リリー・オンコロジー・オン・キャンバス

生を願う

著作者:豊田 明日香 さん
出展:日本イーライリリー株式会社

生を願う

私の母が乳癌を患ったのは大学生の時のことでした。母がある日ふと鏡をみて胸にへこみがあることに気づいたのです。父と小学生だった弟、私たち家族にとっては衝撃的なことでした。

手術をした日は暑い夏の日でした。私は待合室が耐えきれなくて病院の庭に出ました。そして大きな一本の木に安堵感を覚えて、祈る心でしばらくの間幹に手を当てていました。“母が必ず生きることができますように”と切実に願いました。また、こういう思いの人がこの場所にはたくさんいるのだなと思うとその人たちの家族も必ず助かるようにと願わずにはいられませんでした。切実だったので夏の熱気が暑いのか私の心が熱かったのかよく分からないくらいでした。

手術は成功しましたが、その後は治療の苦しみや鬱病を患うなど二次的な苦痛がありました。鬱状態の母親に“死にたい”と言われたときには本当にどうしていいかわからなかったですが、手術の日の病院の庭で願ったように、必ず母には生きて欲しいし、母にも“生きたい”という心を持って欲しいと思いました。後になって振り返って、あの時頑張ってよかった、生きていることが幸せ、と、そう実感して欲しいと思いました。母が入院生活をしているとき、私が今までで一番母に良くしてあげることができたときでした。

癌という病を通して、私は母とまた多くの人の命について考えることができました。当たり前にあるものが無くなりそうになってその大切さに気づくのではなく、いつでも一人一人の人を大事に尊く思う心を持ちたいです。人に対して、話す事、行うこと、些細なことも適当にせず愛情深く生きたいと思いました。その思いを込めて、切実に生を願ったその日を忘れないために絵を描きました。

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この各作品はリリー・オンコロジー・オン・キャンバスの作品・エッセイです。

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