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村本 高史の「がんを越え、”働く”を見つめる」
第9回 両立支援で大事なこと③~両立支援ガイドブックの策定

掲載日:2022年6月9日 8時45分

 治療をしながら働く人にとって重要なのは、企業の治療と仕事の両立支援の取組みです。 「治療と仕事の両立支援に取組むには、何から始めればよいのでしょうか」。他企業から時々受ける質問です。

 結論から言うと、何から始めてもよいと私は思います。大事なことは、その企業の持ち味や強みを活かすことです。トップの影響力が絶大であれば、基本方針のトップ宣言から始めるのもよいでしょう。

 今回は、両立支援の最初の取組みにもなり得る「治療と仕事の両立支援ガイドブック」を取り上げます。

ガイドブックづくりの一例から

 サッポロビールでは、2017年に「がんなどの治療と仕事の両立支援ガイドブック」をつくりました。きっかけは、元々風通しのよい会社だと思っていたところ、健保組合のデータから予想以上にがんの検査や治療者が多いことがわかり、人事として本当に把握や対応ができているのかと問題意識を持ったことでした。この点から、支援の必要が生じた社員や上司向けに、両立に関連する制度内容等をまとめたガイドブックをつくることにしました。

 

 策定は、人事部門の産業保健師と私が一緒に進めました。当初の叩き台は、会社を休むことを前提に休暇や働き方の制度説明が中心になっていたのですが、当事者の視点から、ガイドブックの冒頭は気遣いから入るべきこと、働きながら治療を行う場合と会社を休む場合の併記が必要であること等を盛り込みました。他企業等からもアドバイスを頂いて完成に至り、イントラネットで誰でも見られるようにしました。

 両立支援の取組みの第一歩としてガイドブックをつくったことは、社員にとって安心して治療と仕事の両立ができる礎になると共に、企業側にとっても支援のリソースをひと通り再確認できる機会になり、大きな意味があったと受け止めています。

社会の取組みが進む中で

 その後、「治療と仕事の両立支援ガイドブック」をつくる企業が少しずつ増える中、がんとの共生社会を目指す民間プロジェクト「がんアライ部」では、昨年、各企業が自社のガイドブックを持ち寄り、社会のモデルとなる「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」をつくるワークショップを進めました。

 

 完成した「両立支援ハンドブック」は、「自社の仕事とがん治療の両立に関する制度や考え方を社員に周知するツールとして」、「がんに関する研修やセミナーの題材として」、あるいは「人事担当者や上司が、がんに罹患した社員とコミュニケーションを取る際の指針として」等の活用方法も示され、ダウンロードして自社に合った形にアレンジできるようになっています。

 サッポロビールでは、この「がんアライ部」のモデル「両立支援ガイドブック」も参考に、策定から5年経過した自社の「両立支援ガイドブック」を今年改定しました。

 改定作業には、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」のメンバーも参加し、当事者の視点を強く打ち出しました。また、本人編に加え、上司編・同僚編も策定し、いずれも当事者への寄り添いを大切にしています。

 両立支援ガイドブックがあることは、病気と仕事の両立を目指す社員にとって心強いものになるはずです。その際に大切なのは、対話をしながら当事者の視点を取り入れることだと私は思います。一人でも多くの人が安心していきいきと働くために。一社でも多くの企業が社員の多様性を活かし、さらに活力を増していけるように。両立支援の手始めに「治療と仕事の両立支援ガイドブック」をつくるのも、一つの大きな選択肢ではないでしょうか。

 ※がんアライ部の両立支援ハンドブック  活動レポート内のリンクから「がん治療と就労の両立支援ハンドブック」がご覧頂けます。  https://www.gan-ally-bu.com/report/2830

 ※サッポロビールの両立支援ガイドブック  ニュースリリース内のリンクから、「がんなどの治療と仕事の両立支援ガイドブック」の本人編・上司編・同僚編がご覧頂けます。  https://www.sapporobeer.jp/news_release/0000014618/

村本高史(むらもと・たかし) サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 1964年東京都生まれ。1987年サッポロビール入社。2009年に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。11年、人事総務部長在任時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声法を習得。14年秋より専門職として社内コミュニケーション強化に取組む一方、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立上げ等、治療と仕事の両立支援策を推進。現在はNPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事や厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定検討会」構成員も務めている。

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