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第12回  薬をもらうだけではもったいない!! 薬剤師を味方にしてみよう
〜患医ねっと代表 鈴木信行さん〜
木口マリの『がんのココロ』

掲載日:2018年12月27日 9時36分

薬をもらうだけではもったいない!! 薬剤師を味方にしてみよう〜患医ねっと代表 鈴木信行さん〜

「薬剤師って、薬出すだけの人でしょ?」
 病気と長く付き合っている人でも、薬剤師をその程度に考えていることが大半でしょう。私も以前は、「なぜこれが専門職なのか」と思うことがありました。「薬の知識はあるのだろうけど、仕事自体はバイトでもできそうな……」と。
 しかし薬剤師の友人の話を聞くと、薬学部での勉強量はハンパない。しかも今は医師と同じく6年制となっています。

「これはきっと、ウラに何かがあるはず……。薬剤師のオモテの顔に隠された何か(イイもの)が!!」

 ということで、薬剤師の本来のパワーを引き出すセミナーや、一般市民向けの薬局活用講座などを多く開催している「患医ねっと」代表の鈴木信行さんにお話をうかがいました。
 

薬剤師が日本の医療を変える(かも)!!

「患医ねっと」代表の鈴木信行さん。日本全国を飛び回り講師活動を行っています。

 自身が二分脊椎症、精巣がん、甲状腺がん体験者&現在治療中の鈴木さんは、あることから薬剤師に興味を持つに至りました。その発端は、がん治療で入院していた大学生のころに思ったこんなこと。
「輸液ポンプ(点滴を一定の速度で落とす器機)の音がピーピーうるさい !!」
 電子工学を専攻していた鈴木さんは、「これはシステム化することができるのでは。そのほかにも電子工学を医療に活用することができるかもしれない」と、薬剤メーカーに就職。そこで出会ったのが、薬剤師免許を持った研究者たちでした。

「その優秀さや知識の広さに驚いた」と鈴木さん。ところが薬局で出会う薬剤師は、多くの人が感じているように、「何となくイマイチ」です。その差は何なのかと考えたとき、「せっかくの能力を発揮できる環境がないのでは」と思ったそう。「薬局で薬剤師の本来の力が発揮できれば、患者にとって優れた味方になるだけでなく、日本の医療のスタイルまで変わっていくかもしれない」と。そのためには、私たち患者も、きちんと薬剤師のことを知っておいた方がいいでしょう。
 

薬剤師の「真の目的」って何!?

一般市民向けのセミナーも多数開催。薬剤師だけでなく、医師との付き合い方の講義も。

 そこでひとつおさらいしたいのが、「薬剤師の真の目的は何なのか!?」という点です。
「実はそれは、『病気やケガを治すために薬を出す』ではなく、『国民の“健康な生活”を確保する』なんです」と鈴木さんは言います。「これは、『医師法・薬剤師法第1条』に定められていること。もちろん病気の治療はするけれど、『一人一人の生活を支援すること』が、国からも求められている」とのこと。

 そのために薬剤師は、薬学や医学だけでなく、公衆衛生(※)を含む医療全般など、「人々の生活はどうあるべきか」という勉強もしているそう。様々な知識やネットワーク(地域とのつながり)を使って、「患者がどう生きていきたいか」という広い視点から支援ができる存在なのだそうです。(※)公衆衛生:地域社会の人々の健康の保持・増進をはかり、疾病を予防するため、公私の保健機関や諸組織によって行われる衛生活動。(出典:小学館/デジタル大辞泉)

「処方箋に沿って薬を出すことだけに終始してしまっている薬剤師が多いなかでも、本来の目的に向けて患者と向き合っている“デキる”薬剤師はいます」と鈴木さん。鈴木さんはそんな薬剤師と出会い、現在では医師の10倍くらいの時間をかけて相談をしているそうです。

 私も以前、「日本臨床腫瘍薬学会」という薬剤師の学会で、薬局薬剤師が地域にどう貢献していくかという発表を聞いたことがあります。「薬局が病院よりも患者に身近な位置にあることを活かし、人々が集まる薬局づくりを行っている。定期的におしゃべり会のようなものを開催して患者の話を聞いたり、通院と通院の合間に不安に思うことがあったときに薬局で相談できる体制を整えたりしている」とのこと。「薬剤師も、看護師や医師と同じく“人を支える”存在として活躍しようという意気込みがある」ということを目の当たりにしました。

「今後、厚労省は現在ある薬局を3分の2程度まで減らす方向です。10年前から薬価はどんどん下がっているし、薬局はすでに、薬だけでは儲からない時代。淘汰されていくなかで、『患者の生活を支援していこう』という、本当に能力のある薬局だけが残ればいいと思う」と鈴木さん。患者にとって頼りになる薬局のみが生き残る時代がやってきそうです。
 

“総合的な視点”なら、医師より薬剤師

小中学校でがん体験をお話しする機会も。「がん経験が役立っている」と実感しているそう。

 しかしそこで思うのが、「今、薬剤師をそこまで頼りにしようと思っている人はいるのか」ということ。「薬を出してくれる以外、そんなに期待していない」という人が多いのではないでしょうか。

「日本は、“医者信仰”が強すぎる。でも、医師だって専門分野が違えば全然わからないこともあり、トータルに診ることは難しいのが現実です。患者も、医療の限界を知らなければなりません」と鈴木さんは言います。

 鈴木さんは、いくつもの科にかかっていて医師もそれぞれ違います。「それらをまとめて診てくれるのは薬剤師以外にいない」と感じているそう。具体的には、「“総合的な視点”でのダブルチェック」や、「様々な情報提供」などをしてもらっているそうです。

「例えば、『眠れない』という症状があるとき。それについて、『もしかしたらA医師からもらった薬の影響かもしれないし、B医師に診てもらっている疾患のせいかもしれない』ということに気付けたり、『今飲んでいる薬ではなく、こちらの薬の方が合うかもしれない』と提案できるのが薬剤師です。自分の生活のことも話しているため、それもひっくるめて俯瞰(ふかん)的にチェックをしてくれています」

 医師とあまり話をする時間がなく、「どことなく腑に落ちない部分があるけれど、診察室から出てきてしまった」という経験がある人も多いと思います。鈴木さんも、そういうことはあるそうです。検査データに正常ではない値が出ていても、医師から「これは大丈夫です」と言われたら、ちょっと「?」と思いつつも、それ以上聞く間がなく帰ってきてしまったこともあるとか。
 そんなときは、かかりつけ薬剤師に相談。データを見せると、単純に「正常か、異常か」ではなく、それぞれの数値の意味合いや、「これが異常値でも、これが正常値だから大丈夫なんだよ」といった、「どこがどうからんでそうなっているのか」という、全体の流れまで教えてくれたのだとか。う〜ん、すごい。
 後日、その薬剤師は数値の見方を表した図を用意してくれていたそうです。「その後、おそらくほかの患者さんにも同じ図を配っているみたい」と鈴木さん。う〜ん、さらにすごい。

 がんになったことを伝えたときも、「これが役に立つのでは?」と、国立がん研究センターが出している情報冊子を教えてくれたそう。患者が自分の現状や、何を疑問に思うかを伝えることで、薬剤師も「患者の不安要素」を知ることができ、その人やほかの患者さんの不安を払拭することにつながっていった、ということでしょう。
 

薬剤師を味方にする第一歩とは!?

なかなか聞けないお話をありがとうございました!

「う〜ん、そう言われてもなあ」と、まだ疑ってしまうアナタ。その理由はきっと、「そもそも、いい薬局にも、いい薬剤師にも出会ったことがない」と思っていることがひとつでしょう。私はどうかというと、やはり昔は、「薬を出すだけでいい。何で、医師でもないのに病状やら何やらをいろいろ聞いてくるのだろう」と思っていました。

 ……あら? そういえば、多くの薬剤師は「病状やら何やらをいろいろ聞いてくれていた!!」のです。それは、何かしらのアドバイスをするために、私のことを知ろうとしてくれていたからかもしれません。

 鈴木さんは、「がんになったとき、患者は『病気』を学ぼうとしますが、それだけでなく『それぞれの医療者がどういう存在か』『日本の医療の仕組みがどうなっているのか』を学ぶべき」と語ります。

 そのときの私は、きっと学べていなかったのだと思います。自分から知っていこうとしなければ、おそらく向こうからも何も来ません。得るためには、自分で一歩を出すことも大切です。

 薬剤師を味方にするための第一歩を、まずは私たちから出してみましょう。その方法のひとつは、「お薬手帳を使ってみる!!」ことなのだそう。
「お薬手帳は、シールを貯めるためのものではありません。医師とのやりとりのメモや、質問したいこと、気になっていることなどを、自分で記入していいんです」と鈴木さん。「それを、薬剤師だけでなく、医師にも見せることをおススメします。医師に『どんな疑問があるか、何に困っているか』を伝える手段にもなります」。ちなみにお薬手帳は自作してもいいそうです。それって、ちょっとワクワクしませんか。

 また、「病名を薬剤師に伝える(もしくはお薬手帳に記入する)のも大事」と鈴木さんは言います。処方箋には病名が書かれていないため、薬剤師は医師が出した薬からどんな病気なのかを探るしかありません。より的確で良い情報を得るためには、当然ながら知ってもらった方がいいでしょう(様々な事情により、現在のところ処方箋には基本的に病名が書かれていないようです)。

 実は薬局は、薬をもらわないときにも訪れていいところだそう。薬局は相談のためだけに行ってもいいのです! 「薬剤師は、医師のように診察をすることはできないけれど、ある程度の対処をすることはできます。市販薬で対応できる場合もあり、長い待ち時間をかけて病院に行かなくてもよくなるかもしれません」。

「味方は多い方がいい」と鈴木さんは言います。
医師、看護師を味方にしたいのはもちろん、薬剤師を味方にしてみたら、さらに違う角度で自分の体のこと、生活のことを考えられるかもしれません。持っている悩みを解決できる可能性も十分にあります。
 私は、気に入った薬局・薬剤師に出会うべく、「薬局放浪の旅」をしていました。現在お世話になっている薬局は「ここは何だか落ち着く」と思って長期滞在(?)し、薬剤師と話す内容もちょっとずつ濃くなってきました。そこからさらに前進して安住の地となるよう、まずはお薬手帳のフル活用から始めてみたいと思います。

●鈴木信行さんプロフィール:
鈴木 信行(すずき のぶゆき)
1969年生まれ。東京都在住。
二分脊椎症による身体障がい者。精巣がん、甲状腺がん(ステージ4で治療中)のがんサバイバー。がん患者の立場から、日本の医療を変えるための活動を広く手掛ける第一人者。患医ねっと代表、ペイシェントサロン協会会長、精巣腫瘍患者友の会副代表。薬剤師会、製薬企業などで講演、研修、薬局コンサルティングなどを幅広く手掛けている。
北里大学(薬)・上智大学(看)非常勤講師。日本薬学教育学会会員、日本女性薬剤師会会員

木口マリ

「がんフォト*がんストーリー」代表
執筆、編集、翻訳も手がけるフォトグラファー。2013年に子宮頸がんが発覚。一時は人工肛門に。現在は、医療系を中心とした取材のほか、ウェブ写真展「がんフォト*がんストーリー」を運営。ブログ「ハッピーな療養生活のススメ」を公開中。

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