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第75回  寝込みの年末年始〜抗原検査が○○に見える〜/木口マリの「がんのココロ」

掲載日:2024年2月1日 8時30分

 それは、あるとき不意にやってくる。

 さっきまで何ごともなくワハハと笑っていたはずなのに。「じゃあ、明日ね」と、翌日の楽しい予定に胸を弾ませていたはずなのに。

 窓からスウッと入り込む冬の凍てつく冷気のように、それは、人のからだのスキマを見つけてフッと息を吹きかける。

 背筋にゾクリと感じたときには、もうおそい。

 ジワジワと、しかし確実にからだのなかを広がっていく不快さを、これから起こるであろう「寝込み」や「怒涛のスケジュール変更」をうつろに予感しながら味わうことになる。




冬は街でだれもが妖精になれる!(このしばらくのち、本格的に寝込むなどとはつゆ知らず)

 つまりは、風邪をひきました。

 しかも12月下旬から新年にかけて。

 ウッ!(これはひどくなる!)と思ったときは、間違いなく悪い風邪。なんとか退治しようとだるまのごとく厚着をし、温かいお茶をガンガン飲んでがんばるも、またたく間に悪化してしまいました。

 測るたびに上がる体温、毛布をかぶっても震えるからだ。

 「これは、初・新型コロナか……!?」



●新型コロナの抗原検査は「あの検査」と似ている……!?


 まずは、自宅で新型コロナの抗原検査をしてみることに。不謹慎ながら、これがちょっとワクワクしました。

 その理由は、「これって、あの検査と似ているのかも……」と思ったから。 「あの検査」とは、妊娠検査です。女性が妊娠の可能性を考えたとき、薬局で購入して自宅で検査してみるアレです。

 私はがん治療で子宮を取ってしまって、残念ながら子供を持つことはできません。もし妊娠できたとしたら、検査薬で「陽性」の表示が出る瞬間はどんな心地なのだろうと、たまに想像していました。

 そして今、目の前にあるのは抗原検査キット。 「ん? もしかして結果の見え方だけでいえば、どちらも似たようなカンジなのではなかろうか」! 目的は180度違えど、それってちょっと楽しいかも。

 抗原検査の結果が出るまで10分ほどの待ち時間は、「妊娠しているかな、どうなのかな(ワクワク)」などと、妄想をしてみるという。

 すこぶる体調は悪いし、本当に新型コロナだったらいろいろと困ったことになるのだけど、すべてそっちのけで「陽性のラインが出るかなぁ」と、ひそかに期待していました。

 そんな遊び方はキグチらしいなと思いつつ、もしかしたら熱のせいで思考がより明後日の方向に行きやすかったのかも、とも思います。

 そして出てきた結果は、「陰性」。ちょっとガッカリ。もちろん、陰性でよかったのですけど。

●地元病院の「即席発熱外来」を体験!


 新型コロナではなかったものの、体調は悪くなるばかり。 「ではインフルエンザか。私も今年のトレンドに乗ったのだな」と、またものんきなことを考えていました。

 ところがどっこい、病院に行くとインフルエンザでもないことが判明。「ただの風邪」(おそらく扁桃炎)と診断が下りました。

 あくまでイマドキなものではなくマイナー路線を行くのか。「ありゃ?」と少々ずっこけたような心持ちでした(後に聞いた話では、扁桃炎も私の周りに数人いたようです)。

 ところでみなさんは、「発熱外来」に行ったことがありますか? 私はこのとき初めて行きました。

 電話で問い合わせると1軒目の新しいクリニックは「発熱外来は予約でいっぱいだ」と断られ、2軒目はすんなり受け入れてくれました。

 そこは町に古くから根付いているような、そこそこの入院施設のある小さな病院。入口のインターホンで名前を伝えると、「中には入らず、左へ進んだところにあるシャッターの前でお待ちください」とのこと。指示通りに待っていると、ゴウンゴウンという音と共に電動シャッターが巻き上がっていきました。

 徐々に見えてきたのは、丸イスと小さな簡易デスクとハロゲンヒーター。照明は薄暗く、周りにはダンボールに入った輸液やら点滴棒やらが詰め込まれていて、どう見ても倉庫でした。ガレージのようなつくりで、建物の中というより外に近い。

「これがウワサに聞く、『町のお医者さんの即席発熱外来』か!」。いつかニュースで見た風景のなかに自分がいることが、何となく興味深くありました。

 しかし寒い。体調が悪いとさらに寒い。
 しばらく待たされるのかと思いきや、直ちに医師がやってきて、予想外に丁寧に診察してくれました。

 1軒目のクリニックに断られたことがラッキーにすら思えてきて、「外観からして地元感満載だし、若者の選択肢になかなか入りにくそうだったのが、逆に良かったのかもしれない」などと、だいぶ失礼なことを考えるという。

●がんばれ、ワタシのカラダ!

クリスマスディナーは「たまご雑炊」。トホホ……。


 そこで「風邪」と診断されたのだけど、そうなると特効薬などないわけで、解熱剤などの対処療法のほかは「よく寝る」くらいしか方法はありません。


「それって、体が病気をやっつける力に何とかがんばってもらうしかないってことだよな」と思うと、うっすらと不安な気持ちになりました。

 治療薬があることは「体にがんばってもらうほかにも、できることがある」という安心感につながるのだと思います。

 でも、本来は体に備わった治癒力がもっとも基本的な「治す方法」のはず。これまでの人生で、たくさんの医療を受けて病気やケガを治してきたためか、「医療の力で治す」という感覚が大きくなりすぎていたのを感じました。もちろん、これからも医療にお世話になっていきたいですが。




今年もよろしくお願いします!(新年のごあいさつも1月に入ってから出しました!)


 ところでこの風邪騒動のせいで、せっかく登壇者として呼んでもらっていたイベントを、当日になってドタキャンせざるを得なくなってしまいました。対談でのトークのはずだったのに、司会進行の方が一人で語るハメになったという……。

 その後、心配してくれていたイベントスタッフの皆さま宛てに「寝正月ならぬ、寝クリスマスになりそうです」などというおちゃらけたメッセージを送信してみたら、まんまとその通りになったうえ、1月になっても不調が続いてしまいました。

 私の周囲でこの冬に体調を崩している人は、けっこう長引いていることが多いように感じます。みなさんも、体調には気をつけましょう!(キグチに言われたくないと思うけど!)笑。

 

木口マリ
「がんフォト*がんストーリー」代表 執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。
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