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村本 高史の「がんを越え、”働く”を見つめる」
第12回 日々のとらえ方~時間

掲載日:2022年12月8日 12時46分

 今年も残り少なくなってきました。何とか元気に過ごせた一年だったとほっとしている人もいる中、苦悩と共に過ごしたり親しい人を見送ったり、痛切な一年だったという人もいるかもしれません。

 そんな中、「今年も早かったなあ」と感じている人は少なくないはずです。年の瀬に当たり、今回は「時間」というものに関して考えてみましょう。


短くもあり長くもあり

 時間は誰に対しても平等です。物理的には一日は一日であり、一年は一年に変わりありません。

 けれども、同じ時間なのに時として短く感じたり、長く感じたりすることがあります。

 働いていく上で、時間を短く感じることはよくあることでしょう。忙しい毎日の中、仕事に追われ、あっという間に一日が終わっている。私たちの毎日はそんな繰り返しだったりもします。

 一方で、私自身、がんの再発手術で入院していた時、一日は本当に長く感じられたものです。とりわけ普段なら楽しいはずの週末は、検査や先生たちの巡回もなく、静かなICUで時が過ぎ去るのをひたすらに待ち望んだものでした。

 がんや治療に限らず、人生や職業生活においても、いわゆる雌伏の時は時間が長く感じられるような気がします。そのゆっくりとした時の中で思い巡らせることこそ、成長や気づきにつながる大切なものだと後々わかったりもするのですが。


時間の視点をどう持つか

 時間をどう考えるかという点では、短期のみならず中長期という考え方もあります。

 私たちが働く企業や職場には、数年単位、年度単位、月次や週次等々、様々な時間軸の計画や目標があります。個人のキャリアプランやライフプランにおいても、中長期でどう考えるかは重要です。

 そして中長期を考える際には、未来を起点に逆算するか、現在を起点に未来を考えるか、大別すれば2つの捉え方があるでしょう。

 がん等の重篤な疾病では、「あとどれだけ生きられるか」の「余命」が時として大きな焦点になります。患者や家族にとっては、「余命」は重い言葉としてのしかかってきます。平均を表しているに過ぎないのに、あるいは前提条件があってのことなのに、必要以上に言葉が独り歩きしたりもします。

 これに対して、緩和ケア医で自らもGISTを罹患した大橋洋平先生は、転移を知った日を一日目と数える「足し算命」という考え方を提唱しています。「余命は減っていくけど、足し算命は増える一方。増える方が、嬉しいやないか。そう考えることにしたんです。生きていくために」(※)。

 翻って、働くことを見つめた場合、企業活動や個人も、まずは将来の目標を定めた上で実現に取組むのがきっと王道なのでしょう。けれども、現在を起点に目の前の小さなことを積み重ねていった結果、最初は見えなかった、とてつもない未来をつくり出すこともあるのではないか。そしてそんな取組みを組込むことも必要なのではないか。私たちの日常も「逆算」や「引き算」ばかりではなく、「足し算」を取り入れていくことも大きな意味があるのではないか。

 再発手術で声帯を失い、11年が経過した私も今、そのように確信しています。そして、「足し算」の力を信じ、一日一日を大切に重ねてきたがんサバイバーだからこそできることがきっとあるとも思っています。

 これからも一歩ずつ進んでいく中での偶然の出会いを大切に日々を過ごしていきたいものです。皆さまにとっても、2023年がよい年でありますように。

大橋洋平「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)より

村本高史(むらもと・たかし) サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター 1964年東京都生まれ。1987年サッポロビール入社。2009年に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。11年、人事総務部長在任時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声法を習得。14年秋より専門職として社内コミュニケーション強化に取組む一方、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立上げ等、治療と仕事の両立支援策を推進。現在はNPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事や厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定検討会」構成員も務めている。

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