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佐々木常雄の「灯をかかげながら」
第14回 喫煙者の方は、ここで覚悟するしかありません

掲載日:2021年7月19日 15時30分

がんなど多くの病気の原因となる受動喫煙 

 たばこを吸う人ではなく、その周りの人がたばこの煙を吸い込むことを「受動喫煙」といいます。日本国内ではたばこを吸わないのに受動喫煙の影響で年間1万5000人が亡くなっているのです。  たばことの因果関係が明らかになっているがんは肺がんだけではなく、頭頸部、食道、胃、さらには肝臓、膵臓、膀胱子宮頸部のがんなどたくさんあります。たばこが原因となる病気はがんだけではありません。脳卒中や心筋梗塞などの原因にもなっています。  分煙しても、実はたばこの臭いを嗅ぐだけで健康被害を受けます。喫煙者の周りの人は、喫煙により生じた有害物質を多く含んでいる副流煙(たばこの先から出る煙)、呼出煙(喫煙者が吐き出した煙)を吸わされるのです。  マンションのベランダで喫煙されている方を見ることがあります。たぶん、家族に受動喫煙のことを言われてのことと思います。しかし、纏わりついた煙は、容易にはなくなりません。喫煙後、エレベーターに45分間は乗ることができないと決めている役所もあります。

 2010年、IOC(国際オリンピック委員会)とWHO(世界保健機関)は「たばこのない五輪の推進」で合意し、その後、五輪開催都市だったロンドンとリオデジャネイロでは、飲食店などの屋内全面禁煙が実現したそうです。そして、「その禁煙による飲食店の客離れはなかった」とする調査もあります。  日本では、東京オリンピック予定に合わせて2020年4月から健康増進法が改正され、屋内原則禁煙、喫煙可能部屋の設置などが決められました。しかし、多くの医師は「これでは禁煙にとても消極的で情けない」と反対していたのです。  もちろん、禁煙が大切ですが、受動喫煙の機会を減らすことも必要です。東京都がん対策推進計画(二次改定、2018年3月改定)では、目標値を「受動喫煙の機会をなくす」としました。


コロナ禍で、受動喫煙が30%増加 

 2020年のオリンピックは、コロナ禍で延期となり、3密を避けるように、不要・不急の外出をしないように、自宅でのテレワークが推進され、そして緊急事態宣言、蔓延防止等重点措置を延々と繰り返し、今日に至っています。  この5月、国立がん研究センターでは、「たばこを吸う同居人からの受動喫煙が増えた」と答えた人が33.7%にも上ったとする調査結果を発表しました。  コロナ禍で、外では酒を飲めず、自宅で過ごすことが多くなり、同居者の受動喫煙が増えた原因だと思います。踏んだり蹴ったりとは、このことではないかと思うのです。  毎日のコロナ感染者数、死亡者数の発表、酒は外では飲めない、このずっと続いてきたストレスをどうすれば減らせるのか。  政府は、ワクチン、ワクチンをと言ってきたが、ここへきてそれが足りない?その在庫管理すら出来ていない?それでまた、腹が立つ、ストレスになって、きっと喫煙者はまた吸いたくなる。


 コロナ禍は禁煙の絶好のチャンス

 コロナ感染症では重症化リスクに喫煙者もあげられます。  喫煙者の方は、もうここで覚悟するしかありません。これを機会に禁煙しましょう。このコロナ禍を利点に転ずるとすれば、それしかありません。  何回も禁煙を試みて繰り返えしておられる方も、これが最後と思って、絶好のチャンスだと思って禁煙しましょう。  病院の禁煙外来に行ってみるのも一つの手です。  コロナ禍で、日本国中、みんな、みんなストレスの毎日、たばこを吸いたくなる気持ち、、、しかし、ここです。  ここがチャンスと思ってたばこを止めましょう。自分のため、周りの皆さんのため、たばこを止めましょう。

シリーズ「灯をかかげながら」 ~都立駒込病院名誉院長・公益財団法人日本対がん協会評議員 佐々木常雄~

がん医療に携わって50年、佐々木常雄・都立駒込病院名誉院長・公益財団法人日本対がん協会評議員の長年の臨床経験をもとにしたエッセイを随時掲載していきます。なお、個人のエピソードは、プライバシーを守るため一部改変しています。


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