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【後編】出展団体の発表から ~「ジャパン キャサー サバイバーズ デイ 2018」レポート~

掲載日:2018年6月21日 15時15分

【出展者団体の発表から】 JCSD2018には、19の団体がブースを出展し、参加者と交流しました。その約半数の団体が、基調講演に続き、順番で、各団体の活動を発表しました。パネルディスカッションもありました。ポイントを採録します。

家族にもいい影響 ~キャンサーペアレンツ~

 発表の一番手は、一般社団法人「キャンサーペアレンツ」代表の西口洋平さんだった。  西口さんは3年前、35歳で、珍しい胆管がんのステージ4と診断された。当時娘は6歳。幸い、抗がん剤治療が功を奏して、現在は、会社勤め、週に1回の抗がん剤治療、子育てをしながら、キャンサーペアレンツの活動に力を注いでいる。  キャンサーペアレンツは、子どもがいる患者の無料のオンラインコミュニティーだ。 「検索して、仲間とつながれます。副作用で大変といった書き込みもあるので、『いいね』ではなく『ありがとう』ボタンを作りました。仲間と出会うことで、気持ちが変化して行動が変化する人もいます。当事者だけでなく、ご家族にもいい影響を与えています」  キャンサーペアレンツでは、ネットだけでなくリアルに集まる場を作ったり、「週刊ダイヤモンド」と協同で仕事に関する調査をしたりしている。 「患者も社会の一員。患者も一緒に社会を築いていくと、みなさんの生きていく力にもつながるし、社会の患者に対する関わり方も変わると思います」  最近は、学校でがん教育をしたり、がんについて子どもと一緒に理解できるような絵本『ママのバレッタ』を作ったりした。西口さんの原動力は、子どもだという。

専門家が入った話し合う場 ~がんサポートコミュニティー~

 午後に入り、NPO法人「がんサポートコミュニティー」事務局長の大井賢一さんが発表した。世界最大規模のがん患者支援非営利団体「Cancer Support Community」の日本支部だ。  大井さんは、がんになっても自分らしく生きられる社会を目指すために、4つの枠組みを示した。  ①がん患者とその家族、遺族への支援  ②がんを取り巻く医学研究と支援者を支援する  ③政府機関とのコミュニケーションと協働  ④市民(企業市民)とのコミュニケーションと協働 「①では、がん患者同士が話し合う場を設けています。6人から8人のグループで話し合うが、患者さんだけでなく、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカーといった専門家が2人ずつ入っています。ヨガやアロマなどを学ぶ、音楽などの活動もしています。③では、私たちは変電所です。患者さんたちの言葉を医師や企業、行政に届ける。医師や企業、行政の言葉を患者さんに伝える。両方の言葉の翻訳が役割だと思っています」  がんと告知されると、人は孤独になる。大井さんはしかし、「語り合うことで、絶望を希望に変えることもできます」と語った。

掲示板の質問に専門家が議論して回答 ~ジャパンチームオンコロジープログラム~

 続いてジャパンチームオンコロジープログラム(J-TOP)から、医師、薬剤師、看護師の3人のメンバーが、活動を紹介した。  J-TOPは2002年から、がんのチーム医療の普及、患者ががんチーム医療の参加者としてその中心になるための支援を目的に活動している。  プログラムの柱の1つはコミュニケーションサイトの運営。医師、薬剤師、看護師ら約3200人が会員で、掲示板では患者や家族の意見や質問に対して、専門家が議論して1週間ぐらいで回答している。  また、チーム医療の推進に寄与するリーダー育成のためのワークショップを実施している。講師は、米国のテキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターから招く。

相談窓口を有効活用するために ~パネルディスカッション~

 ここで、パネルディスカッション「がん告知前・治療・生活、各ステージでの相談窓口の役割を知り利用しよう!」が行われた。  パネリストは、社会保険労務士でNPO法人「がんと暮らしを考える会」の近藤明美さん、がん情報サイト「オンコロ」の濱崎晋輔さん、日本対がん協会「がん相談ホットライン」の北見知美。がんサバイバー・クラブの横山光恒が進行役を務めた。  最初に北見が、電話相談の状況を話した。相談で多いのは、治療、副作用、後遺症、不安について。ほかに、人間関係、仕事、お金、生活に関わることも寄せられている。 「ふつうの人がある日突然、がんと言われます。治療だけでなく、自分の生活を考えないと前へ進めません。そんな方には、不安な気持ちをはき出して、寄り添いながら考える存在が必要です。気持ちの整理にも使ってください。何かあればまず電話を取ってください」  医療相談ではない。しかし、揺れ動く気持ちを話すことが、進むべき方向性に気づくきっかけになるという。  次に、治験の相談を受けている濱崎さんが語った。 「新しい薬の治験はなかなかない。しかも治験に参加するには、治療や体の状況、遺伝子の型といった条件があります。そのために、オンコロを活用していただきたい。問い合わせをいただければ、我々が調べます」  最後に、日本対がん協会でも就労相談を受けている近藤さんがマイクを握った。近藤さん自身、乳がんのサバイバーだ。 「会社とどうやって交渉したらいいのか。再就職するときにがんと言ったら内定取り消しになるのではないか。治療しながら働けるのか……。社労士は制度が専門です。傷病手当金、障害年金、休職などの制度は、難しいし、申請しないと使えません。知らなかった選択肢があったり、辞めない方法を考えられたりします」  近藤さんは、がん診療連携拠点病院のがん相談支援センターやハローワークでも相談できることを伝えた。「がん制度ドック」というサイトも紹介した。    3人のパネリストの専門は異なる。進行役の横山が、 「相談先によって得意な内容は、違います。餅は餅屋で、どこにかければどんな相談ができるかを知ることが必要だと思います」  とまとめた。それは、安心にもつながる。近藤さんがこう言った。 「自分の場合はどうなの?を相談していただければいいと思う。会社と交渉する前に作戦を立てることも大切です」  どんなテーマの相談にも通じる視点だろう。

化粧の力でQOL(生活の質)の向上を ~資生堂~

 がん治療では、抗がん剤の副作用などで、外見に悩みを感じるケースもある。 「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター」の苅部裕己さんは、「資生堂は、化粧の力でQOL(生活の質)向上に向けた活動を長く行っています」と語り、約11分のDVDを上演した。  資生堂がこの活動を始めたのは1956年から。当初は戦禍によるやけどの傷跡に悩む人へ向けたものだった。今では、医療関係者からも化粧によるカバーが推奨されるようになっている。社会へ一歩を踏み出す勇気にもつながる。苅部さんはこう話した。 「銀座でカウンセリング専門の施設があり、日々、お客様にアドバイスを行っています」  なお、資生堂のブースでは、メイク体験ができた。1時間で2人ぐらい。希望者が途切れることなく、男性3人も含めて十数人が試したという。

1人で悩まず早めに手を打って ~リンパカフェ~

 むくむとは、皮下脂肪に水がたまること。水分の出入りのバランスが崩れて起きる。がんの手術でリンパ節郭清(リンパ節を取る)を受けた後に、リンパ浮腫に悩む人は、少なく見積もっても15万人ぐらいとみられる。  発表した「リンパカフェ ~リンパ浮腫サポートネットワーク~」の田端聡さんは、がん研有明病院の看護師でもある。 「リンパ節郭清によって体の構造が変わるので、なかなか治りません。しかし、急激にむくむものではないので、早めに手を打てます。どうやって付き合うかを考えましょう。私たちは、リンパ浮腫に負けないで、やりたいことをやる生活を提案していきたい」
 田端さんによると、リンパ浮腫の人は世界で1億7000万人。彼らがメッセージを発信しているYouTubeの動画も流した。相談窓口があるのだから、1人で悩むことはない。

キャリアコンサルタントを活用しよう ~NPO法人日本キャリア開発協会~

 キャリアコンサルタントという国家資格がある。相談者が自分らしく働ける望ましいキャリアの形成をサポートする専門家だ。 仕事と治療の両立を目指すがんサバイバーにとっては、社会保険労務士と同様に、頼りになる。NPO法人「日本キャリア開発協会」の服部文さんは、キャリアコンサルタントの役割は、相談者がどういうふうに働けるかを明確にしていくこと。企業にとっては、相談者だけ特別扱いにしない公平性も大切だという。  服部さんは、愛知県の事例を紹介した。  40代男性のAさんは、大腸がんになり休職。手術後に化学療法を受けていた。やり手の営業職で、会社も復職を待っていた。しかし、体力が低下し、外来での治療も続くので、営業職としての期待に応えるのは難しい。Aさんは転職も考えた。  Aさんの不安をシートに書き出し、会社に期待される要素を言語化した。それをもとに、商品知識に長けているAさんの能力を活用できる部署を検討し、提案した。結果的に内勤の販売促進部に異動して復職、本人も会社もハッピーになったという。  もう一人の発表者の砂川未夏さんが語った。 「どうしようかなあ、という不安から始まって、どう働きたいか、自分の能力、価値観、経験をどう生かすかを、深く一緒に考えていくのが役割です」  日本キャリア開発協会では、30分無料電話相談も受けている。

アメリカの医療につながろう ~メディエゾン~

 最後の発表はメディエゾン。有料で米国のセカンドオピニオンを受ける橋渡しをしている会社だ。  代表の上野美和さんは、薬剤師の免許を持っていて、1991年に渡米。テキサス州立大学MDアンダーソンがんセンターで働いたあと、2002年にメディエゾンを設立した。  メディエゾンでは、セカンドオピニオンの協力を2つの病院に依頼している。MDアンダーソンがんセンターと、ニューヨークのメモリアルスローンケタリングがんセンターだ。この2つの病院は20年以上、がん部門を持つ全米ベスト病院の1位と2位を競っている。  メディエゾンに依頼した場合、MDアンダーソンなら渡米して受ける。納得できるまで話し合えるのがメリットで、これまでの最長は3時間だったという。メモリアルスローンケタリングは日本にいながら受けられる。書類とビデオチャット(主治医同席)でやりとりする。日常生活を続けられるのがメリットだが、質疑応答は1回しかできない。  上野さんはこうまとめた。 「お世話させていただいた女性患者のお父さんが言っていました。『正確な情報を得ることで運命を変えられる』。いま、娘さんは寛解に入っています。正確な情報をつかむための選択肢のひとつと考えて利用していただければうれしいです」

心に染み入る歌声 ~うえじよしひとさん(チェリーフィッシュ)~

 発表とは別に、午前と午後に1度ずつ、シンガーソングライターのうえじよしひとさんのアコースティックギターと歌のコンサートがあった。題して「癒しの時間」。  うえじさんは「ひまわりの約束」「糸」といったヒット曲をカバーしたほか、オリジナルの「手をつないで」を歌った。うえじさんは、がんの手術をした年に長男を授かった。「初めて無償の愛を感じて、息子のために作った曲です」と語った。  心に染み入るような歌声は、涼風を会場にもたらした。  ブース会場も終日、にぎわった。 「がんと暮らしを考える会」では、仕事と治療の両立や使える制度について相談に来る人が10人以上はいた。100枚持ってきていたチラシも足りなくなり、急遽コンビニで50枚印刷したという。  NPO法人「わたしのがんnet」では、今年4月、静岡県伊東市に闘病記図書館「パラメディカ」をオープンしたことに興味を示してもらえた。闘病記を集めて自らも2016年に大腸がんで他界した星野史雄さんの遺言で、彼が遺した本約7000冊を収めた。  がんとの共生社会づくりを目指す朝日新聞社の「ネクストリボン」にも、約130人が顔を出した。メッセージを書いた色とりどりのリボンが、透明の箱いっぱいに集まった。  公益財団法人「がんの子どもを守る会」には、小児がん闘病中の参加者が情報を求めて来たりした。詳しい相談の案内もできたという。  メディエゾンのブースにも、セカンドオピニオンに興味があるという参加者が来た。    参加者のアンケートからは、 「いろいろな活動が連携して情報発信する機会を増やしていただきたい」 「継続的、定期的な開催を希望します」  など、今後に期待する声が目立った。  がんサバイバー・クラブでは、「会場が狭い」「質問時間がほしい」などのご要望や改善点を検討して、来年も、JCSDを開催します。  出展団体一覧 ・がんサポートコミュニティー ・がん情報サイト「オンコロ」 ・がん相談ホットライン(日本対がん協会) ・がんと暮らしを考える会 ・がんのこどもを守る会 ・がんフォト*がんストーリー ・キャンサーネットジャパン ・キャンサーフィットネス ・キャンサーペアレンツ ・ジャパンチームオンコロジープログラム ・チームGOEN ・ネクストリボン ・メディエゾン ・ライフサカス ・リレー・フォー・ライフ・ジャパン ・リンパカフェ ~リンパ浮腫サポートネットワーク~ ・わたしのがんnet ・資生堂ライフクオリティービューティーセンター ・日本キャリア開発協会
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