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第73回 #病院の周り散策シリーズ(2) 〜ニッポンの魅力満載!「東大病院」の周り〜/木口マリの「がんのココロ」

掲載日:2023年10月13日 13時00分

 やってきました『#病院の周り散策シリーズ』。第二弾の今回は、「東京大学医学部附属病院(=東大病院)の周り」です。

 病院に通うときに立ち寄れる、“がんばった自分へのご褒美として”というコンセプトの企画ですが、お見舞いに来てくれた家族や友人へ「帰り、ココに立ち寄ってみたら?」という“お楽しみのご提供”としても活用してもらえるのではと思います。

●ココはどこ!? 美しすぎる東大キャンパスで銀杏狩り

 東大病院があるのは、東京都文京区本郷7丁目。住所を唱えるだけで文化的な香りが漂ってきそうだが、事実、本郷は多くの文人にゆかりのある地であり、歩き回ればふとしたところで“古き良き日本”の風景に遭遇する。第一弾「国立がん研究センター中央病院の周り」とはまた違った散策が楽しめそうだ。

#病院の周り散策第二弾!初秋の銀杏並木も心地いい@東京大学

 東大病院は、当然ながら東京大学の敷地内にある。
 東京大学は明治10年(1877年)創設。そんな長い歴史があるためか、とにかく建築が美しい。
 東大の本郷キャンパス内だけで1つの建築が国の重要文化財、8つが国の登録有形文化財に指定され、3つが東京都の歴史的建造物に選定されているという。

 敷地に入ってから病院棟に向かう間も、中世ヨーロッパを彷彿とさせる建築だらけ。病院に通うのは多くの人にとってうれしい行為ではないだろうが、ハッキリ言ってうらやましい。こんな病院に通いたい。

「本郷正門」は、国の登録有形文化財のひとつ。

 しかも東大は紅葉の名所でもある。重厚な西洋建築と黄金色の銀杏は、なぜにこんなに合うのだろう。病院の西にある「本郷正門」から、東大のシンボル「安田講堂」までの銀杏並木は、病院に用がなくとも行ってみたいポイントだ。

紅葉は11月中旬〜12月上旬が見頃。一般人でも気軽に入ることができるが、あくまで学校なので静かに散策しよう。

●東大オリジナルグッズをゲット〜

 せっかく東大キャンパスを訪れたのなら、安田講堂の裏あたりにある大学生協購買部に立ち寄ってみよう。学生のためのお店だが、観光客とおぼしき外国人ファミリーも多く見かけることから、すでに「お土産屋」として認識されていると思われる。

大学生協第二購買部。安田講堂の裏あたりにある。

その気持ちもうなずける。何しろここは、他の大学ではなかなか見ないほど、とにかくオリジナルグッズが豊富なのだ。

 例えば、「東京大学クッキー」「東京大学チョコレート」のほか、「東京大学ワイン」「芋焼酎 本郷赤門」「純米吟醸酒」まである。

「さすが!」と思うのは、東大で研究した成果であるグッズも多く販売しているところ。栄養が豊富で注目されているというミドリムシ(ユーグレナ)のクッキーだったり、『研Q室のヨーグルト』だったり、お酒やコーヒーも新しい研究から生まれたものがあるという。世の中には、いろいろな研究をしている人がいるものだ。

 キャンパス内にはベンチがところどころにあり、木陰でくつろぐ人も多い。購買部で買ったオリジナルお菓子を片手に、しばし自分だけの時間を過ごしてみるのもいいだろう。病院のすぐそばなのに、ちょっとした旅気分になれそうだ。

左から『ユーグレナクッキー』(5枚入り550円)、『大學チョコサンドクッキー』(864円)、『研Q室のヨーグルトドリンク』(1本173円)。背景にあるのは大正時代の建築「安田講堂」。

チョコサンドクッキーは、サックリ軽くて食べやすい。パッケージの赤門がいかにも東大。

大学名入りの、まさに大学ノート(462円)。これに日記をつけると楽しいかも。

秋晴れの空の下、ベンチで購買部のおにぎりをいただいてみた。景色がいいと気分もいい!

足元にはスズメさんも。

●昭和めぐり、坂めぐり

 大学の敷地を出て街を歩いてみるのも面白い。多くは新しく建てられた家に成り代わっているものの、ふと迷い込んだ裏道や、覗きこんだ路地に、“在りし日の日本”を感じられるはずだ。
 ただし、本郷は坂道も多い。その日の気分や体力と相談しながら歩いてみよう。

 まずは東京大学の西側、本郷通りを渡った路地に入ってみる。
 このあたりは明治時代の文人、樋口一葉が幼少期を過ごした場所であり、宮沢賢治や金田一京助も居を構えていた。登録有形文化財『鳳明館』は、明治時代に下宿屋として建てられ、現在は旅館として営業している。(改修中により日帰り利用のみ/2023年9月現在)

樋口一葉が住んでいた一角。細い路地が階段へと続く。

階段を登ってみた。住宅地なので配慮を忘れずに。

登録有形文化財の木造二階建旅館『鳳明館』。通院ついでに一泊してみたい!

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鳳明館
東京都文京区本郷5-10-5
https://www.homeikan.com
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 このあたりの坂には、それぞれ名前が付いている。菊坂、金魚坂など、かわいらしい名前を見ると、つい歩いてみたくなる。
 鳳明館からの急坂は「胸突坂」という。想像だが、転んで胸を打ち付けるほどの坂、という意味だろうか。かわいくない、というかコワい。


 胸突坂を下りきったところに、甘味・食事処『ゑちごや』という昔ながらの風情漂う小さな店がある。店先にはみたらし団子や桜餅が並び、店内では「餅入りラーメン」なるものが食べられる。

 訪れてみたものの、なんとシャッターが閉まっていた。実は数年前にも訪れたことがあるのだが、当時、店主は「創業140年。20歳のときに父親から店を引き継ぎ、それから60年、営業を続けている」と語っていた。

 そうなると、今はさらにお年を召しているはず。「どうしたのだろう」とドキドキしながら辺りを見回すと、「9月の休業日」という手書きの貼り紙を発見した。どうやら定休日制ではないらしい。しかも明らかにあとから休みを追加している。

 きっと自分の暮らしに合わせた営業をしているのだろう。この日の散策は、半分ココを目当てにしていたようなものだったので至極残念ではあったが、「そういう生き方って、いいよな」と、世間に左右されないマイペースな生き方に、心が緩んだ気がした。

手書きの「休業日」の貼り紙。ところどころにじんでいるのも、何か好感を持ってしまう。

数年前の訪問時に買ったもの。お餅はふんわりと柔らかそうで、店主は「今朝ついたばっかりだからね」と楽し気に話していた。また行きたい。

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ゑちごや
東京都文京区本郷4-28-9
不定休
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金魚坂。約350年前に金魚問屋があったことに由来する。今も金魚が飼育されている。

金魚を描いたタイルがかわいらしい。

炭団坂(たどんざか)。「昔は泥だらけになったであろう」という急坂。今はロングな階段。

懐かしのテーブル型ゲーム機発見!

●近くても、イイところ

 楽しみたいのはヤマヤマだけれど、「散策はムリ」というときもあるかもしれない。実は、東大病院内にもちょっといいスポットがある。それが『焙煎所Cafe』だ。

 2022年3月、南研究棟の1階にオープンした。歴史的建築を生かした風情が素敵!素敵すぎる!! 店内に病院のお会計番号が表示されているため、待ち時間をくつろぎタイムに活用できそうだ。
 ちなみに、カフェの隣にある廊下を進むと、レンガ建築に囲まれた静かな中庭や、『健康と医学の博物館』というものもある。研究棟の探検がてら行ってみよう。

素敵なたたずまい! 病院の南側、通りを隔てたところにある。

コーヒーはもちろん、『あんバターきな粉サンド』(473円)、『豚の角煮カレー』(990円)、和菓子もある。写真は、左から『わらび餅』(各250円)と『エネルギーミックスナッツ(小)』(250円)。ミックスナッツは、本日のキグチ的ヒット商品!! 入院したら毎日買いそう。

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焙煎所Cafe
東京大学医学部附属病院 南研究棟1階
https://www.instagram.com/baisenjyocafe/
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●ちょっと歩いて、イイところ

 最近では、「がんになったら運動をしよう」といわれている。「今日はちょっと歩こうかな」と思うなら、東大病院付近はもってこいな場所である。

 実はこの近辺、「ニッポンっぽい名所」だらけなのだ。
 病院の東へ向かえば桜の名所「上野公園」があるし、南へ行けば明治時代の洋館と庭園が美しい「旧岩崎邸庭園」や、300本の梅が境内を彩る「湯島天満宮」もある。少し西へ足を伸ばせば「文京シビックセンター展望ラウンジ」からスカイツリーや富士山だって望めてしまう。

「そんなにたくさん、ズルくないですか!?」と叫んでもいいだろうか。

「旧岩崎邸庭園」(入館料大人400円)。館内の見学や庭園散策もできる。病院からは、坂道を下っていく。

文京シビックセンター25階、展望ラウンジから望むスカイツリー!

同じく展望ラウンジから。東京都庁の向こうにそびえる夕暮れの富士山。

※掲載の内容・価格は、2023年9月時点のものです。
#病院の周り散策シリーズ第一弾「国立がん研究センター中央病院の周り」はこちら:

https://www.gsclub.jp/tips/19878

木口マリ
「がんフォト*がんストーリー」代表 執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。
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