新着情報

講演「ネット情報との付き合い方 ~その情報、信頼できますか JCSD2019報告③~

掲載日:2019年6月27日 9時43分

「ジャパン キャンサー サバイバーズ デイ(JSCD)2019」では、多くのがんサバイバーや家族を悩ませるネット情報に関する講演も行われました。演者は、国立がん研究センターがん対策情報センターの早川雅代・医療情報コンテンツ室長。インターネットの特性を押さえつつ、ネット情報を見極めるポイントを解説しました。第3部としてレポートします。

ネット情報を出す側には目的がある

早川雅代先生。患者とITが研究テーマだ

 早川雅代先生は、長く製薬会社で患者や医療者に医薬品情報を提供してきた。現在は、がん情報の要とも言える国立がん研究センターのサイト「がん情報サービス」で患者向けの情報を作成している。サイトのポリシーは「信頼できる情報をわかりやすく」だ。

 現在、がん情報の入手先として、2番目に多いのがインターネットだ(最多は医療者、内閣府の世論調査より)。ネット情報は欠かせない時代になってきている。

 ただ、ネット情報は必ずしも、善意や正確性に基づいているとは限らない。

 情報を出す側には、何らかの目的がある。企業なら売上アップ、医療機関なら患者の増大、個人なら有名になりたい、といった狙いだ。

「ネットを見る側はそれを踏まえて、このサイトは営利目的ではないか、どこからかお金をもらっていないか、などの点を考慮する必要があります。しかも、検索して上位に表示されるサイトが信頼できるとは限りません」

 たとえば、ヤフーで「大腸がん 治療」と入れると、自由診療(民間療法)のサイトがいくつか、上位に表示される。よく見るとURLの横に「広告」と書いてある。広告サイトの次に「がん情報サービス」が出てくる。

 広告以外では、よく見られているサイト、専門業者がアクセス数を伸ばす仕込みをしたサイトが上位に表示されることが多いという。しかも、表示の順番は日によって、また人によって変わる。

 ただ、ヤフーでは、単に「大腸がん」とがんの名前だけ入れると、がん情報サービスが最上位に来る。これは、国立がん研究センターと提携しているためで、他のがん種についても同様である。

医療情報は歯切れが悪いもの

講演の流れは階段を少しずつ上がっていくようで、理解しやすかった

 検索の特性を押さえたら、医療情報とは何かも知っておきたい。

「基本的に、医療は不確実なもの、と考えてください。治療効果が100%ということはない。だから、医療情報では、断定表現はできません。歯切れが悪くなります」

と早川先生。逆に言えば、自信満々で断定しているサイトは要注意ということだ。

 改正医療法の施行で2018年6月に始まったネット広告の規制では、未承認の医薬品や治療内容の広告はできなくなり、「絶対安全」「必ず」「日本一」などの表現を使った虚偽、比較優良、誇大広告などが禁じられた。

 また、2017年8月からは厚生労働省の「医療機関ネットパトロール」も行われている。誰もが誤った情報などを通報でき、パトロール側が指導できる仕組みだ。

「しかし、規制や監視だけでは、増えている誤った情報を駆逐しきれません。いたちごっこになっているという指摘もあります」

「いつ」「誰が」「何を」に着目

 こういう現状では、情報の受け手が、情報の信頼性を見極めていかなければならない。

 早川先生が挙げる要点はシンプルだ。①いつ、②だれが、③何を。

 まずは①の「いつ」について。

「医療に関する情報は進歩していきます。研究が進んだことで、それまで信じられていた情報が間違っていたと明らかになることもあります」

 では、ここ何年ぐらいの情報を見ればいいのか。早川先生は、イギリスの指針として「3年を目安に」と伝えた。情報更新日は、ページの上(右肩)や下、あるいはHOMEの画面を探すと見つけやすいという。

 次に②の「誰が」について。

 明らかな広告サイトなら、受け手も判断しやすい。しかし、たとえば、医師監修とありわかりやすい解説を載せたサイトに、さりげなく特定の治療法や商品を勧めるバナー広告や無料相談会の案内が入っていたりする。うっかりクリックすれば情報発信者の誘いに乗ってしまう。

 発信者がどんな組織かが重要で、画面の右上や下などに載っている「このサイトについて」からたどれる。組織概要が明示されていない場合は、疑ってかかるほうがよい。

 情報発信者が個人の場合も、慎重さが求められる。

「たとえ有名大学の名誉教授でもあくまで個人の意見です。必ずしも科学的に正しいと言えない場合があります」

 ある薬で情報発信者が治ったとしても、ほかの人に当てはまるとは限らない。ブログで「ハーブティーを毎日飲んだらがんが小さくなった」と書いていた人がいた。ハーブティーががんに効くような印象を与えるが、この人はブログに書いていなかっただけで、標準治療を受けていた。早川先生はそんなケースにも触れた。


早川先生より提供

あくまで担当医と話すときの参考情報

 そして③の「何を」について。

「実は『何を』を見極めることは難しいです。ネット情報を見て興味を持ったら、信頼できる医師や看護師に相談しましょう」

 早川先生は、それを大前提としたうえで、「何を」を見極めるコツへと話を進めた。

(1)研究対象は何か?

 細胞やネズミで効果があったというだけでは人間に効果があるとは限らない。医療の「科学的根拠(エビデンス)」は細胞実験が最も低く、動物実験、そして数人から多くの人での臨床試験へと進むにつれて高まってゆく。最も高いエビデンスに基づく治療(標準治療)情報が書かれているのは、医師向けの診療ガイドラインだ。細胞実験の成果などがメディアで大きく報じられていても、これから研究が進む段階と捉えることが大事だ。

(2)情報源は?

 サイトの情報には、必ず情報源があるはずだ。たとえば図一つとっても、どの情報源から作成したかを見る。情報源が書いてあれば、医師と話すときにも伝えられる。

(3)表現をチェックする

 医療は不確実だから、医療情報は断定的な表現はできないはず。それなのに「あらゆる」「副作用がない」「絶対」などの断定表現をしているサイトは怪しい。
  「あきらめない」「体に優しい」など惹きつける言葉にも要注意だ。また無料説明会など「無料」という言葉にも飛びつかない。

(4)ほかの情報と比べてみる

 1つの情報だけでなく複数の情報を比べることで、冷静に見極めることができる。

(5)がんに関して信頼できるサイトを知る

 サイトの判別が困難なら、あらかじめ、国立がん研究センターのがん情報サービスをはじめ、しっかりとした組織のサイトを知っておくと安心だ。

 早川先生は最後に、ネット情報と向き合う際の心の持ちようをアドバイスした。

「ネットで情報を探そうとするときには、『必要な情報は何か』『何を知りたいのか』といった自分の心の状態を知ることが大切です。人は信じたいものを信じる傾向があります。しかし、ネットにはだまそうとする人もいます。だから、こちらも、わざと疑いましょう。またネット情報は、治療の本線や判断の基準ではなく、あくまでも担当医と話すときの参考情報とお考えください」

 ネット情報との距離感をしっかり取っておくことが、惑わされないためには不可欠なようだ。考えてみれば、これは、がん情報に限らず重要なスタンスだろう。


早川先生より提供

ぜひメールマガジンにご登録ください。
ぜひメールマガジンに
ご登録ください。
治りたい
治りたい
治りたい
治りたい
治りたい