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村本 高史の「がんを越え、”働く”を見つめる」
第15回 ダイバーシティ&インクルージョン ~世代の枠を超えて~

掲載日:2023年6月8日 17時00分

 私の勤務先の職場に新入社員が着任してきました。初々しさと少しばかりの緊張を浮かべる様子は微笑ましく感じます。

 街中ではリクルートスーツの学生も見かけます。若い人たちの姿に、こちらも新鮮な気持ちになる季節です。



AYA世代のこと

 最近の新入社員や学生の中には、サッポロビールの治療と仕事の両立支援のことを知っている人もいます。どのような状況になっても安心して働ける会社だと思ってくれるなら、本当に嬉しいことです。

 国のがん対策を見た場合、15~39歳のAYA世代は重要な位置づけに置かれています。

 2018年から始まる第3期がん対策推進基本計画で、「AYA世代のがん」は初めて項目として盛り込まれ、小児と成人の狭間での年代や状況に応じたニーズの多様性等の課題が指摘されました。

 今年から始まった第4期がん対策推進基本計画(※1)ではこれを発展させ、教育を含めた療養環境や長期フォローアップ、就労等の施策の方向性が示されています。

 そのような中、3月には「一緒に知ろう!共に考えよう!AYA世代のがんのこと」と題したイベント(※2)が東京渋谷を拠点に開催されました。子育てやライフステージの大きな変化といった世代の特徴を踏まえた、がん情報や生活・人生へのサポート、在宅医療等の多様な観点からのセッションは、多くの人を勇気づける内容でした。

 私自身はAYA世代でのがん経験者ではありませんが、「がん教育」のセッションに登壇機会を頂きました。学校での狭義のがん教育に限らず、偏見のないように社会全体に対するがん教育が重要であること。当事者の気持ちを大切にしてほしいこと。とはいえ正解を求めすぎないこと。こうした点を反映し、AYA世代のみならず誰もが日々を過ごしやすい、よりよい社会になればと願っています。



世代を超えた対話の場を

 

 AYA世代のことは、同じ世代だからこそわかり合えることもあるでしょう。同世代でつくる患者支援団体やAYA世代を支援する研究会の存在は、大きな力になるものです。

 翻って企業の中を見渡した場合、若い人からミドルシニアまで様々な人たちが一緒に働いています。もちろん仲間同士のつながりは成長への刺激にも安心にもなりますが、世代を超えて異なる価値観が出会うからこそ、組織の成長につながる気づきや発見もあるはずです。

 そんな時に大切なことは、世代を超えてお互いを認め合うことではないでしょうか。フラットな立場に身を置き、お互いの声に耳を傾け、その上で率直な思いを語り合うこと。

 「自分にも若い頃が確かにあったなあ」と改めて振り返りながら、だからこそ世代を超えた対話の場を率先して築いていくことは、とりわけ年長者の務めであると感じる昨今です。




※1:第4期がん対策推進基本計画(令和5年3月28日閣議決定)
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001077564.pdf

※2:「一緒に知ろう!共に考えよう!AYA世代のがんのこと」(主催:認定NPO法人希望の会)
https://ayashibuya.studio.site/

村本高史(むらもと・たかし)
サッポロビール株式会社 人事部 プランニング・ディレクター
1964年東京都生まれ。
1987年サッポロビール入社。
2009年に頸部食道がんを発症し、放射線治療で寛解。
11年、人事総務部長在任時に再発し、手術で喉頭を全摘。その後、食道発声法を習得。
14年秋より専門職として社内コミュニケーション強化に取組む一方、がん経験者の社内コミュニティ「Can Stars」の立上げ等、治療と仕事の両立支援策を推進。
現在はNPO法人日本がんサバイバーシップネットワークの副代表理事や厚生労働省「がん診療連携拠点病院等の指定検討会」構成員も務めている。



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