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6月9日、10日 1人1人の勇気が世界を変える

掲載日:2018年6月12日 18時44分

垣添忠生の全国縦断がんサバイバー支援ウォーク 一言ブログ 6月9日 10日





●空は澄み 雲は白く 風は聖らかだ
 詩人の立原道造に「アダジオ」という詩があります。

 光あれと ねがふとき
 光はここにあつた!
 鳥はすべてふたたび私の空にかへり
 花はふたたび野にみちる
 私はなほこの気層にとどまることを好む
 空は澄み 雲は白く 風は聖らかだ

 立原は、1939(昭和14)年に24歳で夭折しました。結核性肋膜炎でした。亡くなる前年の秋、盛岡に1カ月ほど滞在しています。この詩はそのときに生まれました。
 私はこの詩を5、6年前に知りました。盛岡グランドホテルでパーティーがあり、ホテルが立つ愛宕山をぶらぶら歩いていたら、詩碑を見かけたのです。「お、これはいいな」と思い、手帳にメモしました。

 土曜日のウォークは、まさに「空は澄み 雲は白く 風は聖らかだ」の中を進みました。好天、気温24度。風が心地よく吹いています。
 立原の詩を思い浮かべたときに、パーティーのセレモニーでこの詩を披露したのに反応が乏しかったことも思い出しました。さらに、滋賀県でも似た経験をしたことがよみがえりました。「さざなみや志賀の都は荒れにしを昔ながらの山桜かな」という平家物語に出てくる歌に触れたのですが、聴衆はシーンとしていました。  約16キロを一気に歩き、地元に対する関心の薄さについて思いをめぐらせました。

●ダウン症の若い女性が料理を運ぶ
 日曜日は、ふだんより1時間ぐらい早く、朝7時半に花巻の宿を出ました。
 気温14度で、寒いぐらいです。今度は、詩人・童話作家の宮沢賢治の「雨ニモ負ケズ」が脳裏をよぎりました。賢治は花巻で農業指導をしていました。
 私は歩くとき、アリを踏まないように注意しています。暑い日は、踏まないのが難しいくらいたくさんのアリが走り回っています。今日は、数が少なく、動きも緩慢です。たぶん気温のせいでしょう。

 国道4号の両側には田んぼが広がります。畔の雑草を刈ったり焼いたりしてあります。なぜなのだろう? 収量に影響があるのかな? ちょうど30代ぐらいの男性が、歯車が回る機械で除草をしていました。さっそく聞いたところ、自分のエリアだからきれいにしているそうです。「ゴミも捨てられないんです」とのこと。
 たしかに、ビンや缶が捨てられていません。ごみが多くてがっかりした北国街道とは対照的です。

 思考の歯車が回り始めました。景観への関心は、地元への関心でもあります。県政と県民、国政と国民。人々の愛着や意識が政治にも反映される。
 米国のケネディ大統領の就任演説にこんな一節があります。

 Ask not what your country can do for you, ask what you can do for your country.

「国が何をしてくれるかではなく、あなたが国に何をできるかを問うてほしい」
 とでも訳せましょうか。

 民衆の意識、1人1人の勇気が世界を変えます。
 パキスタンのマララ・ユスフザイさんは、女性が教育を受ける権利を訴えただけで、イスラム過激派のタリバーンに銃撃され、瀕死の重傷を負いました。しかし、イギリスで手術を受けて回復し、2014年にノーベル平和賞を受賞しました。マララさんはずっと声を上げ続けています。そのことで、世界は変わりつつあります。

 ひるがえって、がんはどうでしょう。ウォークの取材でテレビ局が入ると、映りたくない人を事前に聞きます。でも、1人1人が勇気をもって、がんであることをオープンにしていけば、がんを隠す必要がない社会が生まれるのではないでしょうか。それは、だれにでも優しい社会につながるはずです。

 今日のお昼、「しあわせキッチン」というお店で、生姜焼き定食を食べました。お米は自家製です。ダウン症の若い女性が、一生懸命に料理を運んでいました。トイレには、脚力のない人が立ち上がりやすいように、可動式のとってが付いています。
どんな人も、それぞれのできる力を活かして暮らしていける。そんな思いがにじみ出ていました。


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