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第91回 年のはじめに、帯状疱疹になった話/木口マリの「がんのココロ」

掲載日:2026年2月6日 13時00分

 もう2月ですが、私はまだ年明け気分が抜けません。仕事初めの初々しさとけだるさの中に、まだ片足を突っ込んでいるような。

 その理由は単純。お正月休みを1月後半まで延長していたからです。していたというか、体調不良でそうせざるを得なかったのだけど、仕方のないこととはいえ、「来年はがんばろー」と心の端っこで小さく拳を上げていた(たぶん)のに、ちょっと出ばなをくじかれた気分です。

ものもらいと思いきや、帯状疱疹だった!

意外と知らない、帯状疱疹!


 体調不良の原因は、帯状疱疹です。年末もギリギリの12月30日に「目が何かちょっとヘンだ」となりました。翌日には家族総出で1泊旅行に行く予定だったし、「ものもらいに違いない。早めに対処しよう!」と、薬局に走り、いつもどおり市販の抗菌薬をゲットしました。

 しかし一向に良くなる気配がない。それどころか目の充血もまぶたの腫れも広がり、そのうち顔の右半分が全体的に腫れていきました。目はヒリヒリするし、頬骨や耳まわり、顎まわりのリンパが腫れて痛み、頭や鼻や耳や奥歯もズキンと痛みが走るという。

「骨が痛い」といった感覚で、旅行に持っていったカメラのファインダーを一度も覗くことなく、お酒もほとんど飲めず、家族との談話にも参加せずにしばらく寝ているような状態でした。家に帰り着いたころには、顔半分が試合後のボクサーさながらだったという。

「う〜ん、これはものもらいじゃないかも」
 眼科へ行くと「リンパが腫れるのはウイルスだろう」とのこと。しかし感染力の高いアデノウイルスは陰性。まだ帯状疱疹に特徴的な皮疹が出ていなかったものの「帯状疱疹の可能性が高い。皮疹が出たら救急でもいいからすぐに皮膚科か内科へ」と言われました。早速その夜から症状が現れ、見るたびに広がっていきました。

経験者は意外と多い!

開かない目で、何とか初日の出を見る。


 帯状疱疹と聞いて、正直、意外でした。子供のころ祖母がかかった記憶があり「高齢者の病気」というイメージがありました。「50歳から発症率が高くなる」という話は聞いていたし、SNSでも「ワクチンを打ちました」と書く友人もいたりして「そうか、みんなそういうお年頃か」などとのんきに考えていたけれど、まさか自分がその年になった途端にかかるとは。

 がんの治療で早期に閉経状態になり、骨粗しょう症を発症したうえ、さらに帯状疱疹も……。何だか、やたらと年を取った気分になりました。

 ところが聞くと、帯状疱疹の経験者はかなり多い! 周囲の人のうち半数くらいは「私もかかったことがある」と言い、しかも罹患年齢は子供から大人までさまざま。調べると「80歳までに3人に1人は帯状疱疹を経験すると推定される」(※)というから、相当なモノです。(※参考:「帯状疱疹ワクチンファクトシート第2版」国立感染症研究所2024年改訂 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001328135.pdf

 ちなみに帯状疱疹とは、体内に潜んでいる水ぼうそうのウイルスが再活性して起こるもの。加齢、疲労、ストレス、がんなどで免疫力が落ちていると表舞台に返り咲くという。

「でも、何で顔なの?」と、思いもしました。全身どこにでもできるそうだけど、目、鼻、耳、口、脳と、重要器官が密集しているところにわざわざやってくるなんて。おまけに目立つ。

 しかし胴まわりや太ももにできた人の話では「痛くて服が着られない」という難点があったそう。しかも下肢にリンパ浮腫がある私としては、もし太ももにできていたら入院になっていたかも。そう思うと、まだ顔で良かった……のか?

大型連休中の病院さがし

何とか初詣も行く。おみくじの病気欄には「時間がかかる」と書いてあった気がする。


 症状が悪化したとき、世の中は大型連休真っ盛り。ほとんどの病院は、当然お休み。がん治療のときもそんなことがあったけど、なぜわざわざ休みのときに病気になるのだろう。

 それでも「症状が出たらすぐに行くように」と言われたら、行かないのは逆に怖い。そんなわけで病院探しをしました。

 調べると、私の住む地域は、案外、そのへんはシステマチックになっているらしい。その日にどの病院でどの診療科の医師がいるかなど、地域の病院情報を集約している医療センター的なものがあり、症状に合った病院に繋げてくれるという。

 そのおかげで病院に片っ端から電話をすることなく、すんなりと大学病院の皮膚科を受診。おまけに私の症状も病院に共有されていました。

 自分だけの判断なら「とりあえずつらさを取ってほしい。診てもらえるなら何科でもいい」となっていただろうに。適切な専門医に辿り着けたのは心強かったし、病院側にもいいシステムだ!と、自分の住む自治体をちょっと見直しました(笑)。

「バッチリ帯状疱疹出ていますね〜」と、検査結果を見せてくれる皮膚科医。休み明けには近くの皮膚科と、眼科にも行くように、とのこと。

 うーむ、正直、何カ所も行くのは面倒くさい。でも「失明することもあるので」と言われれば、行かずにはいられない。どうやら「眼部帯状疱疹」は特に注意が必要で、視力低下や失明、顔面神経麻痺、難聴などの後遺症が残ることもあるそう。そんなわけで、私の年始は連日の病院巡りで過ぎていきました。

 頭痛やだるさもひどく、何よりストレスや疲労が原因ならば、あとは休むしかない。 「もう、冬休みを延長しよう。その間、絶対に仕事はしないぞ」と決め込んでみたら、いつも以上に心が穏やかになったという。これまで知らぬ間にストレスを溜めていたのかもしれない。やっぱりお休みって大事。

結論としては「いい年初め」!?

メールで送ろう、と思っていたのにほとんど送れなかった年賀状。明けましておめでとうございます!


 それにしても、帯状疱疹はこんなにメジャーなのに、具体的にどんな病気なのか、どう対処すればいいのかなど、何も知りませんでした。「目の病気」でネット検索しても全く出てこず、だからこそ帯状疱疹など想像もしていませんでした。

 今はほとんどの人が「まずは検索」でどんな病気なのかを学んだり推測したりするけれど、それは自分の見つけられる範囲の情報と、持っている知識の延長線上でしかないのだと思いました。言うなれば、複雑な料理の端っこだけかじって「分かった」気になるようなもの。

 医師は、やはりプロなのだなぁ。知識と経験と観察力を総動員して結論を導くエキスパートなのだと改めて実感しました。そして専門医に診てもらうことの意味は大きい!

 そしてもう一つ、「粘膜にできると治るのに時間がかかる」ということで、未だに外出時もアイメイクなしの目元すっぴん状態なのだけど、「それも別にヘンじゃない」という結論に達しました。というか、誰も私の顔など見ていないのかもしれない。

「こうしなきゃ」と思い込んでいること(この場合はメイクとか)の多くは、実はしなくても世界は何も変わらないのだと、帯状疱疹の顔で知りました。そう思うと、さまざまな学びを得られた「いい年初め」とも言えなくもない。

 ところで、病院でマイナンバーカードを提示したとき「さすがにこんなに腫れていたら顔認証はできないだろう」と思いきや、どこでやっても一発OK。逆に腫れが引いた今の方が通りにくいという。実は、私の顔のデフォルトはそっちなのか……?

木口マリ
「がんフォト*がんストーリー」代表 執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。
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