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クリコ流ふわふわ介護ごはん
第8回 体力回復の助っ人は “魔法の粉”

掲載日:2022年6月7日 15時45分

 こんにちは。クリコです。

 はじめての介護食作りで大変だったのは、とにかく時間がかかることでした。食材を細かく刻んでとろみをつけたり、ゼリー状にしたりという作業は、食べやすくするために必須でしたが、毎食のこととなると本当に大変のひと言。
 でも、その負担を軽くしてくれたお助けアイテムがありました。


ゲル化剤ってなに?

 噛んだり飲み込んだりする力が弱った人でも、食べやすく飲み込みやすくする調理の工夫の一つとして、食材をゼリー化する方法があります。

 一般に、ゼリー状に固めるには、ゼラチンや寒天などがよく使われます。
 食品をゼリー状に固める目的で使われるゼラチン、寒天、ペクチンなどの食品添加物の総称を「ゲル化剤」といい、ジャムや菓子ゼリーなどの形成に使われます。

 動物の骨や皮に含まれるコラーゲンが原材料のゼラチンは、加熱後に冷蔵庫で冷却する必要があり、完全に固まるまでに、家庭用冷蔵庫で2~3時間かかります。また、口の中の温度で溶けて液状化したり、表面がツルツルしているため、勢いよく喉に滑り込み、誤嚥や窒息を招く危険があります。
 天草が原材料の寒天は、加熱後に常温で固まり、安定した状態を保ちますが、嚙むとバラバラ
になって口の中でまとまり難いため、これも誤嚥の危険があります。


加熱もしない、ただ混ぜるだけで、ゼリー状に!

 最近では、デキストリン(でんぷんが原材料)、増粘多糖類、グルコマンナン(こんにゃくの主成分)などから成る介護用ゲル化剤が開発され、複数のメーカーから販売されています。

 介護食用ゲル化剤(以下、「ゲル化剤」という。)には、非加熱型と加熱型があります。非加熱型は、食品の温度に関係なく混ぜるだけで、わずか数分でゼリー状に固まり、常温で安定した状態を保ちます。口の中で溶けることもなく、適度な付着性を持つため、誤嚥や窒息のリスクが低いことも大きな特徴です。

 私が愛用しているゲル化剤の使い方は簡単です。
 ミキサーに食材とゲル化剤と水分を入れて撹拌するだけ。硬さは、水分とゲル化剤の分量で調節します。


ゲル化剤との出会い

 半信半疑で購入したゲル化剤をはじめて使った時、大げさじゃなく感動しました。オレンジジュースに粉状のゲル化剤を混ぜて、くるくるかき回して溶かすだけ。

「ほんとに、これだけで固まるの~?」
 そして、3分後…オレンジジュースがぷるぷるのゼリーに!

 食感はゼラチンで作ったゼリーのようなツルんとした感じではなく、少しもったりとしているので、ゆっくりと飲み込むことができます。しかも、美味しい!
 このゲル化剤は無味無臭なので、素材の味を損なうこともありません。これさえあれば、新鮮な果物を使ったゼリーやムースも簡単にできるし、ポン酢をゆるく固めたら食べやすいかもと、料理のアイデアが次々と湧いてきました。

 果物に目がない夫のために、最初に作ったのはイチゴのムースでした。
 イチゴと砂糖とゲル化剤をミキサーにかけて、泡だてた生クリームを混ぜるだけ。たった5分でイチゴのムースが、完成してしまいました。簡単すぎ!! …まさに魔法の粉です。
 もちろん、夫は大喜びで満面の笑みでした。


体力回復にデザート作戦の力技

 当時、夫は口腔底がんの術後に体力の回復を待って、早期の食道がんの内視鏡手術をすることになっていました。でも、少しでもがんが進行したら治療の手段がないと医師から告げられていました。つまり、がんが進行しないうちに手術を受けなければ、命がないという切羽詰まった状況にありました。
 術後に体重が7キロも落ちてしまった夫の体力を回復させるには、食事をしっかり摂ることです。少しでも摂取カロリーを増やすために、毎日デザートを出すことにしました。
 食事を作るだけでも手一杯でデザートを作る余裕などありませんでしたが、ゲル化剤のおかげで、季節のフルーツのムースやゼリー、焼かないプリンなどのデザートをほんの数分で作ることができました。
 夫は順調に体力を回復させ、食道がんの手術を受け、職場に復帰することができました。

 市販の介護食用のゲル化剤の中には、溶けやすくダマになりにくいものの、味が変わってしまうものもあるようです。非加熱型で無味無臭のものをお選びになると良いと思います。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 今回は介護食用のゲル化剤を使った「イチゴのムース」の作り方をご紹介します。他のフルーツでも同様に作ることができますので、ぜひお試しください。
 使用するゲル化剤の商品名は、「ミキサーゲル」(発売元:宮源 https://miyagen.net)です。

イチゴのムース

【材料 小さなグラス2個分】

材料名 分量
1 イチゴ(冷凍でも可) 90g
2 レモン汁 小さじ1
3 介護食用ゲル化剤「ミキサーゲル」 1g
4 生クリーム 60g
5 砂糖 20~30g(好みの甘さに)
6 飾り用ホイップクリーム 適量

【作り方】

  1. イチゴはヘタを取り除き、粗く刻む。
  2. 生クリームは、七分たてに泡立てる。
  3. 1、レモン汁、砂糖をミキサーにかけ、なめらかなイチゴのピュレを作る。
    トッピング用に30gを別皿に取りおく。
  4. 3の残りのピュレに「ミキサーゲル」を混ぜ、約20秒攪拌する。ゲル剤が材料の水分を充分吸収するよう1分以上おき、さらに20秒攪拌する。
  5. 4に2を切るように混ぜ、グラスに流し入れる。トッピング用のイチゴのピュレを入れ、飾り用のホイップクリームを添える。*冷蔵庫で冷やすとより美味しく召し上がれます。

クリコ 料理研究家・介護食アドバイザー 本名は保森千枝(やすもりちえ)
自身の介護経験から、加熱しても固くならない手作りの肉・魚介素材を考案。柔らかく、見た目に食欲のわく肉・魚介料理のレシピを多数開発。野菜ピュレを活用した野菜料理は、主食からデザートまでレパートリも豊富。
食べる人だけでなく作る人も一緒に楽しめる、そんな家庭の食卓作りをモットーとしている。

【Webサイト】
「やわらかい・飲み込み安い クリコ流ふわふわ希望ごはん」
https://curiko-kaigo-gohan.com/

【主な著書】
「希望のごはん」(日経 BP社)
「噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん」(講談社)

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