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クリコ流ふわふわ介護ごはん
第11回 みんながいつでもどこでも食の楽しみを共有できる…そんな社会はいつ来るのか

掲載日:2022年10月12日 10時23分

 インターネットで”介護食”と検索すれば介護食品の通販や宅配食のサイトがずらっと並ぶ。10年前とはずいぶん変わったように見える。

 スーパーマーケットやドラッグストアの介護食品の取り扱いはどうだろう。私の住まいから電車で20分圏内にある店舗に電話で問い合わせたところ、スーパーマーケットは扱いがゼロ、ドラッグストアは8店舗中5店舗で扱っていた。さっそく家から最も近い店舗に行ってみると介護用品コーナーで見つけることができたが、その種類の少なさにがっかりしてしまった。レトルトの介護食品は噛む力によって柔らかさが分類されている。かまなくてよい柔らかさは、おかずが2種類。歯茎でつぶせる柔らかさは、雑炊が1種類、おかずが1種類。舌でつぶせる柔らかさは、ごはんが1種類と雑炊が2種類でおかずはゼロだ。

 申し訳程度に置いてあるだけという印象だ。

 ネットスーパーを見てみると、ほとんどがレトルトタイプで主食、主菜、汁物を中心に提供している。種類は多くないが、ハイカロリーを謳ったカップゼリーや冷凍の弁当もある。製造メーカーが増えたことで商品の種類も以前よりは選択肢が広がったように思うが、どれもセット販売で値段も高額だ。味や食感が口に合わなかったときのことを考えると大量購入は躊躇してしまう。

 いま介護食をめぐる状況はどう変化しているのだろうか。


●介護食のこと知ってますか?

 今年の4月に食品メーカーのキューピーが、10代から80代以上までの全国の男女計1,264人を対象に行った「介護にまつわる意識調査」の結果を公開している(https://www.kewpie.com/newsrelease/2022/2596/)。

 やわらかさに配慮した食品「介護食」について知っているかの問いに、「介護食」という名称を知っていて内容も理解していると解答した人が半数以上。介護食のイージについては、「やわらかい」「高齢者向け」「栄養バランスがよさそう」の他に、「おいしくなさそう」「病気・体調不良の時に使うもの」や「手抜き感」「購入時人目が気になる」というネガティブなものもある。

 介護食の認知度が上がっていることは、微力ながら介護食を広める活動をしてきた者として素直に嬉しい。その一方で、まだまだ介護食を必要とする人の満足の声は聞こえてこない。

 仕事を持ちながらの介護や老老介護の介護者にとって、食事作りは大きな負担だ。商品ラインナップが増えても、近所の店で手頃な値段で好みの味の商品をいつでも買えるようにならなければ、介護者の負担は軽くならない。


●介護食と普通食の間には垣根がある

 そして、介護食のレシピ本は相変わらず書店での扱いが少ない。ネット書店では多数出版されているが中を見ることができないので、食べる人の噛む力の程度に合ったレシピかどうかを確かめることができない。私が主催する介護食の料理講習会の参加者の共通する悩みは、情報がない、レシピ本がない、市販の介護食品が少ない、口に合わないといったものだ。それは、私が10年前に感じたこととまったく同じなのだ。

 ある時、お蕎麦屋さんで相席になった高齢女性が鴨南蛮の鴨肉を噛み切れず残してしまった。鴨団子だったらきっとおいしく食べられたはず。レストランメニューにやわらかさに配慮したメニューが並んだら、スーパーやコンビニに柔らかいお惣菜やお弁当があれば、喜ぶ人がたくさんいるはずなのだ。

 介護食と普通食の間には垣根がある。「食のバリアフリー化」と言ったら大げさに聞こえるかもしれないが、その垣根を取り払ったとき、誰もが一緒に食の楽しみを共有できる社会になるのだと思う。多くの人が介護食とその必要性を知り、身近な問題として捉えることが食のバリアフリー化実現に必要なことなのだろう。


●ローソンの取り組みやレストランでの介護食対応

 コンビニエンスストアチェーン「ローソン」は、店内に介護相談窓口を併設した介護拠点併設型店舗「ケアローソン 」を全国に12店舗展開している(2021年10月現在)。コンビニの標準的な店舗に加えレトルトの介護食や介護用品などが揃い、相談窓口にはケアマネージャーなどの相談員が駐在している。

 暮らしに欠かせないコンビニで介護食を含む介護用品を目にする機会が増えれば、いずれ介護食の認知にもつながっていくだろう。

 また、厚生労働省の研究費を受けた研究班が作成する「摂食嚥下関連医療資源マップ」(https://www.swallowing.link)では、摂食・嚥下機能が低下した人でも外食できる飲食店を探すことができる。現在75店舗が登録している。食事の対応範囲は、飲み物にとろみをつける、食べやすく刻む、客の要望に応じて調理するなど店によって様々だ。私がこのマップを知った5年ほど前に比べて登録件数も格段に増え、サービス内容も充実してきている印象がある。

 普通に介護食がある暮らしが来るまでまだ時間がかかりそうだ。

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 もうすぐ、ハロウィンですね。かぼちゃがおいしい季節になりました。今回はかぼちゃのピュレとご飯でリゾットをご紹介します。かぼちゃの甘みとチーズの塩気が絶妙なバランス。和風にかたよりがちなおかゆのバリエーションにぜひお試しください。


おかゆでかぼちゃのリゾット


【材料 1人分】

材料名 分量
1 ご飯 100g
2 200cc
3 鶏がらスープの素 小さじ1
4 かぼちゃのピュレ
(*作り方は第1回「かぼちゃのフラン」参照
40g
5 かぼちゃの角切り(皮と種は除く) 30g
6 無塩バター 5g
7 削ったパルメザーンチーズ 大さじ1
8 エクストラバージンオリーブ油 適量
9 適宜

【作り方】

  1. かぼちゃのピュレを用意する。冷凍保存してある場合は解凍する。
  2. かぼちゃを7mm角に切り、やわらかく茹でる。
  3. ご飯をさっと洗い茹でこぼす。水洗いし表面の粘りを取り除く。
  4. 3を鍋に入れ、水、鶏ガラスープの素を入れ強火で加熱する。沸いたら弱火にしヘラで時々かき混ぜながら柔らかくなるまで15〜20分煮る。
    *水分が足らない場合は適宜足す。
  5. 水分を少し残し、1、2を混ぜる。
  6. 火から下ろしバター、パルメザンチーズを混ぜる。塩で調味し皿に盛り、香りづけにオリーブ油をまわしかける。
クリコ 料理研究家・介護食アドバイザー 本名は保森千枝(やすもりちえ) 自身の介護経験から、加熱しても固くならない手作りの肉・魚介素材を考案。柔らかく、見た目に食欲のわく肉・魚介料理のレシピを多数開発。野菜ピュレを活用した野菜料理は、主食からデザートまでレパートリも豊富。 食べる人だけでなく作る人も一緒に楽しめる、そんな家庭の食卓作りをモットーとしている。 【Webサイト】 「やわらかい・飲み込み安い クリコ流ふわふわ希望ごはん」 https://curiko-kaigo-gohan.com/ 【主な著書】 「希望のごはん」(日経 BP社) 「噛む力が弱った人のおいしい長生きごはん」(講談社)
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