夫が病気で亡くなって12年。あっという間のようにも長かったようにも感じます。悲しみから逃れようともがく日々から救ってくれた言葉がありました。 「人は悲しい生きもの、だからこそ深い。無我よ悲しみを抱いて生き抜け」 名優と謳われたある俳優が、心の病で苦しむ若手俳優に贈った言葉です。
悲しみを乗り越えようと、もがけばもがくほど苦しさは増すばかり。当時の私にとって、「悲しみを抱いて生き抜け」というこの一言が救いとなりました。乗り越える必要などない、悲しみを抱きつつ生きればいいんだと思えた瞬間は、暗いトンネルから抜け出したような感覚でした。 今では、ひとりごはん、ひとり旅、ひとり映画も楽しんでいます。
もし、生まれ変わって夫と再会したら第一印象はどんな感じなんだろう。やっぱり、ビビビッとくるんだろうか。どんな関係性で出会うんだろうか。幼馴染、兄妹、親子、クラスメート、同僚など、いろいろなパターンで空想してみます。 彼がもっと歳を重ねて、髪が白くなったらきっと似合っただろう。相変わらず、愉快な話で私を笑わせてくれただろう。一緒の旅は最高に楽しいだろう。そんな空想をするのも楽しい時間です。
真の夫婦、家族になるには
愛する人と結婚した瞬間、多くのカップルは世界で一番幸せ!と思うのでしょう。私もそのひとりでした。でも、数時間前まで他人だったふたりが、紙切れ一枚でいきなり家族になれるのかというとそういうものでもない気がします。
小津安二郎監督作品「彼岸花」で、結婚適齢期の娘をもつ父親が、知人の娘に「結婚は黄金(きん)やと思ったら真鍮やった。でもその真鍮を黄金にするんだよ。それが本当の夫婦なんだ。ね、結婚おしよ」と助言する場面があります。なるほど、言い得て妙です。 ふたりでコツコツ磨き上げながら、少しずつ輝かせていく。先に大きなご褒美が待っているようなワクワク感があります。お互いへの関心がだんだん薄れて、一緒にいる意味もわからなくなる。そんなつまらないことになるんじゃなくて、ふたりで創り上げていく感覚がポジティブで気に入りました。
夫が病気になり、文字通り二人三脚で病と闘った3年半でした。この時「ああ、私たち本当の家族になれたんだなぁ」という感慨が込み上げてきました。本当の夫婦、家族になるには、いくつも壁を乗り越える作業と時間が必要なようです。
人生は美しく実るフルーツ
著名な建築家 津端修一さん(90歳)と妻 英子さん(87歳)の日常を描いたドキュメンタリー映画「人生フルーツ」を鑑賞しました。 自ら設計した家に住み、植えた苗木がいつしか雑木林となり、その枯葉をまいて耕した畑で作物を育て、収穫した野菜や果実で料理を作る。自然とともに生きるふたりは、時を重ねるごとに美しく実る、まさに人生フルーツでした。 劇中、英子さんが、しゅうたん(修一さんのこと) は、「いい顔になった」とつぶやきます。しゅう たん は、英子さんを「生涯で最高のガールフレンド」と言って目を細めます。
なんて羨ましいんだろう。なんて自然で素敵なんだろう。私も夫とこんな夫婦になりたかったと胸がいっぱいになりました。 2月2日はどなたが決めたのか「夫婦の日」だそうです。皆さんのパートナーが最高のガールフレンド、ボーイフレンドになれますように。 今回ご紹介するレシピは、二日酔いの夫によく作っていた卵スープです。シンプルなのにしみじみとしたおいしさです。ご夫婦、ご家族の皆さんで召し上がってください。
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ふわとろ卵スープ
【材料 3~4人分】
材料名 | 分量 | |
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1 | 卵 | 2個 |
2 | 水溶き片栗粉 | 大さじ1強 | 3 | 【調味料】 |
水 | 500cc | |
薄口醤油 | 小さじ2 | |
みりん | 大さじ1 | |
鶏ガラスープの素 | 小さじ1 | |
塩 | 2つまみ | |
オイスターソース | 小さじ1 | |
4 | 酢 | 大さじ1 |
5 | ごま油 | 少々 |
【作り方】
調味料の材料を鍋に入れ火にかける。 卵を白身がなくなるまでしっかり混ぜる。 スープが沸騰したら火を弱め水溶き片栗粉を入れとろみをつける。 2をかき混ぜながら、1の鍋に4回に分けて加える。加えるたびに卵にしっかり火を通す。 酢とごま油を加え、器に盛り付ける。
