満開の桜がトンネルの様に咲き乱れていた。
「お弁当持って来年も花見しようね。」
大好きな母との約束。
桜が散り終わった頃、母のガンが分かった。苦しくて、つらくて、たまらなかった。ただただ泣いた。家族みんなで泣いた。
「悲しませてしまったね。ごめんね」
いつも私や父・姉を気遣う母。
…母はどんな気持ちで ガン と向き合っていったのだろう。
あれから手術をし成功したが、半年経たない間に転移が確認された。 ああぁただただ絶望――。
「もう手術はできないって。」
サラッと母は言う。
「私の病気の事で、あんたが仕事辞めたりしたらあかんよ。大事にするんよ。」
強くて優
しい私の母。
…時々見せる気丈さが、本当は反対の事を思っているんじゃないかと思う。
それから毎日、昼と夜のお弁当を作った。仕事が終わると夜のお弁当を持って母の病院へ。
「おかえり。今日は何かあったの?」
優しい声で毎日聞いてくれる。
「お弁当おいしそう。卵焼きにちょっとお出汁をいれてみたら」
いつもと変わらない会
話。
…毎日毎日 母からパワーをもらう。私が母に元気をあげなきゃいけないのに、私が毎日元気をもらっている。
「ガンでも良いことがある」
母の言葉にはパワーがある。
…まだまだ生きていて欲しい。
家族みんなで母のお世話する日々になってきた。
「みんなが私のわがままで動くのを見るのが楽しいわ」
しんどいはずなのに、面白いことを言って私たちを笑わせる母。
…もっともっと、母と共に生きたい!家族で笑いあいたい。
でももう、母からの言葉はない。
ガンと分かってからの毎日は、つらく・悲しく・苦しいはずだったのに、何故だろう。
かけがえのない毎日だった。あの毎日が大事で大切で、母に感謝ばかり。母のやさしさ・言葉・ごはん・笑い・思い出、全てが私の中にある。
『ありがとう。お母さん。大好きだよ。ねえねえ 桜の季節がまた来るね。』
日本イーライリリー株式会社の許諾なく、著作物を編集したり、他の目的で使用したり、第三者に対して更に使用許諾したりすることはできません。
この各作品はリリー・オンコロジー・オン・キャンバスの作品・エッセイです。