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いま耳を傾けたい サバイバー478人の声
~リレー・フォー・ライフ33会場でアンケートを実施~

掲載日:2018年1月10日 15時19分

日本対がん協会では、昨年行われたリレー・フォー・ライフ※の全国33会場で、参加されたサバイバーの方たちにアンケートをお願いしました。「患者会(患者支援団体)活動や現在の生活で困っていることの声アンケート」という名称通り、サバイバーの方や患者会活動の現状や悩みを浮かび上がらせ、日本対がん協会の活動にも生かしていきたいと考えています。478人の方にご回答いただきました。おかげさまで、貴重なご意見、お気持ちを寄せていただけました。ご協力どうもありがとうございました。
   回答者は男性21%、女性79%。年齢では、40代100人、50代134人、60代127人と、熟年世代が多かった。(グラフ1)  がん種は、約半数が乳がんで、胃がん、子宮がん、大腸がんと続いた(複数回答、グラフ2)。罹患してからの期間では、1年未満という人が16人、1年~2年が36人。2年~3年が23人。5年未満の合計は139人で、10年未満に広げると274人に上った。(グラフ3)  一方、治療の状況では、治療中の人が151人で、経過観察中の人が190人。経過観察が終わった人も81人いた。(グラフ4)

患者会に継続して参加している人が7割

 では、こうしたサバイバーの方たちは、患者会活動とどう関わっているのだろう。設問6「同じような体験をした方との集い(患者会等)に参加されましたか?」(複数回答可)では、「継続的に参加している」と回答した人が317人と圧倒的に多く、全体の3分の2を占めた。次に多かったのは「会を運営している」と答えた人で、73人。これらの結果から、回答者がリレー・フォー・ライフの参加者という事情を考慮しても、患者会の意義が改めてクローズアップされたと言えるだろう。参加した人の治療状況はさまざまであった。  逆に「想いはあったが参加しなかった」「参加しない」と答えた人も35人いた。ハードルの高さを感じる人もいるようだ。(グラフ5) なお、がんサバイバー・クラブのウェブサイトも、こうした声に応えられるように患者会情報のページで、活動レポートなどを載せている。がん種や地域で検索できるような仕組みもあるが、今後、一層力を入れていきたい。

最も困っていることは「体力の低下」

 設問7「治療や生活に対して現在、困っていると感じること」(複数回答可)では、「体力の低下」を挙げた人が120人で最も多かった。治療の影響、病勢の進行などの要因が考えられる。以下、「気持ちのコントロール」(119人)、「後遺症」(105人)、「信頼できる情報」(90人)、「お金」(93人)、「これからの生活」(82人)、「仕事」(76人)などと続いた。(グラフ6) 2人に1人ががんにかかり、発症しても長生きする人が増えた時代。昔とは違う新たな悩みも生じている。

全国どこでも同じ治療を

 設問8は、がんに関して「こうなって欲しいと思うこと」の自由記述。多くの方が、さまざまな角度から本音を書いてくださった。  まずは、医療の核心についての率直な要望から。 「主治医とのコミュニケーションがとれるようになりたい」(50代女性、罹患歴1年) 「セカンドオピニオンについて早い段階での説明がほしい」(60代男性、7年) 「『余命宣告』はやめてほしい」(40代女性、13年) 「もっとたくさんの治療法を確立してほしい。病院内でのQOLの向上を」(20代女性、10年)  いずれも、大なり小なり多くのサバイバーが実感している事柄ではないだろうか。地域格差を訴える声もある。 「地域性がなく、全国どこでも同じ治療を低価格でしてほしい」(60代女性、20年) 「再発時の治療のイメージが予測できない。遠方の病院に通っているが、体調次第で通えなくなったら転院するしかないのか不安」(50代女性、6年)  副作用も切実なテーマだ。罹患して3年の50代女性、5年の80代以上の女性はともに、「抗がん剤の後遺症でのしびれ」を挙げている。ほかにも、 「抗がん剤の後遺症で髪が元通りに生えてこないのでウィッグが手放せません。せめて医療控除の対象になればと思うのですが」(60代女性、9年) 「服用する薬の効能・副作用と、対処方法を教えてほしい」(60代女性、10年)  などと、幅広い。サバイバーには病理検査も負担になる。最近の研究を踏まえて、 「早く血液検査だけですべてのがんがわかるようになってほしい」(30代女性、3年)  と願う声もあった。

正しい情報を身近で手に入れたい

 がんを告知された人にとって、差し迫った課題は正しい情報にアクセスすること。逆に言えば、怪しい情報に惑わされないことでもある。ところが、これが難しい。ネット上にあふれる情報は、簡単には見極められない。発症して2年の40代女性は、 「告知後のフォローが薄いと思います。正しい情報に患者がたどりつけるように、様々なフォローが必要だと思います」  と書いた。罹患して1年未満の50代女性もこんな声を寄せた。 「検査結果が出て告知を受けるまでの間、どこに情報があるかわからず迷子のような状態でした。最初に『病気かもしれない?』となったときに相談・支援ができる場所を広く知らせてください」  いくら正しい情報でも、アクセスしづらくては意味がない。 「身近なところで情報が得られるようにしてほしい」(60代女性、10年) 「まだ地域格差を感じます。正しい情報を平等に自分の地域で受け取れるようになってほしい。あやしい治療にだまされないためにも」(50代女性、15年)  という声に、医療者側もメディアも応えていくことが求められるだろう。  がん治療は日進月歩。それだけに、情報は「正しさ」だけでなく、「新しさ」も重要だ。 「次々と承認される新薬についてどの病院で早期に導入されるかという情報が得られるようになればよい」(50代女性、6年)

上司の理解がないと働きづらい

「治療と生活の両立が本当につらい。治療費に関する制度はいろいろあっても、とにかく高額です」(50代女性、1年未満)  高額医療制度などや保険、健康保険組合の独自制度など、治療費の負担を減らせる仕組みはある。しかし、治療が長くなれば、どうしても生活費を圧迫する。「治療費減免」(60代女性、20年)などとストレートに訴える声も目立った。  乗り切るためにも、仕事を続けたい。しかし、がん患者の離職率は3割に上る、という調査もある。 「会社が受け入れても、直属の上司の理解がないと、結局は働きづらい」  がんになって10年という50代女性は、こんな回答を寄せた。 「上司や産業医から、職場を変わったらと言われて深く傷つきました。仕事と治療が両立しやすい世の中になるように、法整備をお願いします!!」(40代女性、8年)  と国レベルでの解決を促す声もあった。実際、誰もががんになりうる時代なら、がん患者が働きやすい環境を作ることが国や社会の責務だろう。 「会社側もがんばってほしい」(40代女性、5年)という記述は、企業の意識改革も鍵を握ることを示唆している。罹患して6年の50代男性の言葉も象徴的だ。 「がんになっても、仕事が普通にできる社会になってほしい。がんとの共存を目指したい」

心から話せる人と会いたい

「病院が、1人で孤独な治療を受けるのではなく、いろんな人たちに支えられる場になってほしい」(40代女性、4年) 「がんと上手に付き合っていけるような心のサポートを受けられ、共感できる場所がほしい」(50代女性、1年) 「心から話せる人と会いたい」(60代女性、23年)  年代も罹患歴も異なる3人の女性が訴えるのは、本心を心置きなく打ち明けて、思いを共有できる場がもっと身近にほしい、という願いだ。 「1人で悩まないで、自分のがんを前に出し、仲間と共に生きていく姿勢が苦しみを軽減させる。ぜひ手をつなごう!!」(70代女性、24年)という力強いメッセージを書いた人もいた。  患者会の役割のひとつは、こうした期待に応えることだろう。誰もが患者会を探しやすい環境づくりも大切になる。 「患者会の存在をすぐに知ることができる方法と、がんかも?となった時点からサバイバーと話せるような患者会があるといいと思います」(60代女性、3年)

がん=死というイメージがなくなってほしい

 現在、がんサバイバー(一度でもがんになった人)は、全国で700万人に上るとみられている。まだ発症していないだけで、将来的にがんになる人はさらに多い。  それなのに、がんがどんな病気かは十分に知られていない。そのため、社会のがん患者に対する理解もまだまだ乏しい。 「がん患者への差別、就職のしにくさ、さびしさ、理解してもらえない悲しさ。がん患者が住みやすい社会の実現を」(50代女性、3年) 「みんなが『がん』と言うときだけ声をひそめないようになってほしい」(50代女性、11年) 「がん=死! というイメージがなくなってほしい」(60代女性、6年)  サバイバーに優しい社会は、誰もが生きやすい社会。 「がんに限らず、病人・社会的弱者に対する思いやりのある社会を」(40代男性、1年)

がんが人生を変えるきっかけになった

 自由記述では、自身の思いを書いた人も目立った。孤独感やつらい気持ちを吐露する人もいれば、少しでも前向きにとらえて、新たな人生を歩もうとする人たちもいた。  罹患歴15年で患者会を運営している60代の女性は「病になったからこそ、今ここで人生を生き直している、という視点でしょうか」と記している。ほかにも、 「振り返ってみると、がんは人生をリセットするよい機会となりました」(70代男性、46年) 「がんになってよかったと思える。人生を変えるきっかけになった」(50代女性、5年)  などと、「がん=不幸」とは限らないよ、という視点が見られた。キャンサーギフトという言葉もある。 「できなくなることより、これからできることに目を向けて生きていきたい」(60代男性、3年) 「がんと共存しつつ、平均寿命を全うしたい」(70代男性、7年) 「16年目に入り日々の生活に感謝。何年経っても再発の不安はあります……でも、毎日元気に生きてます。これからも頑張るゾォー!!」(50代女性、16年)  がんは、敗北でも終わりでもない。ここから始めることもできる。  主な回答は次の通りです(便宜上、大まかに分野ごとにまとめました)。 【医療】 「インフォームドコンセントが徹底して、患者の意見が重用されるようになってほしい」(60代男性、11年) 「保険適用で遺伝子検査ができるようになってほしい」(60代女性、12年) 「10万人に2~3人の希少がんです。承認されている薬も3種類。どんながん種でも、安心して生きていけるよう、新薬の開発を願います」(50代女性、4年) 「地方にいると情報が少なく治療も困難。どこでも治療を受けられるようにしてほしい」(60代女性、25年) 「髪の毛が抜けない抗がん剤があればいい」(60代女性、7年) 「副作用のない抗がん剤治療が早期実現しますように!!」(60代男性、1年未満) 「副作用の少ない薬の開発」(50代女性、13年) 【予防、検診】 「がん検診の精度向上」(50代男性、6年) 「いきなりの進行がん告知はかなりつらくて孤独。もっと検診を受ける世の中になってほしい」(30代女性、1年未満) 「検診率のアップ。自身も夫も検診で発見された」(70代女性、16年) 【情報】 「正しい情報がほしい。体験者と話す大切さを感じている」(60代女性、27年) 「正しい情報をきちんと伝えられる医療者との関係を築きたい」(70代女性、12年) 「明確な治療の情報を得るには自分で動かないといけないことが多かった。医療機関での診療は時間が限られていて深く聞けないのが実情。相談窓口の充実が必要だ」(30代男性、22年) 「希少がんなので情報が少なく迷っている患者が多い」(50代男性、6年) 「治療法が多様になっているので、見極める情報を確立してほしい」(60代男性、5年) 【お金、仕事、職場】 「医療費が高いのでもう少し安くなってほしい」(60代女性、25年) 「医師と職場の理解、コミュニケーションを」(50代男性、10年) 「職場や回りの人たちに正しく理解してほしい」(30代女性、1年) 「自分ががんであるとふつうに話したいが、職場がそういう雰囲気ではない。もっと力を抜いて話せれば気持ちも楽になると思う」(60代女性、1年) 「仕事をする世代としてオープンにできること、職場に患者がいて普通になること」(40代女性、10年) 「仕事を続けました、会社の理解がありました」(60代女性、18年) 「がんと言っても仕事を失う恐れがなくなるとよいと思う」(50代女性、4年) 「求職中だが、がんであることを公表できない。再就職に理解を示してくれる職場が増えてくれるとうれしい」(50代女性、3年)
【サポート、患者会】 「若い患者と交流できる機会がもっとあったらうれしい」(20代女性、1年) 「24時間電話相談できるようにしてほしい」(50代男性、14年) 「患者同士が気軽に向き合えるサロンの場が広がっていくとよい」(60代男性、3年) 「希望を語り合う場と死を見つめ合う場の共有」(60代男性、9年) 「緩和ケアがもっと受けやすくなるとうれしい。できれば安く……。情報が欲しかった。同じ病気の人と情報交換したかった」(30代女性、10年) 「がんピアサポーターを是非作ってほしい」(50代女性、6年) 「がんになっても助け合える、支え合える人間関係であればいいなと思う」(50代女性、10年) 「誰かを頼りたいという気持ちを前面に出せない方に、気付いてくれる人が増えるとよい」(30代男性、4年) 【社会】 「社会全体ががんへの理解を深め、いろんな意味で患者に優しい社会になってほしい」(50代女性、1年未満) 「地域の中で助け合いができるようにしてほしい」(60代女性、20年) 「社会的に普通に扱ってほしい」(50代女性、3年) 「もっと自由にがんのことを話せる環境になったらいいなあ。特別、ではなく」(40代女性、8年) 【がん教育】 「普通の病気とがんが区別されている気がする。小学校や中学校で、もっといろいろ教えてほしいと思う」(30代女性、4年) 【思い】 「孤独感が強く、後ろめたさも感じた」(80代以上男性、4年) 「治るという強い気持ちを持ち続けること」(70代男性、7年) 「情報に巻き込まれすぎない。そのためには自分で自分のこと(病気)をよく知ろうとすることが大事だと実感している」(50代女性、11年) 「普通の毎日が続くこと」(50代女性、7年) 「再発してからの病との向き合い方。脳梗塞とも付き合っていく辛さもある。主婦としての義務や、義父との関係などもあります」(50代女性、6年) 「あまり望まないようにしています。1日1日を楽しく過ごすことにしています」(60代女性、6年) 「生かされていることに感謝して生きていこうと思います」(60代女性、7年) 「ありのままに、笑いながらがんと同居していきたい」(60代女性、3年) ※今回の設問は以下の通りです。 Q1.年齢 10代以下 10代 20代 30代 40代 50代 60代 70代 80代以上 Q2.性別 男性 女性 Q3.がん種 (   ) Q4.罹患時期 約( )年前 Q5.現在治療は受けていますか?  (1)治療はしない (2)治療前 (3)治療中 (4)経過観察  (5)経過観察終了 (6)その他(   ) Q6.同じような体験をした方との集い(患者会等)に参加されましたか?(複数回答可) (1) 継続的に参加している (2)1回参加してまた行きたい (2) 参加してみたが想像と違う (4)思いはあったが参加しなかった  (5)会を運営している (6)会を自分で立ち上げようとしている  (7)必要性を感じない (8)参加しない  (9)その他(   ) Q7.治療や生活に対して現在、困っていると感じること(複数回答可) (1) 人間関係 (2)気持ちのコントロール (3)これからの治療 (3) 治療の辛さ (5)これからの生活 (6)仕事 (7)お金  (8)後遺症 (9)食事 (10)体力低下 (11)孤独感  (12)信頼できる情報 (13)生きがいやりがい  (14)その他(   ) Q8.がんと向き合う中でこうなって欲しいと思うことがありましたらご記入下さい(自由記述)
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