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佐々木常雄の「灯をかかげながら」
第17回 がんを予防することができるのか?

掲載日:2022年2月7日 9時33分

一次予防と二次予防

 がんの予防のお話です。

 がんの予防は一次予防と二次予防に分けて考えられています。

 一次予防は、生活習慣・生活環境の改善や、がんのリスク因子となる感染症を予防することを指します。バランスの良い食事、適度な身体活動、適正体重の維持、節酒、禁煙などがあげられています。また、がんのリスク因子となる感染症では、胃がん、子宮頸がん、肝がんにおいてその対策が行われています。二次予防はがんの早期発見を指しています。早期発見のためには、科学的根拠に基づくがん検診が重要です。

 胃がんの発生は、大部分がヘリコバクター・ピロリ菌感染によることから、ピロリ菌を除菌することによって胃がん発症を減少させることができることが分かっています。しかし、除菌によって胃がんが発生しなくなるかは分かっていません。いずれにせよ、胃がんを減らすのにピロリ菌除菌が有効な手段で、胃がんの死亡率は1970年代から低下傾向にあります。


今年4月から子宮頸がんワクチン接種の積極的勧奨を再開

 子宮頚がんの予防には子宮頸がん予防ワクチンがあります。子宮頚がんはそのほとんどがHPV(ヒトパピローマウイルス)感染によるもので、ワクチン接種により感染を予防し、88%ほどがんを減らすことができたとの報告があります。

 日本では2013年4月に12歳から16歳(小学6年から高校1年に相当)の女性に対して、無料の定期接種として積極的勧奨としました。しかし、接種後に体の痛みなど様々な症状の訴えの報告があり、厚労省は同年6月に定期接種を維持しながら、積極的勧奨を中止しました。しかし、2021年11月の検討部会で、海外の大規模試験で予防効果が示されていることから、子宮頸がんワクチン接種の積極的勧奨を、今年4月から再開することが決まっています.

 肝がんは、その多くの要因はC型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎(HBV)の持続感染によるものであることが分かっています。肝細胞がんの60~70%がHCVに起因するとされており、最近は抗HCV薬の登場で肝がん全体が減少傾向です。また、2016年10月1日からB型肝炎ワクチンが定期接種として行われています。しかし、非B型非C型肝細胞がんの割合が増加しており、その多くは非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に起因していると考えられています。


がん予防薬として注目されるアスピリン

 最近、薬でのがん予防として、アスピリン(バファリン)が注目されています。
アスピリンは通常、痛み止めの目的では大人1回300mg内服です。低用量アスピリン(100mg)は1日に1回服用することで、血小板が固まりにくくなる作用があることから、血管が詰まっての心筋梗塞、あるいは脳梗塞後の再発予防に使われています。この低用量アスピリンを長期間服用している患者は大腸がんが少ないことが報告されています。また、大腸がんの前がん病変である大腸腺腫も低用量アスピリンでその発生が低下することもいくつもの臨床試験で証明されています。また、アスピリンは食道がん、胃がんの発生を抑制しているとの報告もあります。

 今の保険上では、がんの予防のための内服はできませんが、将来、大腸がん予防のために低用量アスピリン内服が実用化されることになるかも知れません。また、とても厄介ながんとして知られている膵臓がんにおいても、アスピリンを5年以上内服している方では、疫学的研究から予防効果が示唆されています。しかし、乳がん、前立腺がんに対しての予防効果はないようです。

 いずれにしてもがんの発生率を減らすことが出来たとしても、がんをなくすことは出来ていません。

 今のところ、がんの予防には生活習慣の改善と、さらに、がん検診により、がんを早期に発見することがとても大切です。

シリーズ「灯をかかげながら」 ~都立駒込病院名誉院長・公益財団法人日本対がん協会評議員 佐々木常雄~

がん医療に携わって50年、佐々木常雄・都立駒込病院名誉院長・公益財団法人日本対がん協会評議員の長年の臨床経験をもとにしたエッセイを随時掲載していきます。なお、個人のエピソードは、プライバシーを守るため一部改変しています。


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