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【新連載】
ドクター冨田発、アメリカ がん医療の今【1】

掲載日:2021年4月27日 9時30分

 今回から新しく連載を始めていただく、冨田恵先生の第1回のエッセイです。
 冨田先生は医師として現在アメリカでがん治療を行っています。
 第1回目は冨田先生がなぜアメリカに渡ったのか、思いを書いていただきました。


二つの大きな役割を担う

 私が従事している病院はアメリカのカリフォルニアにあるカイザーです。カイザーはアメリカでよく知られた非営利医療機関で、アメリカ全体でみると、約2万人の医師と30万人ほどの医療従事者がいて、約1200万人の患者さんに医療を施しています。

 私はそのカイザー病院の発祥したカリフォルニア州のセントラルバレーという地域で医療にあたっています。セントラルバレーはアーモンドやワインなどが有名な地域で、サンフランシスコから車で東に1時間ちょっとで行けるところです。

 私はこの地域の副最高医務責任者で、がん専門内科医としてがんの治療にもあたっています。管理者としての仕事は、大きく三つに分かれ、一つは内科の中でもがん内科、循環器内科、肺専門科など、11部署に分かれた内科専門部署の総合管理です。

 二つ目は医療機関が緊急事態に陥った時に行う総合指揮監督の仕事です、例えば自然災害や現在も続いている新型コロナウイルスの蔓延のような緊急時に、提供すべき医療を調節し、患者さんの命を守るためにチームを動かす緊急司令を取る仕事です。

 三つ目は、4年前に全米認定がん治療施設に認定された当院で、総合がん委員会委員長として病院全体のがん医療を管理する仕事です。

 また、がん専門内科医として、がん患者の治療にあたっています。がんの治療にあたる医師を分別すると、主に3つの専門医から成り立ちます。手術をおこなう外科医、放射線専門医、そして私の専門である、がん専門内科医です。

 がん専門内科医は化学療法の他に、分子標的治療薬、ホルモン薬、免疫療法剤などの内科的治療を患者さんに提供します。

 治療方針を決める際には、多岐にわたる患者さんの情報が必要となります。例えば、がんはどこから発生したかという病理的情報(原発巣)、進行度、既往歴、それまでの治療の反応、そして最近では、がん細胞の遺伝子情報等が必要になります。

 治療方法によって副作用も違います。ですから患者さんを治療する際には、完治を目指しているのか延命なのかということも含め、一番大事なことは患者さんの意向をもとに共に治療方針を決めていくということです。患者さんは一人ひとり違いますし、がん治療は急速に進歩し続けている分野です。私はここで患者さんや他の同僚から刺激をもらいながら医療にあたっています。


なぜアメリカに渡って医療を行うようになったのか?

 今回、「どうして先生はアメリカに渡って医療を行うようになったのか」という質問を受けたのですが、よくよく考えてみると2つの理由があったと思います。
 1990年台に看護学と医学の勉強を大学で受けたのですが、アメリカでは医師の教育システムが既に確立していたということが一つの理由としてあげられます。

 2つ目はエビデンス重視の治療をしていることを知ったことです。次第にアメリカで医師の研修を受けたいと思うようになりました。例えばすべてのがん内科医師は、医学部を卒業後に内科全般のトレーニングをまず3年間で行い、そのあとがん専門内科医になるために特定機関でがん内科専門の教育を2~3年受けます。

 がん専門内科医の認定を受けた医師以外はがん内科の治療薬は処方できません。患者さんの立場からすると、医療レベルの差は少ないので、安心できるというメリットがあると思います。


コロナとがん診療にいかされるテクノロジー

 私が当直中に、14年間医師として診てきたがんの患者さんが入院しました。72歳の彼は、いつも穏やかで、どんなに辛いがんの状況に陥っても常に落ち着いて、私と家族と一緒に最適な方法を考えられる人でした。

 彼が初診の問診で「子供の頃、枯葉剤を親が庭にスプレーでかけていたと思う」と私に伝えたことはいまだに忘れません。大きな庭に何かを育てていた父親が、枯葉剤、有害でがんを誘発する薬を使っていたというのです。

 問診を続けると、すべての兄弟がリンパ腫や血液系のがんにかかっていた事実を知りました。そのあと彼も、リンパ腫になり、いろいろな治療を施したのですが、その間に、兄弟はがんで亡くなりました。

 彼は心臓病も患いましたが、いつも家族や私たちに優しく微笑んでくれるような患者さんです。現在はさらに急性白血病の診断を受けることになり、余命が限られている状態です。

 そんな中で彼の娘さんは去年、新型コロナウイルスに感染してしまいました。体力の無くなっていく父親に会わないようにつとめ、完治してからも会いたくても会わないようにしていました。今年になってやっと再会できるようになりましたが、父は既に弱ってきていました。その後、この患者さんは退院することができましたが、心の支えとなる大事な人と会えなくなる、家族として、友人として応援したくても遠くからでしか見守ることができないと言うコロナ禍の状況は、日本でも、アメリカでも同じです。

 がんの患者さんや家族は治療が長く続くことが多いので、この1年は本当に大変でした。

 しかしまだコロナ禍での治療や、診察が不可欠となります。

 コロナ禍が起きてから、私の施設での診察は患者さんを目の前にして診察する形からテクノロジーを駆使したものに代わっていきました。退院した彼に対しても同じで、2週間後の診察は自宅からのビデオでがんの経過を見る予定です。
 彼も家族も「簡単で困っていない」と言ってくれています。

冨田 恵(とみた・めぐみ)【医師】
カリフォルニアセントラルヴァレー、カイザーメディカルグループの副最高医務責任者
がん総合医局長を10年勤めた後、現在は所属先の全米認定がん治療施設の総合責任者、がん委員会委員長として指揮をとる。また総合がん専門内科医、医療経営学修士であり、がん診療指導に従事している。

コーネル大学大学院卒:医療経営修士号取得
エール大学総合内科フェロー:がん専門医免許取得
アリゾナ大学;統合医療専門フェロー修了
ベスイスラエル病院レジデンシー:総合内科医免許取得
東海大学医学部卒、医師免許所得
北里大学:看護師・保師師免許取得

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