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パネルディスカッション「がん患者と家族に寄り添うことについて考える」 ~JCSD2019報告②~

掲載日:2019年6月27日 9時43分

「あなたの『生きる』に寄り添う人がここにいる」をテーマに開かれた「ジャパン キャンサー サバイバーズ デイ(JSCD)2019」。レポート第2部は、基調講演を受けてのパネルディスカッションをお届けします。

 午後1時からは、基調講演を受ける形でパネルディスカッションが開かれた。テーマは「がん患者と家族に寄り添うことについて考える」。

 基調講演を行った清水研さんがファシリテーターになり、4人のパネリストを迎えた。
がん研究会有明病院がん相談支援センター看護師長の花出正美さん。東京都立小児総合医療センター血液・腫瘍科の松井基浩医師。宮城県栗原市の普門寺副住職の高橋悦堂さん。東京大学医学部附属病院がん相談支援センター副センター長の分田貴子医師。

パネルディスカッションの登壇者たち。左から清水研さん、花出正美さん、松井基浩さん、高橋悦堂さん、分田貴子さん

1人じゃないと伝えたい

花出正美さん。がん看護専門看護師でもある

 最初に、それぞれのパネリストが、順番でスピーチを行った。

花出さんは、がん研究会有明病院のがん相談支援センターの取り組みについて語った。同センターには、誰もがアクセスできる。対面や電話で、さまざまな相談が寄せられる。

 検査・治療・副作用、医療者とのコミュニケーション(医師の説明が難しい、何を聞けばわからない)、経済的負担や支援(支援制度や介護保険について知りたい、仕事や育児、家事で困っている)、社会との関わり(職場や学校にどう伝えるか、治療との両立)、家族との関わり、緩和ケアなどだ。

 センターには、がん研有明病院の患者・家族に限られるが、サポートグループもある。患者や家族同士の交流を通して、さまざまなヒントを得るのが目的だ。

「同じような経験を持つ方のサポート(ピアサポート)がすごく役に立つことを学ばせていただいています」

 スピーチの2番手は、松井さんだった。1986年生まれ。高校1年で悪性リンパ腫になり、8カ月間入院した。

「入院中、小児科病棟でがんの子どもたちに励まされました。楽しい思い出もあります。小児がんの子どもを支えたいと思い、医師を目指しました。現実には、1人で闘病している若い人も多い。1人じゃないと伝え前を向くきっかけにしたいと考え、2009年に、若年性がんの患者会『STAND UP!!』を立ち上げ、代表を務めています。メンバーは全国で約700人。フリーペーパーを発行したり、交流会を開いたりしています」

治療中でも自分らしい生活を

高橋悦堂さん。在宅緩和ケアや地域福祉などの現場で、他職種と連携しながら活動している

 3人目は、僧侶の高橋さん。1979年、宮城県栗原市生まれ。東日本大震災後、読経供養や被災者の傾聴活動に関わり、リレー・フォー・ライフ・ジャパンみやぎの実行委員長も務める。

「文字通り、すべてを失った方の苦悩や絶望を受ける場にいました。私たちの思いや都合に関係なく、人は生きて人は死ぬ。私たちは生と死の間で、出会い、別れ、嘆き、怒り、泣き、そして笑い合う。命ってなんだろう、と考えました」

 そんななかで、高橋さんは、岡部健医師と出会う。在宅緩和ケアの先駆者のひとりで、震災の翌年、胃がんで亡くなった。「科学だけを学んできた人間には、人の人生を含んだ死は語れない」と口にしていた。宗教者の出番だというのだ。東北大学に、医療など他職種と連携する臨床宗教師を養成する講義や研修があり、高橋さんも修了している。

 最後に分田さんがスピーチに立った。治療による見た目の変化に悩む患者さんのカバーメイク・外見ケアに取り組む。

 分田さんは以前、治療の跡が肌に残る患者さんたちにインタビューをした。その結果、大多数の人が、「他人の視線が気になる」「プールや温泉に行けない」「半袖を着られない」といった悩みを打ち明けて、隠せるなら隠したいという本音ものぞいた。

 そこで、肌色のクリームで目立たなくするカバーメイクをはじめた。手術の傷や化学療法による皮膚の黒ずみなどを隠すことで、サンバパレードで踊れた女性もいた。その後、ウィッグ、ネイル、乳がん用の下着などへ幅を広げていった。
「治療中でも自分らしい生活を送れることを応援したいと考えています。そして、気分が上がることで治療成績も上がることを証明したいという目標を持っています」

第三者の力も活用しよう

 それぞれのパネリストの「寄り添い」が語られてから、ディスカッションへ入った。参加者から事前に届いた多くの質問から清水先生が選び、それに答える形を取った。

――家族と患者がうまくいかないときはどうしたらいいのか? 家族には患者会のように集まれる場もない。家族のケアをどうしたらいいのか?

松井基浩さん。医療機関と患者会の連携を重視し、8月3日にAYA世代の患者のためのワークショップを開く

花出 まず、家族のケアが必要だと気付くことがすごいと思います。がん相談支援センターに来られるご家族でも、あまりに一生懸命で自分のことは二の次になる方が多いです。

高橋 90歳の女性をケアする70代の息子さんから、『母ちゃんの気持ちはわかるが、話を聞いてやれないんだ。どうしても腹が立っちゃて』と言われたことがあります。私がおふたりの話を聞きました。家族だからできないこともあります。任せられるところがあったら、第三者に任せてもいいと思います。

清水 息子さんが高橋さんに話せたことは大きいですね。医療現場でも家族のケアをしたいと考えているので、声を出していただければと思います。

花出 がん研有明病院では、家族だけが集まる会もあります。ほかの家族の話からヒントをもらえています。

――担当医がなかなか自分の気持ちに向き合ってくれない。医師との関係に困っている。

松井 医者も人間で、みなさんコミュニケーションが得意なわけではありません。相性もあります。医師と患者さんだけで解決できないなら、家族や看護師など第三者を交える方法もあります。

清水 医療者もコミュニケーションのトレーニングを受けたりして、昔に比べると変わってきていますが、いろんな医師がいて……。

花出 医師とのコミュニケーションは、看護師にもハードルが高い局面があります。そんなとき、誰かを連れて行くと雰囲気が変わることがあります。また相談内容によって、医師、看護師、医療ソーシャルワーカーなどと相談先を使い分けることもできます。

分田 どこに相談に行ったらわからないときは、がん相談支援センターに行きましょう。道標も一緒に考えます。

うなずいて聞くだけでいい

――友人が「死にたくない」とメッセージを送ってきたらどう答えたらいいのか? 亡くなっていく人へ向き合うときにはどんな心構えを持てばよいのか?

分田貴子さん。2019年から、院内のヨガクラスも開始している

高橋 難しいですが、「決まった答えがない」ことだけは確かでしょう。私は、死は終わりではなく、一つの通過点だと考えています。私の対応はと言えば、自分なりに相手のことを思って理解する。それしかないかなと思います。

松井 死にたくない、という気持ちを伝えられるのは信頼されているからです。今まで通り接していただくのが一番かなと感じます。LINEなどで来た場合は、あとで電話をかけるなどして直接話すほうが思いが届くでしょう。

高橋 本日の参加者のみなさんから「自分は何の役にも立てない」という悩みも多数いただきました。でも、気持ちを吐き出せる相手である、というだけでも役に立っています。

清水 死について話すには、自分自身の死に対する不安とも向き合わなければならない。難しいのは当然ですが、恐れを越えて向き合うことが大切だと思いました。一方で、悩みを打ち明けられると、勇気づけたいという気持ちにもなると思います。言葉をかけることについては、いかがでしょうか?

分田 ご本人が触れられたいのか触れられたくないのかにもよるので、微妙なところがあります。触れられたくないのに関わると、かえってうまく行かなくなることもあります。私は、「何か困ったことがあったら言ってね」という感じで進めています。

花出 うなずいて聞くだけでもいいと思います。離れていかないことが大事です。

――比較的症状が軽いので、患者会に行くと、「あなたは軽くていいね」などと投げかけられて、行っちゃいけないのかと悩んでいる。

松井 患者会の活動をしていると、こういうことはあります。怒りの感情を吐き出したくなるのは正常な反応でしょう。いろいろ抱えているから出る言葉だと思えば、言われた人の気持ちもやわらぐかなと思います。もちろん傷つくとは思いますが。

清水 やりきれなさから出た言葉という視点を持つ、ということでしょうか。

高橋 悲しさ比べ、つらさ比べというのでしょうか。被災地でも、「お隣は家族が亡くなったが、ウチは家が流されただけだから、よかったと思わないといけない」というような状況がありました。当事者同士では難しいこともあるから、周囲にいる人が何らかのフォローに入ることも大事だと思います。

花出 病名が同じでも1人1人、思いは違います。がん相談支援センターでは、交流の場を紹介するときに、聞きたくない話が出たり自分には違うと感じたりすることもあるとお伝えするようにしています。役に立ちそうなことは持ち帰り、違うなということは置いて帰る、というスタンスでよいのでしょう。

自分はどう言われたいか

清水研さん。精神腫瘍科は、がん患者の家族も受診できるという

 最後に、パネリストのみなさんがメッセージを送った。

分田 どういうふうに声をかけたらわからない、死の不安を言われたときにどうしていいかわからない、ということはあると思います。私だったら、自分はどう言われたいか、どうしてほしいか、を考えます。

高橋 一緒に喜ぶことは簡単にできます。私なら、プロ野球で楽天が勝つとか。一緒に悲しむことは難しそうですが、私たちが相手を過度に慮るから寄り添い切れていないと感じるだけで、一緒に悲しむことも実はできているんだと思います。一緒に悩むだけでも十分なのです。

松井 がんサバイバーも家族も、正解のない困難がすごく多いと思います。死の話題もそうですが、自分だけで考えると苦しいことがある。私もそうでした。いろんな人の話を聞くなかで、自分の考えを整理して答えを出していければいいのかなと思います。

花出 寄り添い切れていない自分を感じることもあるでしょう。そう思うのは、寄り添いたい気持ちがあるからです。なので、寄り添い切れない自分もOKとしながら、寄り添いたい思いを持ち続けることが大切なのかなと感じます。

 パネルディスカッションは、心をめぐる切実な問いかけに向き合うものとなった。それだけに、パネリストのみなさんも、言葉を選び、悩みながら語った。

 そんな誠実さが伝わったのだろう。参加者アンケートにはこんな言葉が並んだ。

《深く考えさせられ、自分、親、友人などに当てはめながら聞いていました。答えがなかなか出せないものですが、とても有意義でした》

《心にしみるあたたかさを感じました。もう少し時間を長くとってほしかった》

《「ただ聴くこと」の大切さと難しさを改めて考えさせられました。答えは本人の中にあるものですね》

《胸が熱くなり、明日以降、誰かの力になるための力をいただきました》

《昨年、友人をがんで失いました。寄り添えなかったと思っていましたが、話を聴いてあげることも大切と言われ、少し救われた気がしました》


JCSD2019の展示会場。今年もさまざまなブースで暖かい交流が展開された

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