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村本 高史の「がんを越え、”働く”を見つめる」第5回

掲載日:2021年10月6日 16時39分

「がんと就労」の問題に関して、よく受ける質問があります。「がんになった場合は勤務先に知らせた方がよいのでしょうか」。

 国立がん研究センターが実施した「平成30年度患者体験調査」(※)では、「診断時に収入のある仕事をしていたがん患者の81%が職場や仕事上の関係者にがんと診断されたことを話した」という結果が出ています。感覚的には、かなり高い数字だと受け止めました。

 今回は、がんの開示の問題について考えてみましょう。


企業の立場、当事者の立場

 経営者や管理職の立場からすると、「がんになったら迷わず言ってくれればいいのに…」と単純に思う人もいるでしょう。しかし、がんの診断を受けた時、人は誰でも大きな不安と混乱に包まれます。命自体が脅かされる恐怖。「なぜ自分が」というやるせなさ。日常生活や仕事の先行きが見えなくなる焦燥感。

 開示することに関しても、様々な思いが頭をよぎります。評価や処遇で不利益を受けるのではないかという不安。他の人に余計な心配をかけるのではという遠慮。こうした本人の感情はもっともなものであり、理解しなければなりません。

 けれども、開示をすれば必要な配慮を受けられる可能性も出てきます。思いがけない手助けや心強い応援者も現れるかもしれません。開示をするかどうかを迷った際に、ぜひ留意頂きたい点です。私自身、再発手術後の復帰の際、声が出ない現状を幅広く社内外に開示することで多くの温かい返信を頂き、大きな力にすることができました。


がんサバイバーが安心して働き続けていくために

 

 最初の質問に戻れば、勤務先に開示をするかどうかはあくまでもその人の自由だと私は思います。勤務先との関係をその人がどう位置付けるかにもよるでしょう。たとえば短期的な割切った関係と考えるなら、「自分の不利になるかもしれないことは言わないでおこう」という考え方も否定はできません。一方で、勤務先との間に中長期的な相互信頼を求めるなら、開示して自分にできることを伝えた上、配慮を引き出すという選択をすべきのような気がします。

 とはいえ、がんになった人が無用な心配をすることなく開示ができ、対話しながら必要な配慮を引き出せるようなら、それに越したことはありません。そのためには、企業側は「病気になったから」ではなく、日頃から何でも言い合える風土をいかにつくっておくかがとても大切になります。

 私自身、一人でも多くのがんサバイバーが安心して働ける企業がさらに増えていくことを願い、自分のできることにこれからも取組んでいくつもりです。

 ※国立がん研究センター実施「平成30年度患者体験調査報告書」。当該データはP78参照。

 H30_all.pdf (ncc.go.jp)

村本高史(むらもと・たかし)
サッポロビール株式会社
人事部 プランニング・ディレクター
1964年東京都生まれ。1987年サッポロビール入社。2009年に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。11年、人事総務部長在任時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声法を習得。14年秋より専門職として社内コミュニケーション強化に取組む一方、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立上げ等、治療と仕事の両立支援策を推進。現在はNPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事や厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定検討会」構成員も務めている。

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