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【イベント報告】「治療と仕事」の両立に、中小企業の強みを生かそう
ネクストリボ ン2020 第1部がんとの共生社会を目指して ~パネルディスカッション~

掲載日:2020年4月22日 18時34分

基調トークに続き、パネルディスカッション「中小企業でも、中小企業だからこそ出来る取り組みとは?」が行われた。パネリストは、谷口正俊・ワールディング社長、永江耕治・エーピーコミュニケーションズ副社長、松下和正・松下産業社長。三者三様、それぞれの興味深い工夫を発表した。

(文・日本対がん協会 中村智志)

左から2番目が谷口正俊さん、3番目が松下和正さん、一番右が永江耕治さん。基調トーク同様、コーディネーターは上野創氏(左端)。

【パネルディスカッション】「顔が見える関係」ゆえにできること

ワールディング/エーピーコミュニケーションズ/松下産業」→「ワールディング・谷口正俊社長/エーピーコミュニケーションズ・永江耕治副社長/松下産業・松下和正社長


どんな働き方でも受け入れる

 最初に話した谷口正俊社長は、2013年にワールディングを創業した。同社は海外、主にASEAN諸国の労働者の日本での就業や生活を来日前から帰国後まで支援している。日本人と母国籍の社員がチームを組んでフォローする。労働者の数は、現在約3千人に上る。


 そんな同社でユニークなのは、谷口さんが「どんな働き方でも受け入れる。制度は後からつくる」と宣言していることだ。介護中の社員が9時に出勤し10時半に帰宅する。劇団員の社員が3カ月に1度10日間休む。その延長に、治療と仕事の両立も位置付けられる。


「いざというときの命の保障は徹底的に守る、という特色を打ち出すことで社員の定着率が上がり、生産性も上がります」


 谷口さんは「マルチタスク」も重視する。1人の社員が複数の仕事を覚えることで、誰かが働けなくなっても助け合える。一方で、20代の若者など制限のない働き方をしている社員には、賞与を手厚くするなどして、納得感を持てるように配慮している。

谷口正俊さん。1973年生まれ。ベネッセコーポレーションを経て、27歳で最初の会社を創業した。40歳で2度目の創業。

制度より大切なのは、相手を思うこと

 ITインフラのエーピーコミュニケーションズの永江耕治副社長は、2010年夏、36歳のときに精巣腫瘍となった。告知日に手術を受けて、抗がん剤治療を行い半年後に復帰した。同社は1995年創業で、従業員およそ370~380人。男性が8~9割で、平均年齢は35歳だ。


 永江さんもエンジニアで、がんになったときは人事の仕事をしていた。 「半年ほど治療して考え方が変わりました」  永江さんは罹患した当時、社長から「いつでも戻って来いよ、待ってるから」と言われた。同社は現在、年間5日間だが、時間単位の有給休暇も導入している。


「治療と仕事の両立となると、すぐに人事制度の話が出てくる。しかし、制度よりも大切なのは、相手を思うことです。サポートしようとしていると伝わるだけでも、当事者は安心感を確保できます。一方で、『戻ってきてほしいな』と周囲に思ってもらうためにも、病気になる前、日頃から人間関係を築いておくことが大事です」

永江耕治さん。1973年生まれ。2002年にエーピーコミュニケーションズに入社。一般社団法人キャンサーペアレンツの理事も務める。

ヒューマンリソースセンターの力

 松下産業は、社員約230人のゼネコンだ。同社は社員30人ぐらいの時代から、脳梗塞やがんの人も治療しながら働いてきた。「多様な価値観との共存」を企業理念に掲げる。  松下和正社長は3つのポイントを挙げた。

 同社の特徴は、「ヒューマンリソースセンター」だ。取締役会直結の部署で、ワンストップで相談に乗ったり専門家へつないだりする。匿名も可能で、上司や人事よりも相談しやすい。また、病気になったときの社内外の相談窓口をA4の紙1枚にまとめている。家族と会社のつながりも重視していて、ふだんから“ファミリーデー”という職場参観も行う。


 社内制度では、在宅勤務(テレワーク)や時短勤務のほか、会社でGLTD(団体長期障害所得補償保険)に加入している。同社のプランは、毎月1500円程度の保険料で、働けなくなった場合、年収の40%が補償されるという。また、35歳以上は全員、がん検診を受ける。これらを合わせても社員1人あたりのコストは年間4万5千円ほどだ。松下さんは言った。 「それぐらいの負担で社員の安心感が担保できるなら、非常によいことです」

松下和正さん。1956年生まれ。82年に松下産業入社。国立がん研究センター「がんと共に働く」プロジェクトアドバイザリーボードメンバーなども務める。

制度がなくても実現する

 3人の発表が終わり、コメンテーターの高橋都さんから、「こうした会社の文化はどうやってできたのですか」という質問が出た。


 谷口さんは「最初に創業した会社は、増収増益でしたが、スタッフの多様性はなく深夜残業もあたりまえ。これでは続かないと思いました」と経営哲学の方針転換の原体験を語ったうえで、「中小企業の強みは、社長が強い意志を持ってやったことは、制度がなくても実現することです」と続けた。


 自由な働き方ができるゆえ、70代後半の職員もいれば、介護中のトップエンジニアも定着している。


 永江さんも、中小企業ならではの利点に触れた。 「従業員1万人の企業で顔と名前が一致しないと、社員は記号化して、会社はルールに沿った対応しかとれない。ルールを越えた例外対応は、会社の規模が小さく、顔が見えるほど融通が利きます」


 松下さんは、ヒューマンリソースセンターを立ち上げたことで、企業風土が驚くほど変わったという。


「上司だって介護や子どもの不登校などプライベートな問題を抱えていたりする。仕事優先ではなく、お互い様、という風土が強くなりました」


 うちの会社は社員を大事にしてくれると思えば、社員のモチベーションも上がる。治療と仕事の両立を支える取り組みは、「思いだけでなく合理的な面からも促進できる」(谷口さん)のである。


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