルギーを消費します」

⑥週に2時間半の適度な運動を
 がんのリスクをさらに減らすには、座っている時間を減らすことに加えて、定期的な運動が必要になります。
 週に2時間半の適度な運動、もしくは1時間半の激しい運動を目標にしましょう。


 週5日の適度な運動で化学療法も効果が高まる?

 最後に2019年3月の記事を紹介します。タイトルは「運動は化学療法の効果をより高められるか?」です。

 https://www.mdanderson.org/cancerwise/can-exercise-make-chemotherapy-more-effective-for-cancer-treatment.h00-159301467.html

 MDアンダーソンで長年、腫瘍における血管の形成と機能について研究してきているケリ・シャドラー(Keri Schadler)博士は「固形腫瘍内の血管の構造である腫瘍血管分布は、健康な組織の血管系とは大きく異なることがある」と話します。

 固形腫瘍へ化学療法(抗がん剤)を届けるための最大の問題の一つが、十分に機能的で成熟した血管が半数しかないことです。

「私たちは、腫瘍に化学療法を施すため、血管の機能の改善に取り組んでいます」とシャドラー博士は言います。

 マウスをモデルにしたシャドラー博士の研究では、血流の増加は血管の成長と成熟を促すという前提に基づき、「血流を確実に増加させる最善の方法は運動」となりました。シャドラー博士は「頻度や強度はまだ検討中ですが、週5日の適度な運動は効果的です」と話しました。

   ◆             ◇             ◆

 私は高校時代は運動嫌いでした。それが、アメリカへ来て、産後太り解消のために運動を始めました。ジムや海兵隊の「ブートキャンプ(Boot Camp)」に参加するうちに何かと体が動くようになり、いつの間にか、運動できない日が続くと気分が落ち込むほどになっていました。

 

 新型コロナウイルスの影響でステイホームが続く中で、今年購入したFitbitという機器が役立っています。腕時計のように手首に巻いて運動量や歩数をチェックする機器で、自分の動く時間帯を設定すると、1時間座り続けていたり、250歩以上歩いていなかったりした場合、「動きなさい」とバイブレーションで知らせてくれます。

 私は毎年、MDアンダーソンでマンモグラフィ検査を受けています。その際にいつも、週に2時間以上の運動を勧められています。それが正しいことを、これらの記事で再確認できました。

 コロナに負けず、ますます体を動かしたくなりました。


これまでの、元MDアンダーソンがんセンター 上野美和のテキサス便りはこちらよりご覧いただけます

上野美和(うえの・みわ)
1964年、和歌山県生まれ。大阪薬科大学を卒業後、薬剤師の資格を取得。1991年、結婚を機に渡米。出産後、MDアンダーソンがんセンターでのボランティアを経てリサーチナース、データマネージャーを務める。2002年にメディエゾンLLC(合同会社)を立ち上げる。米国でセカンドオピニオンや医療、医療従事者への医療研修を受けたい人をサポートしている。

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