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第5回 意外と知らない、現代のがん事情・2―
「ちょっくら緩和ケア」 木口マリの『がんのココロ』

掲載日:2018年5月24日 10時03分

意外と知らない、現代のがん事情・2――「ちょっくら緩和ケア」

 前回の「意外と知らない、現代のがん事情」第2弾。今回は、「緩和ケア」と「がんと生きる」ことについての“意外”をお話します。きっとこれらも、多くの方にとって自分の身に起こるまで知り得なかったことではないかと思います。

「緩和ケア」に出会う

「緩和ケア」……。
 がんになりたての私が、病院の待合室で目にしたこの言葉は、とても重いものでした。そのときに思ったのは、「私はまだそこまでじゃない」ということ。


「意外にもボウズが似合う」と
知ったのも、なかなか楽しい意外。

 なぜなら、当時の私がイメージしていた緩和ケアは「末期がんの患者さんだけが受けるもの」だったからです。

 この先、自分がどうなるのか分からない段階だった私にとって、不安をあおる以外の何者でもないものでした。その名前を唱えれば、自分が治らないがんになってしまうような気さえしました。パンフレットを手に取るだけでも「私はがんです」と再認識するようで、“可能な限り関わりたくないもの”だったのです。

 そんなわけで、私が「緩和ケアの何とやら」を知ったのは、実に、がんの治療が一通り終わったあと。定期的な診察で、主治医に術後後遺症であるリンパ浮腫についての相談をしたときでした。

 「緩和ケアで診てもらうといいですよ。行ってきたら?」と、医師。あんなに避けていた緩和ケアが、まるで世間話でもするような軽いノリで登場。

 意外すぎて、何だかとんだ拍子抜け。「もしかして、思ったより身近なのかも」と、早速、緩和ケア室に行ってみることにしました。

「緩和ケア」は終末期だけのものではない

そこで初めて、緩和ケア認定看護師さん(緩和ケアの専門資格を持った看護師)に出会いました。すでに「緩和ケアって本当は何なんだ!?」という好奇心でいっぱいだった私は、リンパ浮腫はほぼそっちのけ。緩和ケアについて話し込むという。

ちなみに、WHO(世界保健機関)の概要報告書には、以下のように書かれています。


がんや医療は意外なことだらけ!
結構“いい意外”も多い。

「緩和ケアは、生命を脅かす疾病に関連して、肉体的であれ、社会心理的であれ、またスピリチュアルであれ、諸問題に直面している患者やその家族のクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を向上させる」(「WHOファクトシートhttp://www.japan-who.or.jp/act/factsheet/402.pdf」より」

 つまりは、痛みなどを和らげること(緩和)はもちろん、「これからどうしよう」「お金が足りるだろうか」などの“心の不安”を和らげるのも、緩和ケアの領分なのです。しかも、まだがんと診断される前でも相談できます。私のように、後遺症の相談もオッケー。家族や遺族の心のケアも対象です。

 全国に400ある「がん診療連携拠点病院」には必ず緩和ケアの部門が設置されていて、その病院に通院していない患者さんでも相談できます。

……ここまで気軽に行ってもいい場所だったとは! 確かに予想外な内容。

 私がお話しした看護師さんは「緩和ケアは、治療が始まると同時に受けてほしい」と言っていました。そうすることで、不安を解消させつつ治療にあたることができるとのこと。

 私の場合は、主治医や病棟看護師さんがとても頼りになったため、がん治療中の緩和ケアは必要ではなかったと思います。しかし、もしもその医師や看護師さんたちに出会わず、不安を抱えたままだったとしたら……。治療はもっと苦しく感じただろうし、不快な記憶ばかりが色濃く残ってしまっていたかもしれません(今、残っているのは、いい思い出の方が多いのです)。そんなとき、緩和ケアがどんなものかを知っていたら、きっと助けになったのではと思います。

 ところでこの「緩和ケア」、ネーミングが堅すぎだと思いませんか。確かに間違ってはいないのだけど、コピーライターでも雇ってイメージが正しく伝わる名前にしたらいいのになと、個人的には思います。

がんは、根治できなくても「一緒に生きていく」という道もある

 多くの場合、病気は、根治を目標とすると思います。がんも、もちろんそうなのですが、「体内にあるがんをコントロールしながら一緒に生きていく」というのもひとつの方法です。これは、治療後に「がん体験者スピーカー養成講座」(認定NPO法人キャンサーネットジャパン)を受講して知りました。

 以前の私のイメージでは、「ステージ4(最も進行したがん)」は、「お手上げな状態」でした。確かにステージ1〜3に比べると、根治を望むことは、より厳しくなるかもしれません。しかし、だからと言って「完全に治らなければダメ」ではないのでした。薬などを使いつつ、悪さをしないようにがんをコントロールして一緒に生きていくことができます。


アジサイの花が、とても好きです。
小さな花が集まって大輪となっているようで、
そのひとつひとつに命を感じます。

 また、「手術ができない」も、たくさんの人が誤解しているように思います。医師にそう言われると、「もう施しようがないんだ」と受け取ってしまうことが多いような。
 でも、おそらく医師が言いたいのは「手術自体を“行う”ことはできるけれど、しないよりも体の負担が大きいからやらない方がいい」といったところ。転移があってすべてを取りきることが難しいなど、状況によっては手術が効果的な方法ではない、ということのようです。
 患者としては、悪いものはできる限り取り除いてしまいたいところですが、現在では手術以外の治療法もいろいろあるため、何が自分にとってベストなのか、医師とじっくり相談してみるというのもひとつです。

 これも、医師の「手術ができません」という言い回しを変えてもらえれば、患者が受けるショックを軽減できそうに思います。「実は、手術よりもいい方法があるんですよ」とか……? いかがでしょう。

 私には、かなり多くのがんの患者さん、体験者さんの友人・知人がいることを、以前お話ししました。そのなかには、ステージ4と診断された方も多くいます。「本当に治療中?」と思うくらい、一緒に仕事をしたり、一緒にお酒を飲んだり、冗談を言って笑い合ったりしています。

 もしかしたら笑顔の下には不安をずっと心の中に抱えているのかもしれないし、押しつぶされそうになるときもあるのかもしれません。
 それでも、がんと生きながらも前に進み続けるみなさんの姿は、とても力強いものがあります。特に、がんになったからこそ「同じ境遇の人を救うため」に活動を始めた人々には、周囲をまるごと包んでしまうほどのパワーを感じます。逆にこちらが、勇気とやる気を存分にもらえるくらい。

 もしも今後、私が根治を望めない状況になったとしても、そのときは彼らのように生きていきたい。人に力を与える存在になることを糧に、日々を過ごしていけたらと思います。

  がんを取り除けるか、取り除けないか。

  治せるか、治せないか。

  それだけが重要なのではないのだと思います。

  ようは、生き方の選択かもしれません。

講演を聴きにきてくれたがん仲間。「本当に全員がんなの!?」と思うほど陽気

療養中フォトギャラリー by iPhone ©木口マリ

木口マリ

「がんフォト*がんストーリー」代表
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。

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