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クリコ流ふわふわ介護ごはん
第7回 美味しく健康的に「食べる」を演出する

掲載日:2022年4月19日 16時21分

 こんにちは。クリコです。

 コロナ禍の在宅時間の変化をきっかけに、料理をする機会が増えたという方も多いのではないでしょうか。  私も普段はなかなか作らない手間のかかる料理を楽しむ日々を送っていました。ごちそうを前に食欲もMAX…そして、体重も人生MAXに。減量のために、食事スタイルを「一汁三菜」に変えてみることにしました。すると、なんのストレスもなく体重を元に戻すことができたのです。  健康的に体重を減らすために心がけたのは、栄養バランスでした。

 今回は、噛んだり飲み込んだりする力が弱くなった方が、栄養と食べる量を過不足なくとる方法や食欲を高める工夫についてお話しします。


昔ながらの食事スタイルが理想的だった

 嚙む力が衰えて、野菜や肉・魚介など硬いものや繊維質のものを食べられなくなると、栄養のバランスを崩してしまいます。健康維持のためには、必要な栄養素をバランスよくとることが大切ですが、実践するのは案外難しいもの。  そこでお勧めしたいのが、昔ながらの日本の食事スタイル「一汁三菜」(下図)です。「一汁三菜」は、ごはん、汁物、主菜1品、副菜2品を組み合わせた献立形式。主食のごはんから「炭水化物」、主菜の肉、魚、卵、大豆から「タンパク質」「脂質」、副菜や汁物の野菜や海藻から「ビタミン」「ミネラル」と、人の身体に必要な5大栄養素をとることができ、理想的な形と言えます。

 健康維持には、食事の質だけでなく、適切な量をとることも大切です。

 お正月やクリスマスパーティーなどでは、テーブルいっぱいのご馳走が食欲を刺激します。あれも食べたいこれも食べたいと、いろいろな料理に手を伸ばし、結果的に食べ過ぎてしまった経験もあると思います。

 ちょっとした工夫で、食べる量を簡単にコントロールすることができます。料理の器を食卓に直置きせず、ランチョンマットの上に置く。たったこれだけです。

 ランチョンマットに並べるのは、もちろん「一汁三菜」の献立です。一食に食べる量の過不足を視覚的に判断することができるうえに、栄養バランスもとれて一石二鳥です。  パン食の場合は、主食と汁物をパンとスープに置き換えます。もちろん、間食も健康状態にあわせて、適量を楽しみます。  普段の食事は一汁三菜を基本とし、休日や人を招いて食事をする時は、自由なスタイルにするなど、メリハリをつけて楽しみながら健康管理をしたいものです。


「食べたい」気持ちを刺激する工夫のあれこれ

 思うように噛めなかったり、飲み込めなかったりすると、食事を楽しむことができなくなり、ついには食への興味を失ってしまうこともあります。食欲を高めるための簡単な工夫がいろいろあります。

  1. 噛む・飲み込む力に合わせて食べやすく調理  コラム第5回でお話ししたように、食べる力に合わせて、食べやすく調理することが大切です。食べやすさが食事のストレスを解消し、食欲増進につながります。  野菜は柔らかく加熱し、小さく切ってとろみを添えたり、ピュレ状にすりつぶしたり。肉や魚は格子状に隠し包丁を入れたり、肉団子やすり身にするなど、調理の工夫をしてみましょう。
  2. 好みの食材と好みの味付け  ある高齢者施設の利用者の好きな食べ物ランキングNo. 1は、なんと鶏の唐揚げだそうです。高齢者はあっさり味が好きというのは、必ずしも当たらないようです。  食べる人の好みの食材や好みの味付けで調理することも、食欲喚起につながります。食べ物の味覚や嗅覚などが衰えて、好みが変わることもあります。味付けや香り付けを変えて、食欲を刺激するのも効果的です。
  3. 盛り付けを工夫する  人間の五感の情報収集能力は、味覚が1%に対し視覚が80%以上という研究データがあります。私たちが食べ物を美味しいと感じる時、味覚より視覚から受けた情報で判断しているということです。食べる前に「美味しそう」「食べたい」と感じるよう、料理の彩りと盛り付けの工夫をしてみましょう。  私は、なかなか出番の来ない来客用の漆器を普段使いにすることにしました。いつもの料理も塗の角盆に並べると、ぐんと格が上がって美味しそうに見えます。  お弁当箱で見た目の変化を楽しむこともできます。同じ料理も箱という限られた空間に詰めると、見える景色ががらりと変わります。蓋を開ける瞬間のワクワク感は、食欲を高める効果満点です。
  4. シチュエーションや雰囲気を変える  食べる力が衰えると、外食する機会も自然と減ってしまいます。キッチンカウンターやバルコニーなど、家の中で食べる場所を変えるとリフレッシュできて食欲を刺激します。  暖色系の色は自律神経を活性化し、消化作用を促して、食欲が増すと言われています。オレンジや赤など暖色系の色合いのテーブルクロス、ナプキンなどを使って、食卓の雰囲気を変えてみるのもいいでしょう。

 日本の伝統的な食事スタイルに、健康を維持しながら食事を楽しむヒントがありました。 「食べる」を演出しながら、日々の食事を楽しみたいですね。

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 今回のレシピは、「やわらか肉団子の黒酢あん」です。第2回でご紹介した加熱しても硬くならない肉素材「シート肉の肉だね」を使って作ります。  ふわふわの肉団子を頬張ると口いっぱいに芳醇な黒酢の香りが広がります。ぜひ、ご家族みなさまでお試しください。

やわらか肉団子の黒酢あん

【材料 2〜3人分】

材料名 分量
1 豚シート肉の肉だね *作り方は第2回「シート肉の肉だね」参照 180g
2 パプリカ(赤) 1個
3 【黒酢あん】
80cc
砂糖 大さじ4
黒酢 大さじ2
醤油 大さじ1と1/3
葛粉 7g
4 片栗粉 適量
5 揚げ油 適量
6 茹でたチンゲンサイ 適宜(好みで)

【作り方】

  1. 肉団子を作る。鍋に湯を沸かす。静かに沸騰しているところに肉だね大さじ1強をすくって茹でる。浮いてきたら50秒ほど茹で、キッチンペーパーにとり水気を切る。
  2. 1に片栗粉をまぶし丸く成形し、180度の油で揚げる。
  3. パプリカを焼き網に乗せ、強火で全体が黒く焦げるまで焼く。粗熱が取れたら皮をむき、600wの電子レンジで6分加熱し、棒状に切る。
  4. 黒酢あんの材料を鍋に入れ、よく溶かす。弱めの中火にかけ、ヘラで混ぜながらとろみと透明な照りが出るまで加熱する。2と3を入れてあんを絡める。
  5. 器に盛り付け、好みでチンゲンサイを添える。
クリコ 料理研究家・介護食アドバイザー 本名は保森千枝(やすもりちえ) 自身の介護経験から、加熱しても固くならない手作りの肉・魚介素材を考案。柔らかく、見た目に食欲のわく肉・魚介料理のレシピを多数開発。野菜ピュレを活用した野菜料理は、主食からデザートまでレパートリも豊富。 食べる人だけでなく作る人も一緒に楽しめる、そんな家庭の食卓作りをモットーとしている。 【Webサイト】 「やわらかい・飲み込み安い クリコ流ふわふわ希望ごはん」 https://curiko-kaigo-gohan.com/ 【主な著書】 「希望のごはん」(日経 BP社) 「噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん」(講談社)
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