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第49回 “がん経験者のごはん”は笑顔でいっぱい!?『みんなのがん手帖』の取材班がキグチ家にやってきた!/がんのココロ

掲載日:2020年9月4日 11時30分

 『みんなのがん手帖』を知っていますか?
 がんサバイバー・クラブの人気シリーズの一つで、「がん患者・経験者のお宅を訪問し、闘病中の食にまつわるお話を聞こう」という企画です。登場する人は、取材中に料理を作ります。

 なんと、私もそこに登場することになりました。
 おまけに「取材を受けつつ、その様子を取材する」という、ちょっと面白い展開になったのです。

 今回は、「取材がどんなふうに行われたか」といったことから、「そもそも、料理って何作る!?(それ以前に、人に見せられる部屋なのか!?)」という、出演者にお決まりの素朴な焦りまで。普段見ることのない、『みんなのがん手帖』の裏側のお話です。

取材の事前準備(1)「何作る!?」

自宅訪問取材をしていただきました!

 実は、最初にこの取材のお話をいただいたのは数年前。がんサバイバー・クラブのスタッフさんが企画を立ち上げようとしていたときでした。「キグチさんも出てほしい」と言われて、「わ〜い」と思っていたのだけれど、しばらくしてもお声がかからず、だけど他のみなさんの取材はどんどん進んでいく……。

 半年、1年と経過していき、「どうせ私の食の話なんて、ぶつぶつ」と、プチ・すねモードになっていた私。今回、再度お話をいただいたうえにコラボ取材にまでなっていて、すねモードは吹っ飛びました。

 しかしそこで、ふと我に返る。
 療養中に作った思い出深い料理といえば、食パンとかハムとかマヨネーズとか、料理ぽくないものばかり……。全然写真映えする気がしない。

 ほかに何かないものかと、iPhoneの写真を数年分さかのぼって見ていたら、電子レンジでできるスポンジケーキやら、ポンデケージョ (ブラジルのチーズパン)やら、クラッカーやら、意外とさまざまなお菓子を作っていたことを思い出しました。

 当時は、「自分で作れるものは作ってみよう(人があまり作ろうとしないものを)」と、結果的にあれこれたくさん手を出していたのだなあとしみじみ。でも、シリーズに登場されているみなさんがきちんとした料理を選んでいるなかで、そんなものでいいだろうか。

『みんなのがん手帖』の編集者である晴山香織さん(株式会社おいしい健康 クリエイティブチーム)と何度もやりとりし、最終的に「たまにはカワイイものを紹介したい」とのことで、デザート3種(豆腐と豆乳のチョコレートババロア、超簡単なりんごのコンポート、蜂蜜とココアのなんちゃってチョコレート)に決定しました。

 これまでの記事を見ていて、みなさんは取材であっても難なくさらりと料理しているような気がしていました。でもきっと、誰もが同じようにいろんなことを思い返して、自分でもう一度作ってみたりして、当時の気持ちもほんのりとよみがえっていたのだろうと思います。

 もちろん、私も事前にトライ。「あのころは、毎日のように何か作っていたなぁ」と思いながら。おかげで冷蔵庫がしばらくの間デザートだらけになりましたが。

取材の事前準備(2)「部屋を片付けきれない……」

なんとかお掃除完了です。

「取材班が家に来る」なんて、初めての体験です。
 それならば、料理云々の前に家をきれいにしなければなりません。そんじょそこらの、「お友達が遊びに来るから掃除しよう」というくらいではダメなのです。

 一応、女子としての見栄もあるし、いい機会なので模様替えもプラスして完璧にきれいにしてやろうと決意しました。張り切って書類を整理し、いらないものを捨てまくり、棚の配置を考え……。

 ところが私の「決意」は、イヤんなっちゃうくらいもろい。ついには取材当日までに終わらせることができませんでした。

「こうなったら、見た目だけでも完璧にしよう」と、“いつか片付けたいもの”をすべてお風呂場に詰め込むことに。おかげで取材班のみなさまに「すごい、キレイ!」と驚嘆していただき、面目を保つことができました(当然ながら、お風呂場のことは言わない)。

 何はともあれ「お風呂場に詰めたくらいの量を処分できれば、これだけきれいになるんだ」と、お片づけ計画の目標ができたのでヨシとしよう。

まるで「女子会」な取材、開始!

取材&撮影は女子会のよう。

 取材にやってきたのは、編集の晴山香織さん、ライターの梅﨑なつこさん、フォトグラファーの相馬ミナさんの3人。全員、女性です。多分、私と同じ世代(もしくは、ちょっと若い)くらい。

 晴山さんとはメールでやりとりをしていて、その温かな雰囲気に早く会ってみたいなと思っていたものの、3人とも初対面です。それなのに会ってすぐから不思議なほど違和感がなく、「よく知る友達を自宅に迎え入れた」という気がしてくるほど。
 聞くと『みんなのがん手帖』の取材は、このメンバーで行うことが多いとのこと。仲良く楽しみながら仕事をしているのが伝わってきました。

 取材は、最初にインタビューを行い、次にキッチンへ。ワイワイとした様子は、まるで女子会。これまで受けてきた取材も緊張することはありませんでしたが、今回はさらにリラックスしてしまい、「人工肛門が愉快だった話」や「このところハマっているエクササイズ動画」など、話がいろいろな方向に広がりすぎてしまいました。それでも要点をつかんでちゃんと記事にしてくれた梅﨑さんはスゴイ。

失敗しませんように……!

 人前で料理するのは初めてで、さすがにちょっとドキドキしました。しかし過去の記事に添えられていた写真がとても爽やかだったことから、「あんなふうに撮ってもらえる」と思うとワクワクもあります。

 ちなみに相馬さんのカメラは、高級&味のある写真が撮れることで知られるライカ。仕事でライカを使う人は珍しい。
 ライターやフォトグラファーといった、自分と同じ職種の人の仕事の仕方には、すごく興味があります。いつも気づくと観察しているのですが、相馬さんは撮り方も存在もあまりに自然で、腕からライカが生えているのではと思うほどの一体感。そのおかげで撮られている感はまったくなし。

 知らぬ間に3人の仲間入りをさせてもらえているようなゆったり感の作り方といい、それぞれの個性が活きる仕事の仕方といい、様々にいい刺激を受けました。終わってしまうのが寂しくなるほど楽しい時間でした。

笑顔から伝わってくるのは「がんとの向き合い方」

「なんちゃってチョコレート」を手に持って撮影(写真は「みんなのがん手帖」にて!)

 取材に来てくれた3人とも、がん経験はないとのこと。
 晴山さんは、この企画の話を受けたときに多少の戸惑いがあったと言います。

 
「がん患者さんに対して、どう接すればいいのだろうか」

 お友達や家族など、身近な人ががんになったときでさえ、多くの人が一度は考えてしまう問い。晴山さんが、あるがん経験者に「患者さんに聞いてはいけないことはありますか」とたずねると、「別にない」との回答だったそうです。あまりにスパッとした答えに、私も思わず「プププ」と笑ってしまいました。

「その方がさっぱりとした人だったからかもしれませんが……」と晴山さん。しかしその後の取材がほどよく行われているところを見ると、きっとちょうどいい回答だったのでしょう。

 特に若いころは、自分や家族ががんにならない限り、たくさんのがん患者や経験者と接する機会はほとんどありません。

たくさん写真を撮っていただきました!(写真:晴山香織さん)

「がんは、とても身近なのだと感じました」
 晴山さんと梅﨑さんは、取材を通してそう思うようになりました。

「取材で出会った、母であり乳がん患者でもある方に衝撃を受けました。ほんわかとした雰囲気なのに、子供たちを育てるために持った覚悟は、すごく強いものがあったんです」(晴山さん)。また、相馬さんは撮影をしている間、「その方の子供たちの『お母さんを支えよう』という気持ちに、心が揺さぶられて涙が出そうだった」と語ります。

 取材記事は、たくさんの人にストーリーや想いを伝えるものではありますが、その取材を行う人たちの心には、さらに大きなものが残るのだろうと思います。それは、取材をしてもらう私たちにとっても意味が深いものだと感じました。


『みんなのがん手帖』の写真に写る人たちは、本当にすてきな笑顔をしています。それは、取材をしてくれる人たちや家族が、心から楽しく一緒に時を過ごし、食の思い出を語り合っているからだと思います。

 がんになると、「食をしっかり考えなきゃ」「がんばらなくちゃ」と、“耐える”方向に意識が向いてしまうことがあります。でも、記事のなかの笑顔や、みんなの暮らし方を見ていると、「もうちょっと心を緩やかにしてみてもいい」という気がしてくるのです。

●みんなのがん手帖 木口マリの回(このエッセイとのコラボ取材記事)
https://www.gsclub.jp/stories/14300

●木口マリの「がんのココロ」第6回「そこはかとなく『食べ物が怖い』」
https://www.gsclub.jp/tips/6886

木口マリ

「がんフォト*がんストーリー」代表
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。

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