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「第35回日本サイコオンコロジー学会総会」に参加して

掲載日:2022年12月22日 13時00分

2022年10月14日(金)~10月15日(土)、東京の船堀タワー(江戸川区)で開催された「 35回日本サイコオンコロジー学会総会」に参加しました。

コロナ以降3年ぶりの現地開催。3年前、2019年学会総会は台風19号接近に伴い会期2日目が開催中止となった経緯がありました。その時の会場がまさに船堀タワーだったため、じつに3年の時を経て再開の扉が開いたような活気ある会場となりました。


患者・患者家族・支援者も、学会に参加できる!


 「学会」というと、学者や先生方を中心に各学問分野の研究の進展・共有などを目的に開催される場所、というイメージがあるかもしれません。しかしじつはここ数年「研究への患者・市民参画」という考え方が進み、多くの学会で、患者さんやそのご家族(パートナー)、そして患者支援活動に携わる方々へ広く門戸が開かれています。

 患者・市民参画は「Patient and Public Involvement」の頭文字をとって「PPI」と表現することが多いです。学会や組織によっては「PAL (Patient Advocate Leadership)」「患者アドボケート」等と表記することもあります。がん患者が研究や普及に関わることで、未来に向けた研究がオープンかつ加速するというメリットが知られるPPI。

 オンラインが普及した昨今、場所と時間を超えた市民参画の場も増えてきています。各学会シーズンは春と秋、各学会のWebサイトには、1年~半年前に日程や募集要項がアップされます。


がん医療における「心」を専門とする「サイコオンコロジー」


 サイコオンコロジー(Psycho-Oncology)は、「心」の研究をおこなう精神医学・心理学(サイコロジー=Psychology)と「がん」の研究をする腫瘍学(オンコロジー=Oncology)を組み合わせた造語で、「精神腫瘍学」と訳され、1980年代に確立した新しい学問です。(※1)。

 がん経験者が抱える不安・苦悩、そして「第二の患者」と呼ばれる家族(ケアギバー)の悩み・悲嘆は多種多様で、ひとつとして同じペイシェントジャーニーは無いと言われています。年間100万人近く診断されるがん患者(※2)に対して、患者を支える側の登録精神腫瘍医は129名(※3)。年々認知度を上げ、登録医も増えていますが、まだまだ熱望され期待値が留まるところを知らない「がん患者の心のサポートのプロ集団」、それがサイコオンコロジストです。


心と体と暮らしはバラバラにできないから。


 今年の学会プログラムで印象的だったのは、支援現場で実際にある具体的なケース発表によって広く支援土台の底上げが進むであろう演題や、がん経験者・ケアギバーが登壇し聴講者を通して社会へ問いかける演題が目立って増えていたことです。

 私たちがん経験者の不安・悩みはその時々で変化を続けます。ペイシェントジャーニーは地下ダンジョンのように入り組み、ゴールがないことも少なくありません。心と体と暮らしがバラバラにできるものではない以上、心のサポートと同時に、情報的なサポートや手段的なサポートという複数の柱が必要不可欠。

 がん治療のかたわら心や暮らしが置きざりにならないような切れ目のない支援には、心のサポートのプロの存在と合わせて、「多職種間連携」、「ピアサポート」、「サバイバー・シップ」、「制度改革」、「風土作り」等のキーワードのもと、日本各地でフォーマル・インフォーマルな多くの対策が施行されており、学会はそうした情報をつかみ、支援の現場での活用を模索する、パワーあふれる場所となっています。



体験談_私が精神腫瘍科の扉をノックした時


 がんを告知され治療に向けて嵐の中をひたすら前進している時、ふと、立ち上がれなくなった瞬間が、私にはありました。そんな時にノックしたのが「精神腫瘍科」の扉でしたが、当時の私にとって「心の専門家」にアクセスすることはとてもハードルが高かった記憶があります。

 私が通院する病院にはたまたま精神腫瘍科が標榜されていましたが、もし精神腫瘍科がなかったら?どこに行けばよかったのでしょうか?先生にそんな質問をしたことがあります。先生の答えは「精神腫瘍科医だけが心の専門家ではない。外来の看護師さん、化学療法室の看護師さん、受付の事務員さん、がん相談支援センター、ピアサポーター、いろんな人が病院にはいて、それぞれがプロ。まず誰かとつながることで、プロがその先にたどり着くべき支援へつないでくれるはず。連携とはそうあるべき。」という回答でした。

 そういえば、私も「大丈夫?」と最初に声をかけてくれたのは受付事務員さんでした。彼女が私の変化を見逃さず、心のケアのプロの元へつないでくれてたどり着けた、まさに「連携」の結果だったのでした。(日本対がん協会 大田原りな)



★来年 第35回日本サイコオンコロジー学会総会
「改めて深く考える心のサポート~がん患者・ご家族と共にあゆむ~」
2023年10月6日(金)~7日(土)
https://plaza.umin.ac.jp/jpos36/ 

★過去のがんサバイバー・クラブ内「サイコオンコロジー」に関する記事。
2018年11月27日「がん患者とその家族のこころに寄り添い、人生を伴走する医療 ~精神腫瘍科・サイコオンコロジー~」
https://www.gsclub.jp/tips/8244 


<参照>
(※1)一般社団法人日本サイコオンコロジー学会WEBサイト「サイコオンコロジーとは」
https://jpos-society.org/psycho-oncology/ 

(※2)がん情報サービス「最新統計2019年」
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html 

(※3)登録医リスト(2022年11月7日現在)
https://jpos-society.org/psycho-oncologist/doctor/ 

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