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第90回 体力に自信なし……でもキャンプに行きたい!/木口マリの「がんのココロ」

掲載日:2025年12月25日 14時20分

 「キャンプに行きたい!」

 思い立ったが吉日というけれど、そのころは晩秋で、結構な寒さになっている時期。体力はないし、風邪を引くかもしれないし、間近には自分たちが主催するイベントも控えているし、クマが出るかもしれないし……。

 でも今を逃したら、次はいつになることやら。「ダメそうだったら(主に体力的に)、そのへんのホテルにでも泊まればいいか」くらいの軽いノリで行くことにしました。

キャンプに行こう!


体力なくとも意外とできる

この秘密基地感がたまらない


 前述したように、私は、体力に自信がありません。がん治療が終わってからそこそこ回復したものの、治療前程度に戻るには遠く、さらに数年前から術後合併症で下肢のリンパ浮腫やらを発症して疲れやすくなっているうえ寄る年波も相まって、「いつも、なんかダメ」なのです。

 そんな状態でも、やりたいことはやりたい。キャンプって秘密基地のようで、心をくすぐるワクワク感があります。子供のころから憧れはあったものの全く手を出したことがなく、昨今のアウトドアブームに乗っかって「いつか使おう」と道具ばかりが増えていきました。

 そんなわけで、体力ナシ+ちゃんとしたキャンプは2回目という超初心者なのですが、アウトドアというのは、意外とそのときの自分に合わせて楽しめる!というのが私の結論です。

気張らない「ユルめキャンプ」が吉

文明の利器でゆるーくキャンプ


 今回訪れたのは、神奈川県の丹沢にある川沿いのキャンプ場です。市街地から車で30分ほど行けば、そこはすでに奥深い山。確かにここならクマも出るかもしれない(ホームセンターでクマよけの鈴をゲット)。

 今回、私がキャンプ場選びで条件としたのは、
・初心者向け(しっかりと整備・管理されているのでいろいろ安心&分からないことを質問できる)
・車でキャンプサイトまで入れる(道具の運搬に体力を使いたくない)
・トイレや水場がキレイ(絶対条件!)
・静かな環境(せっかくなら自然を満喫したい)
・電源がある(念の為)

 ブームのおかげか新しいキャンプ場はどんどん増えていて、これらの条件に見合うところを見つけるのは東京近郊でも意外と簡単。テントも、設営が簡単にできる工夫がされているものが多く、思うほど大変ではありません。2人以上の人員がいればさらにラク。

 それでもやはり途中で疲れてしまうのは想定内。中途半端なところで小休止してしばし横になるなど、休み休み進めていきました。

湖のほとりにならぶトレーラーハウス


 それにしても晩秋のうえ標高が高めで気温が低く、さらに山の中だと日が暮れるのが早くてなかなかに寒い。「多分使わないけど」と持っていった電気毛布が抜群に役に立ちました。テントでくつろぐときも、夜寝るときも快適で、そのぬくぬく感は温泉級の心地よさ(ビバ!文明の利器)。

 おまけに炭火で野菜や肉を焼こうとしたもののなぜか失敗。これまた「とりあえず」で持参したフライパンとガスコンロで美味しくいただくことができたという(余談ですが焚き火での焼き芋も失敗)。

 そこで思ったのが、「キャンプだから」と気張らずに「休むときは休む」「家電も使えるものは使う」でもいい、ということです。そうすることで体に負担が少なくなり、楽しさが増すのならそれもアリだと思いました。

 ユルめの構えでいることで「できない」が「できる」になるかもしれない。これは、キャンプに限らずいえることかもしれません。

 ところで「キャンプ with 家電」の味をしめた私は、次回のキャンプでホットプレートを持っていこうかと画策中。たこ焼きを焼いたり、鍋料理をしたり、とっても楽しそう。みんなで集まってキャンプたこ焼きパーティもいいかも、などと妄想中です。

もっと気軽に!キャンプに行こう


 最近では、手軽なキャンプ場も多くなりました。テントや寝袋など、キャンプに必要なギア一式をレンタルできるところや、設営済みのテントを借りられるキャンプ場もちょこちょこ見かけます。

 なかでも最近の流行りの「グランピング」は豪華さと快適さを追求したもので、お気軽キャンプの極み。テントなのに冷暖房完備だったり、温泉やハンモックが付いていたり。トレーラーハウスやコテージなどもあり、ホテル感覚でアウトドアを楽しめるのが利点です。

 3年ほど前、膵臓がんで治療中だった義兄(姉の夫)たちとともにトレーラーハウスのグランピングに行きました。義兄の体調がイマイチでキャンセルしようかと迷っていたものの、在宅医の「行ってきたらいいですよ!」の一声で決行となり、結果的にとても楽しんでくれたようでした。

 姉の誕生日のころだったため、義兄と私で密かにケーキを用意しました。夕食後まで姉に見つからないように、2人で目配せしながら必死に立ち回ったことを思い出すと「プププ」と笑ってしまいます。

 義兄はその1カ月後に亡くなってしまったのだけど、「行きたい」と思ったときに一緒に行けたことは本当によかったし、楽しい思い出として今も私たち家族の心に残っています。

楽しい思い出は、何度も心に甦ります


 そもそも私がキャンプっぽいことを始めたのは、キャンプ用のイスと小さなガスコンロを持って出かけ、「外でカップ麺を食べる」からでした。

 トートバッグに収まる程度の装備を持って河原に下り、良さそうな場所を見つけてイスとミニテーブルを組み立て、お湯を沸かし、カップ麺に注ぎ入れる。3分待つ間は、イスに身を深く沈めて遠くの木々や空を眺めたり、川の音に耳を澄ませたり。ただそれだけでも、特別な時間に感じたものです。

 もっとも、キャンプイスだけあれば、どこでもアウトドア気分を満喫できます。広げるだけで、いつもの公園やベランダが一気に非日常空間になるのです。

 自分に合わせたアウトドア。ぜひみなさんも、やってみてください。

木口マリ
「がんフォト*がんストーリー」代表 執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。
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