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元MDアンダーソンがんセンター
上野美和のテキサス便り
新型コロナのワクチンを接種した、次はどうする?

掲載日:2021年2月26日 10時13分

ワクチンは必ず2回接種する

 アメリカでは新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいます。では、ワクチンを打ったら、次はどうすれば良いのでしょうか? マスクは着用しなくても大丈夫? もしも相手もワクチンを打っていた場合は?

 今はワクチン確保や接種スケジュールに関心が向く日本でも、いずれ中心的な話題になるテーマでしょう。MDアンダーソンがんセンターの感染症管理の最高責任者、ロイ・ケマリー(Roy Chemaly)医師らが解説する記事を紹介します。

 日本で知られている事柄もありますが、情報整理の意味も込めてお読みください。

https://www.mdanderson.org/cancerwise/you-ve-gotten-the-covid-19-vaccine–now-what-can-you-do-safely.h00-159458478.html
1.ワクチンの接種量と時間の両方が必要

 ファイザーやモデルナのワクチンはいずれも、臨床試験の結果によると、最大限の予防効果を得るために2回の投与を受けることが重要です。

 ワクチン接種者の最大50%の人が初回接種の約10日後に、最大95%の人が2回目接種の約7日後に感染による重症化を予防できます。こんなに効果が違うのです。  ファイザー製のワクチンは3週間、モデルナ製は4週間の間隔を空けます。


感染しないわけではない

2.ワクチンを接種してもコロナに感染しないとは限らない

 ファイザー製とモデルナ製はいずれも、重症化を予防しますが、コロナ感染そのものを防ぐことは保証しません。ケマリー医師は「どちらのワクチン(mRNAワクチン)も非常に効果的ですが、接種した人の約5%~13%は、感染は予防できないでしょう」と語っています。

 また、現在の南アフリカ型とイギリス型の変異ウイルスに対しては有効であることが示されています。ただ、将来の変異にも有効かはまだわかりません。  何より、すぐに全国民が接種できるわけではありません。

 したがって、ワクチン接種後に感染しても無症状のままでいて、誰かにうつす可能性もあります。マスクを着用し、ソーシャルディスタンスを保って、定期的に手を洗うことは引き続きとても重要になります。  室内に大勢で集まること(日本で言う三密)は避けましょう。


集団免疫の獲得までは緩めない

3.いつまで待てばいいの?

 では、パンデミックはいつまで続くのでしょうか? そして、いつになったらマスクを外して、愛する人たちを抱きしめられるのでしょうか?

 ケマリー医師は、「私たちがいつ集団免疫を獲得できるかを予測するのは難しい」と言います。集団免疫という目標を達成するには、少なくとも人口の70%が、ワクチン接種を受けるか自然免疫を持つ必要があります。

 ただ、新型コロナウイルスについては、あたりまえですが、十分なデータがありません。 「私たちは今後のワクチン接種の広がりを待ち、どんなデータが出てくるのかを見ていくしかないでしょう。ワクチン接種はコロナを乗り越える助けになると確信していますが、まだガードを緩めるわけにはいきません」



9つの神話

 MDアンダーソンがんセンターは別に、「ファクトチェック:コロナワクチンに関する9つの神話」という記事も出しています。

https://www.mdanderson.org/cancerwise/fact-check–9-myths-and-misconceptions-about-the-covid-19-vaccines.h00-159457689.html

 このうち、次の5つはすでに知られているでしょう。答えはいずれも「ノー」です。

 ①がん治療を受けているときはワクチンを接種すべきではない  ②ワクチンを接種すればコロナウイルスを他の人に広めない  ③ファイザーとモデルナのワクチンには、実際のウイルスが含まれている  ④ワクチンの製造開発が速すぎるので安全ではない  ⑤2回目のワクチン接種は必要ではない



接種のメリット>リスク

 以下の4つは、少し解説が必要かもしれません。  神話⑥:ワクチンを接種するとコロナウイルス検査で陽性反応が出る

 事実(ファクト): このワクチンには、実際のウイルスが含まれていないため、ワクチン接種が原因で陽性反応が出ることはありません。陽性反応が出るのは、接種後に感染した場合です。

 神話⑦:すでに新型コロナウイルスに感染した人はワクチン接種の必要がない  事実:ワクチンは免疫力を高めることに役立つため、接種したほうがいいです。

 神話⑧:ワクチンはDNAを変化させる  事実:mRNAワクチンはDNAに変化も影響も与えません。

 神話⑨:ワクチンには重い副反応がある  事実:新型コロナウイルスのワクチンの副反応は、インフルエンザの予防接種を受けたときに起こるものと非常によく似ています。インフルエンザの予防接種を受けて問題がなければ大丈夫でしょう。

 注射の直後に腕の痛み、疲労、頭痛などの短期的な副反応を経験する可能性はあります。重篤な副反応はまれです。ごく一部の人では、アナフィラキシー(重篤なアレルギー反応)が起こることがあります。しかしこれまでのところ、この種の反応を示した人の数は、ワクチン接種を受けた人と比べて非常に少ないのです。

 接種のメリットは、リスクをはるかに上回ります。特に、がん患者など感染症のリスクが高い人ではその傾向が顕著です。


今度のクリスマスには……

 最後に、2つの記事のポイントを改めてまとめておきましょう。

 ①ワクチンは感染そのものを防ぐわけではない  ②ワクチンは2回接種することで、95%以上の確率で重症化を予防する  ③接種後も、無症状感染によって誰かを感染させる可能性はある  ④重篤な副反応が出るリスクはまれである  ⑤ワクチン接種は、感染が広がらない環境を作る手助けになりうる  ⑥集団免疫の獲得には、少なくとも人口の70%が、ワクチンを打つか自然免疫を持つか、が必要  ⑦2度のワクチン接種後も、マスク、手洗い、三密回避などは続ける

 アメリカのバイデン大統領は2月16日、「次のクリスマスまでには状況は大きく変わると思う」と述べました。  目を閉じて、今度のクリスマスの情景を思い浮かべると、希望が見えてきて、気持ちも安らぎます。

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上野美和(うえの・みわ) 1964年、和歌山県生まれ。大阪薬科大学を卒業後、薬剤師の資格を取得。1991年、結婚を機に渡米。出産後、MDアンダーソンがんセンターでのボランティアを経てリサーチナース、データマネージャーを務める。2002年にメディエゾンLLC(合同会社)を立ち上げる。米国でセカンドオピニオンや医療、医療従事者への医療研修を受けたい人をサポートしている。

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